【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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はい、ということでQに入ります。基本的な流れは変わっていないです。前話と同じくQの序盤をギュッ!と纏めて抽出しているので、色々と省略しています。

また、新しい試みを後書きでしています。めっちゃ遊んでいるので、予めご注意ください。


新劇場版:Q
14年を超えて ※色々と省略してます


皮肉にも、昔より遥かに綺麗に見える夜空。星々が輝き、天の川が広がっている。宇宙は平和なのだろう。いや、やっぱり、そんなことはなかった。夜空では何回も発光現象が見られる。それは宇宙での自然現象にしては回数が多すぎる。これを鑑みると、人工的な現象だと見たほうが適当だと思う。そして、追加で流れ星が流れた。それもまた、自然の流れ星にしては非常に鮮明に強く輝いた。更に長い時間を。自然な隕石の落下による流れ星ではなく、人工的な物体による流れ星だろう。

 

地上でそれを見ていた者が二人ほど。

 

「初号機強奪は予定通りか。そして、エヴァMK-4のデータも取れた。まずまずだろうな」

 

「やっと会えるんだね。碇シンジ君」

 

「やれやれ、君は本当に彼が好きなんだな」

 

「えぇ。僕にとっての全ては彼ですから」

 

地上では赤い土地の上で空を見上げる老人と銀髪の少年。銀髪の少年は地上にオシャレに座っていて、その隣で老人が立っている。傍から見れば祖父と孫に見えてしまうが、実際は全く違う。

 

「しかし、こんなにL結界密度が高いところにいて大丈夫なんですか?防護服もなしに」

 

「あまり私の事を馬鹿にしないでくれるかな。これだけ長く生きて来たんだ。これくらい(L結界密度)、私には意味をなさんよ」

 

「流石ですね、冬月先生は。敵対する組織に塩を送るだけはあります」

 

「人聞きの悪いことを言わないでくれ。私は”うっかり”して書類を落としてしまっただけだよ」

 

含みのある言い方をする冬月。彼はちょっと、いや、かなり暗躍をしていた。歴史を変えかねない暗躍を。

 

「それを拾ったのが、僕の盟友ですけどね。もっとも、拾った書類と言うのは『死海文書』の写しでしたが」

 

「私も年老いてしまったということだよ。もう、74だからな。ミスはある」

 

「ご謙遜を…冬月コウゾウ副司令。一人の教育者として、家族として第三の少年を導いてきたお方が」

 

「自分の老いは否定しきれんよ…彼と再会したとき老けたと言われないといいがな」

 

「そうですね」

 

二人が見上げる空は満点の星空だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

少年が目覚めた。

 

目覚めたのを確認され、拘束された。そして武装した大人たちにガン見されながらストレチャーで運ばれる。運ばれる道中は多くの大人たちに憎悪の目で見られる。少年は自分が何をしたのかと疑問でいるしかなかった。

 

そうして、連れられた先には、懐かしき人達がいた。

 

「ミサト…さん?」

 

「碇シンジをお連れしました」

 

「ご苦労。下がっていい」

 

武装した者達は下がっていった。その代わり隣に一人の女性が立った。その女性は何時でも彼を拘束できるようにとテーザーガンを持っている。怖い怖い。

 

「ここって…どこなんですか?ミサトさん…僕は…なぜここにいるんですか?」

 

「勝手にしゃべるな…このガキが」

 

「…」

 

よくわからないが誰かに罵倒された碇シンジ君。これにはショックを受けて、引き下がった。可哀想に。その動かなくなったシンジを哀れに思ったのか隣の女性が肩を持った。しかし、シンジはそれを払った。

 

「碇シンジ君…あなたは何もしないで。あなたはここにいなさい」

 

「え?ミサトさん…どういうことですか!僕が何をしたって言うんですか!久し振りに会って、それですか!」

 

久し振りの再会と言うのに、昔と全く違う、あまりの物言いにシンジは反発した。無理もない。久し振りに再会した家族にも等しかった人にこう言われては反発するしかない。しかも何の前触れなく、いきなり「何もするな」だ。意味が分からない。

 

「何もするなって…訳が分かりませんよ。一体、どうしたっていうんですか!」

 

「…」

 

何も答えない葛城ミサトにシンジは反発心を滾らせて体を震わせる。お付きの女性が何があってもいいようにテーザーガンを首元に当てるが、シンジは一切動じることは無かった。

 

この場の事態は変わることは無いかと思われたが。

 

けたたましい警報音が鳴り響いた。

 

「パターン青!エヴァMK-4です!」

 

「来たわね…副司令の挑戦状が」

 

「総員、第一種戦闘配置につけ」

 

「パターン青って!使徒ですか!何ですか!?」

 

誰も答えない。シンジの絶叫に近い声に耳すら傾けようとしない。なんと非情なことか。いくら何でも、これは度が過ぎるだろうに。シンジもこう対応されてしまい、半ば自棄になった。

 

「そうですか…わかりました。なら、それでいいです」

 

あわただしく職員らしき大人たちが動き始める。見事なほどにハブられたシンジは何も言うことなく、ただひたすらに下を向いていた。下を向きつつ、傍にいたお付きの女性にも聞こえないような声でつぶやいた。

 

「冬月先生…僕は何をしたんですか…」

 

どこかも分からない居場所。周りにいた職員たちは物理的に上へと上がっていった。よくわからないが、少なくとも、ここはNERV本部ではないことは明らかだ。それだけでもよく分かった。

 

ずっと下を向いていると、女性が手をつかんだ。

 

「ここは危険ですので避難します。避難先は碇さんの部屋ですけど」

 

「…」

 

シンジは抵抗することなく大人しく従った。大人しいシンジ君。これはシンジが意図的にした態度だった。昔、冬月から教わった非常時の動き方の一つだ。敵対勢力などに捕まった場合は素直にしておいた方が良いということを。先までは混乱して取り乱したが、時間が経って冷静になったことで教えを思い出した。

 

連れられてきた先は部屋と言うのは不適切だ。なぜならプライベートがない。プの字も無い。これは酷い。全面強化セラミック板で作られていて丸見えだ。どこぞの監獄よりもひどい。これは、どうやら、自分は相当の取り扱い注意人物なのだと理解した。

そんな部屋の中でやることもないので、置かれていたベッドで横たわって、彼はブツブツつぶやく。呟いて暇を潰すことにした。

 

「綾波は生きているはず…なのにいない。どこにいるんだ?」

 

「それに、冬月先生はどこにいるんだ?」

 

「僕はなんでこんな目で見られなくちゃいけないんだ?」

 

「なんで?なんでなんだろう?」

 

呟くこと全てが疑問だった。無理もない。人間はこのような状況に置かれると、疑問しか浮かばない生き物だ。それも、まだ14歳の少年である。思春期でただでさえ不安定な精神を揺さぶられる。

 

呟いていると、時折部屋が大きく揺れた。パターン青と誰かが言っていたので戦闘をしているのだと想像できる。しかし、不可解なのは「エヴァMK-4」という単語が聞こえたこと。そんなエヴァは聞いたことが無いし、エヴァを敵としているようだった。

 

エヴァが敵?

 

使徒なのか?

 

分からない。誰か教えてくれ。

 

分からない内に時間がドンドン過ぎていく。揺れに揺れる部屋の中でシンジは一つ確信を持った。

 

「僕は…ここに居場所が無い」

 

~数十分後~

 

30分経ったであろうか、随分とまぁ、彼は待たされた。シンジは急に呼び出された。彼と先のメンバー達と面会を許可されたというのだ。また監視されながら面会所に連れられると、板を挟んで葛城ミサトや赤木リツコが立っていた。ようやくマトモな話をすることができる。

 

「話をさせてくれるんですね」

 

「えぇ」

 

葛城ミサトではなく赤木リツコの口からではあるが、長々と説明がなされた。そこではシンジは初号機から初号機からサルベージされて戻ってきたことを知った。そして、その初号機はこの艦ヴンダーの主機として組み込まれていることを知った。さらに、彼が一緒にいたはずの綾波は戻ってくることは無かったことを…知ったのである。シンジは堪らず数回質問をしたが、基本的に誰からも答えを教えてくれることはなかった。まったく非情な!

 

「綾波はいない…そんなおかしなことはありません。あの時、僕は確かに綾波を助けました。絶対にです。リツコさんがそう言っても、僕は信じませんよ」

 

「そう…私は事実を告げたわよ」

 

「だから何ですか。ここまでして、僕を腫物のように扱って。もう、信じられません。誰も」

 

話していたら、来客が来たようだ。向こう側に。

面会室の扉を開けて入って来たのは、眼帯を付けた少女だった。その少女はシンジも非常に、極めて、とっても良く知る人物であった。その少女を見ると、シンジは思いっきり椅子から立った。

 

「アスカ!よかった!生きていたんだね!体は大丈夫なの!アスカ!」

 

大人衆を信じられることは無かったが、過去のエヴァパイロット仲間なら話はガラリと変わる。それも皆で仲良く過ごしてきた仲間なら、更にもっと変わる。

 

シンジは少女が無事でいることに安堵して、喜んだ。

 

しかし

 

少女の方は違ったようだ。

 

バン!

 

板にひびが入った。少女は思いっきりシンジの顔面を殴ろうとして、板が阻んだからだ。

 

「え…ア、アスカ?」

 

「このガキシンジ…何をしてくれたのよ。結果的にサードを引き起こして!あんたのせいで!」

 

「な、何を言っているんだよ!サードって!何だよ!僕は君を助けた!そして綾波を助けた!それだけじゃないか!」

 

「自分で考えなさい。そのくらいも出来ないで、あたしの前に立たないで欲しいわ。アンタのせいで世界は狂ったのよ…あたしの人生も。ここにいるみんなもね」

 

「アスカ…何だよ。あぁ…いいよ!もう!僕はアスカの事を助けたんだよ!それなのに、なんだよそれは!ミサトさんもリツコさんも、皆は仲間だったのに。皆、僕を蔑むんだ!なんで何ですか!僕が一体、何をしたって言うんですか!教えてくれてもいいでしょう!綾波もいないし、何が何だか。僕にはさっぱりわかりません!理解できません!」

 

「…そう。面会を終了して」

 

無機質にミサトは言い放った。そういうと対面の光景は見えなくなった。操作式の曇りガラスのようなシステムだ。シンジは立ったまま頭をその板に叩きつけた。一回だけに飽き足らず、何度も何度も。額が割れてしまう。

 

「碇さん!そんなことしたら危険です!」

 

「いいですよ、もう。もう、僕は誰からも必要とされていない。誰も僕を見ていない、誰も僕の言うことを聞いてくれない。フッ(軽く笑う)、僕は…なんで生きているんですかね」

 

そういった直後だった。

 

(君のことは私が必要としているのだがな。世界がどうであっても、彼女たちがどうであっても、私は君を見ている。君には生きてほしいよ)

 

懐かしき声がまた聞こえた。今度聞こえた声は、今一番、シンジが欲している声だった。

 

「先生?先生なんですか?」

 

すると今度は

 

(碇君…どこ?)

 

「あ、綾波?やっぱり、生きていたんだ!」

 

すると絶叫が聞こえた。

 

「碇さん!緊急事態です!こっちへ!」

 

ずっと引っ付いていた女性が自分を呼ぶ。しかし、シンジはそれに応じない。当たり前だろう、こんな所に自分がいるべきではないのだから。それに、言うことを聞いたところで彼にとっての事態は好転しないと思われる。

 

「綾波!先生!ここです!ここにいます!」

 

面会室の側面部にあたる壁が破壊された。壁に穴が開いて、空が広がっている。直後にその空を埋めたのがエヴァだった。ちょっとだけ見た目が異なっているが、彼にとっては良く知っているエヴァだった。

 

「エヴァ零号機…やっぱり綾波は生きているんだ!」

 

エヴァは手を穴から捻じ込んで、シンジの前で手を開いた。その開かれた手には、恩師が立っていた。

 

「ふむ、その感じだと元気そうだな。碇シンジ君」

 

「冬月…冬月先生…ですよね?」

 

「私以外に何だというのだね?私、冬月コウゾウは世界でただ一人だよ。君の冬月コウゾウだよ」

 

「先生!今、そっちに行きますね」

 

行こうとした瞬間、それを制止する声が響いた。

 

「やめなさい!シンジ君!」

 

「ミサトさん…何だよ。今になって。あれだけ僕を邪険に扱って。話が良すぎますよ、僕に言うことを聞けなんて」

 

「おや、君とも再会できるとは思わなかった。本当に運命とは分からないものだな」

 

「冬月副司令、あなたには彼を渡しません。碇シンジ君、あなたのことは我々が預かります。そっちに行ってはなりません」

 

「何でですか、僕が信じることができるのは冬月先生だけです。もう、ミサトさんなんて信じられませんよ。本当の大人に僕はついていきます。それが冬月先生です」

 

「らしいぞ、葛城ミサト、ヴィレ司令。彼は、碇シンジ君はこの私の保護下にある。よって、身柄を引き受けるのは必然的に私だ。君たちに文句の付けようはあるまい」

 

「はい。僕は冬月先生の下でしか動きませんから。あなた達の事なんて知りません」

 

そう言って冬月の下へとシンジは歩んで、二人共にエヴァの手の上に立った。二人とも立つとエヴァは手を閉め、ヴンダーから離脱に入った。エヴァは背部のブースターを点火して逃げに入っていった。無人艦やエヴァ八号機からの攻撃がなされたが、アダムスの器には通じない。見事なまでの逃げっぷりで感服してしまう。

 

その光景を残された者は見ているしかなかった。ミサトは空に向かって何かしらの装置を掲げていたが、装置を操作をすることはできなかった。

 

ただ、飛んでいくエヴァを見つめているだけだった。

 

続く




※ここでの話はメインストーリーとは全く関係ありません

「私が次回予告をするのかね?ふむ、そうか。わかった。では」

~♪次回予告のテーマ♪~ 

目覚めた第三の少年、碇シンジ。目覚めた場所で懐かしき仲間たちと再会するも、仲間達からは蔑まれ、邪険に扱われてしまう。まさかの冷酷な仕打ちに彼は心に傷を負ってしまい、遂には心を閉ざした。

しかし、その時現れた一機のエヴァ。エヴァにはシンジの祖父であり恩師の冬月コウゾウが立っていた。自分が心から信頼出来る人と再会したシンジはミサトたちより冬月を選んだ。

エヴァが向かう先、そこは旧NERV本部。

果たして、シンジを待つものとは?


次回 新世紀エヴァンゲリヲン 「やぁシンジ君。僕の全ては君のために」


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