【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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第九の使徒戦は土曜日か日曜日に入る予定です。それまでは日常回となります。


歓迎会

加持リョウジの厚意のサービスで、楽しんだパイロットたちはすっかり元気になった。この前の第八の使徒戦で気分が下がった者もいたが、バッチリ回復したようだ。また、この遠足でパイロットたちは親交を更に深めた。少しばかりギスギスしていたアスカとシンジ・レイの二人の関係も改善したのであった。具体的には冬月と加持が席を外している間に、彼らは本音で語り合って仲直り?をした。

 

仲直りというか、正常な友好関係を結んだのでシンジは冬月にお願いをしてきた。

 

「歓迎会?」

 

「そうです。せっかく、援軍としてアスカが来てくれたのに、今まで何も出来ていなかったので」

 

「確かに、そうか。そうだな」

 

執務中の部屋を訪れたシンジは冬月と対面していた。基本的には執務中に人が訪れても冬月は予定された訪問でなければ払う。しかし、訪問者がパイロットなら全く話は別だ。自分の孫に等しいパイロットたちなら何時でも大歓迎である。

 

「だから、アスカを呼んで歓迎会と言うか、パーティーを開きたいんです。料理は僕と綾波が作るので、先生にご迷惑はかけません」

 

「いや、私にはいくらでも迷惑をかけてもらって構わんが、そうか…歓迎会か。ふむ、よし。日程はいつがいいかね?君たちの事を優先するが」

 

一応冬月は副司令という立場なので、その職権でパイロットのスケジュールを変更することができる。スケジュールはミチミチのギチギチで、もう「過密」の二文字に尽きる。学校を除いた時間のほとんどはNERV本部で訓練をしている。仮に訓練がなくても、使徒襲来に備えて本部で待機となる。そのため、パイロットたちにプライベートの時間はあんまり確保されていなかった。

 

「何時でもいいと思うけど…できれば金曜日がいいです。休みの土曜日に片付けなどを回せるので」

 

「金曜日か、わかった。私の方で調整をしておこう。葛城君には私のほうから伝えておくから、アスカ君には君から伝えてくれ。私から伝えては面白くないからな」

 

「え?面白くないって?」

 

「ん?何、シンジ君には関係のないことだよ」

(前の使徒戦でアスカ君はシンジ君に惹かれていっている。ただでさえ仲間の無いエヴァのパイロットだから近づくしかない。それに、仕組まれた運命の副次的な効果で意識することは必然。それを健全な青春にすることが私の仕事だからな。しかし、アスカ君がここまでガツガツ来るとは思いもしなかったが。まぁ、だから彼からアスカ君に伝えたほうが色々と美味しいからな)

 

毎日行っている三人とのヒアリングで、冬月はアスカの変化が強いことを感じ取った。第八の使徒戦で自分一人だけでは使徒に勝てないことを痛感し、初めて知った仲間の存在に、彼女は大きく変わった。その変化は交友関係にも良い方に影響した。特にシンジに対する付き合いが大きく変化した。来日時のような見下す姿勢は消えて、戦友として彼を尊重するようになった。そして一人の少女として、彼を意識するようになった。自分を真正面から見て、捉えてくれる人として。

それを冬月は感じ取って、内心で(・∀・)ニヤニヤしていた。青春の時代に少年一人を意識する少女二人。その恋は老人にとっては微笑ましい以上の何物ではなかった。

 

「歓迎会について承知した。スケジュール調整はするから、君たちの好きなようにしなさい。用意して欲しいものがあれば用意する」

 

「あ、はい。お願いします」

 

と言うことで、アスカの歓迎会が行われることになった。

 

~冬月家 歓迎会当日~

 

冬月の家に初めて来たアスカはちょっと感動していた。家が非常に綺麗だったからだ。皆様ご存知だろうが、アスカは現在葛城ミサトの家に住んでいる。葛城ミサト、彼女の生活レベルは言葉にできない程。一応、シンジ(修羅モード)が徹底指導をしたので最低限の暮らしはできる。しかし、それを圧倒したのが冬月の家だった。隅々まで掃除が行き届いていて、物が少ない。ゴミもゴミ箱以外には一切ない。

 

アスカは感動が悟られないようにしつつ、リビングの主役席に着いた。

 

「すまないね、急なことで。今日ぐらい、ワガママに過ごしなさい」

 

「ワガママ…そうね!今日はアタシの歓迎パーティーなんだから当然よね!」

 

強気で言い放つアスカだが、それは戸惑いを隠すためだ。

 

え?なぜ戸惑う?

 

その答えは彼女は祝われたことが無かったからだ。おそらく小さいころに両親から祝われたことはあっても、悲しい記憶で、トラウマで封印されてしまっている。更にエヴァのパイロットとなってからは誰からも祝われたことが無かった。だから、このようなことが極端に新鮮なのだ。

 

「そうだよ、アスカ。今日の主役はアスカなんだから。はい、お待たせっと」

 

時刻は午後の5時であるのだが、シンジはパーティー料理を出してきた。それも出来たてのを。夕食にしては早いが、今日はパーティー。長いこと夜遅くまでワイワイしよう。パーティーで沢山食べるために、シンジらは昼食を超控えめにしていたのもある。

 

「う、嘘…この量をシンジたちは作ったってわけ?アタシだけのために…?」

 

「何を疑っているの?当たり前だよ。アスカのために、頑張って作ったよ。あぁ、綾波も手伝ってくれたよ」

 

「セカンドのために頑張った」

 

「この二人はアスカ君のための一心で作った。それはこの私が保障する。さて!料理はシンジ君が作ってくれるというのだから、君は食べなさい。この日は私もアルコールを摂取するとするかね」

 

「…うん」

 

心からの歓迎と祝福を受けたアスカは目に涙を浮かべそうになるのを堪えて、食べ始めた。パーティー料理と言うことで基本は大皿料理を突っつく。アスカは日本にあまり馴染んでいないかもしれないので、シンジは日本食は程ほどにして洋食を主にしていた。

 

料理は基本的に食べ応えのある再生肉の肉料理や穀物の料理となっている。人間が必須とする食材は徹底的な自動化によって何とか賄われている。それらを使って、大きなキッシュや穀物で作られたグラタンなど大皿料理を作っていた。全部がシンジの手作りなので味が抜群。バッチグーだ。

 

「シンジ君も料理だけじゃなく、こっちで食べなさい」

 

「はい」

 

シンジはキッチンで料理を作ってはリビングのテーブルに供給している。綾波もそれを手伝っている。普段はその景色を眺めながら冬月はほっこりしているが、今回は対面にアスカがいるのでそれをチラッと見る。しっかりと見ていては気持ち悪がられそうだ。

キッシュなど料理を次々と口へ運んでいるアスカは泣いていた。声こそ出していないが、涙がつらつらと流れている。初めて他人に心から歓迎されて祝福されている。今まで碌に他者との関わりをしてこなかったから、今の時間が本当に嬉しい。その感情が涙として溢れ出してきた。

 

「すまんね」

 

「いえ、お気になさらず。それより、私はセカンドが喜んでくれて、とても嬉しいです」

 

「そうだな。準備をしてきた甲斐がある」

 

冬月は久し振りにアルコールを摂取しようと考えて、お酒を取りに立とうとした。その時、レイがお酒セットを持ってきてくれた。内容は冷酒とつまみの野菜の漬物(超減塩)だ。自分でお酒を注ごうとしたのだが、それまでをもレイが許さなかった。冬月が持つお猪口にトクトクと注いでくれた。その光景に思わず冬月は嘗ての教え子碇ユイを見つけた。レイは碇ユイのクローンだから当然と言えば当然であるが、そんな無粋じゃない。それに、ここまでレイが感情を出してくるとは。レイの変化も大きい。冬月にとっても嬉しい。

 

そんな冬月は注がれたお酒をチビチビと飲み、つまみをつまみ、レイが取り皿によそってくれたシンジ手作り料理に舌鼓を打つ。

 

なんと、まぁ、平和なことか。

 

「ふぅ、なんとか一区切りついた。どう?アスカ」

 

「あんた…どれだけ美味しい料理を作れるのよ!どれだけ作れば気が済むの!」

 

「えぇ、そんなぁ…てことは美味しいんでしょ。よかったぁ。頑張ったから」

 

「まぁ、ありがと。私のために作ってくれて」

 

「当たり前のことをしているだけだよ」

 

アスカとシンジが良い感じになっているのを冬月はレイにお酒を注いでもらいつつ見つめていた。レイは二人に気を遣って冬月の相手をしていた。レイは冬月から男の扱い方()を教わったので、それを実践していた。男は独占するな、共有できそうなら共有する。縛り過ぎが毒になる。だからレイは当初のアスカへの警戒心や敵愾心は消えていて、今は普通に友達として接していた。

 

「この感じが続けばいいんだがな」

 

平和がいつまでも続けばいいのに。

 

本気でそう思った冬月だった。

 

続く




次話は休日デートにしようかなと思っています。

それでは次のお話でお会いしましょう。
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