【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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GWの内にQワンちゃん終わるかもしれないです。Q自体、映画が短かったのと考察が難しいのが相まって、どうやっても短くなっちゃいます。


君ならどうする

~NERV秘密倉庫~

 

「私を呼び出すとは、何が君を動かしたのかね。アダムスの器よ」

 

「わからないことがあるから。何かわからないときは人に聞く」

 

「何が君に引っ掛かっている?SEELEと碇のために動く、崇高な犠牲者たる贄が」

 

冬月は元NERV本部の僻地にあたる所で、一人の少女と面会していた。面会と言っても一対一の天秤の釣り合った形態ではなく、一対多数となっている。言うまでもなく、一は冬月コウゾウで、多はアドバンスド・アヤナミシリーズとなっている。初期ロットのアヤナミ・レイとその他のアヤナミシリーズがいる。もし、常人がここに来たら腰を抜かしてしまうだろう。驚異的な精神力と長い人生で経験のある冬月ぐらいでなければ、この空間に身を置くことは不可能だ。

 

「私たちはフォースインパクトを起こすことで一つになる。そして、無に還る。争いも格差も何もない本当の平和な世界に。それが一番の望み。でも、碇君は違った。他者との交わりを望んで、この世界で生きることを望んでいる。わからない。なぜ?」

 

喋っているのはアヤナミ・レイ一人だが、冬月を見ているのは、彼女とその他のアヤナミシリーズも加わるので、彼には相当の重圧がかかる。想像してほしい。複数人の全く同じ見た目の少女たちが、ジッと自分を見つめているのだ。

 

「これはいい傾向だと捉えるのが順当だろうか…まぁいい。その答えは簡単だよ。彼は希望を持っている。どれだけこの世界が残酷だろうが、彼は希望を持っている。争いが絶えず、貧困などの格差が是正されなくても。彼は彼なりに世界を信じている。希望を持っている。とは言っても、これは"とある老人"の受け売りだかね」

 

「希望…この世界は残酷。誰も救われない。救われるためには無に還るしかない」

 

「世界の捉え方は人それぞれだろう。君の世界の捉え方は、私からも彼からも言うことは無い。だが、悲観的過ぎると人生はつまらんよ。逆に楽観的過ぎても困りものだが、それでも多少はな。世界をもう少しは気楽に見てもいい。そうやって悲観的に見がちだが、争いは確実に少なくなっている。数百年前よりかは圧倒的にな。絶えることは無いからと言って、そんなに思考を強硬的にしてはな。格差だって、昔に比べれば相当改善された。それは紛れもない事実だよ。まぁ、こんな時代に言っても、信じてもらえんだろうがね」

 

「碇君は世界を信じている…だから彼は生きる。無に還ることを拒絶する。わからない。けど、彼はそれを望んでいるのは確実」

 

冬月もまた無に還ることは拒絶していた。かと言って、ずっと生きたいということでもない。世界に絶望したわけでも、永遠の安らぎを求めているわけでもない。彼の場合は自分の寿命を鑑みている。もう、すでに年齢は74と高齢者に足を入れている。それに長い間をNERVの副司令官として戦って来たので、身体的なダメージは蓄積されている。外には見えないダメージが貯まっている。さらに、L結界密度の高い地上で活動をしてきたので、もうそろそろ体は難しい。悪足掻きをして長い期間を生きるより、全ての職務を果たして、全うして、少年の願いを叶えてあげたら、すぐに逝きたいと思っている。無駄な長生きは無意味でしかない。

 

そんなことは誰にも伝えることは無い。伝える必要性は皆無なのだから。

 

「無に還るか、還らないか。生きるか、生きないかは君次第だよ。君の好きなようにすればいい。他者に命令されることなく、君の思うがままに。君はSEELEと碇のためだけに動いて来た。それは、もう、やめなさい」

 

「自分の意思で動く。命令は…どうすれば。こんなとき、本当の私はどうするの?」

 

「オリジナルに関心を抱くか。そうだな、オリジナルである綾波レイ君なら、迷わずシンジ君と生きることを選ぶだろう。たとえ、それが命令に反しても、どれ程自分にとって辛い世界でもな。彼と過ごすことは、無に還ることを馬鹿げたことにしてしまう。レイ君ならな。だが、君はレイ君とは違うんだ。全く同じ道を歩もうとしているのなら、それもやめなさい。自分で考えてこそが、人生だからな」

 

「自分で考える…」

 

アヤナミ・レイはそのまま沈黙してしまった。おそらく必死に自分の頭で考えているのだろう。彼女はこれまで自分で考えて動くということをしてこなかった。命令という飛行機に引っ張ってもらうグライダーのようだ。しかし、これからは違う。これからは自分にエンジンを搭載した飛行機として動かないといけない。慣れていないことだから、すぐには出来ない。これは仕方ない。作られたアダムスの器たるアドバンスド・アヤナミシリーズには。

 

「なに、まだ時間は少ないとは言え、あるものはある。その時間で考えなさい。セントラルドグマに入った後は、君たちの自由だ」

 

そう言い残して冬月は去っていった。残されたアヤナミ・レイはそのほかのアヤナミシリーズに見守られながら、一人ポツンと苦悶していた。

 

自分の人生。それをどう生きるのか?

 

その問いは、彼女なりの答えが出るまで彼女の頭から消えることは無かった。

 

面談を終えた老人はこれからの予定を考えていた。まさかダブリスの器がここまで自我を持ち出すとは思わなかった。よっぽど、シンジ君との接触と交流が刺激的だったと見える。こればかりは想定外だった。いくら冬月でも読めないことはある。

 

「第壱拾参号機の完成は近い。完成すれば、即投入できるだろう。エヴァMK-9の修復も完了している。リリスが閉じた結界を突破するためのエヴァンゲリオン第壱拾参号機か。それだけでなく、第十二の使徒と融合して疑似シン化形態を越えた神と等しい存在となることでフォースインパクトを発生させる。厄介なことだ。私に出来ることはさせてもらうが、どうにも出来ないことはある。葛城ミサト君に期待するのも必要か。彼女には加持君を通して”落とし物”を拾ってもらったが、それを有効に使って貰えていると信じるしかないか。無論、三人にも頑張ってもらうが、相手は…リリンの王。碇ゲンドウだからな」

 

現在進行形である運命の全てを仕組んでいるのは、全ての王たる碇ゲンドウだ。もう、彼は人間を捨てている。己の願いのために世界を巻き込んだ盛大な劇を開いている。その劇が成功するためには、ありとあらゆる生命が消えることになる。

 

その劇は非常に面倒な手順を経なければならない。その手順の一つにフォースインパクトがある。冬月としては、これを止めたい。フォースを止めたいが、おそらく無茶だ。なぜなら、全ては仕組まれている。ならば、無茶なことをして失敗するよりは、事態を軟着陸させた方がましだ。その意味で冬月は動いていた。SEELEも碇ゲンドウにとってもイレギュラーな形でフォースを発動させて、それを軟着陸させる。とても、とても、胴体着陸は御免だ。

 

そんなことを考えていたら。

 

「いいとこに来ましたね、冬月先生」

 

「君か、何か用かね?」

 

廊下を歩いていると渚カヲルが話しかけてきた。それも、冬月のことを待ち伏せしていた。まったく、本当に彼は神出鬼没だ。この四字熟語以外に似合うものは無い。断言しよう。

 

「丁度、シンジ君に誘われまして。星を見ないかと」

 

「星か…そうか、もう夕方か」

 

時刻は夕方の後半部分であるため、あと一、二時間も経てば、空にはキラキラ輝く星の海が広がる。サードインパクトによって大地から建物は消え去った。建物が消えたということは光源が消えたということ。光源が消えれば、光で隠されていた星空が見えるようになるのだ。皮肉にもサードインパクトの副作用で本当の星空が見えるのだ。

 

「いかがです?」

 

「そうだな。私も参加させてもらおう」

 

~いつもの広場~

 

「あれ、先生も来たんですか。よかった、先生を一人呼ばないのは気が引けたので」

 

「すまんね。邪魔をして。思い返せば、意識して星空を見たことは無かったから、これがいい機会だ。出撃前の思い出づくりと興じよう」

 

「冬月先生がいれば、色々と聞けるしね」

 

「そうだね。もうすぐで、夜が来るはずです」

 

その後、三人はごろんと寝て、星空を見ていた。その光景は教師と教え子二人という景色他ならなかった。

 

出撃の時は近い。

 

セントラルドグマへ。

 

続く




GW中にはサブストーリーも投稿します。また、頂いている一部リクエスト反映ですが、執筆作業が難航しています。このメインストーリーはストック(書き溜め)を修正して投稿しているので時間はかかりませんが、リクエストは一から書いているのでどうしても時間を必要とします。GW中にメインストーリーと並行して投稿できれば、投稿します。予めご了承ください。

次回予告

アヤナミ・レイは冬月コウゾウに自身の疑問をぶつけた。それに答えた冬月は、彼女に自分の人生を歩むことを伝えた。彼女の人生を。

セントラルドグマ突入の前に思い出を作るため三人は空を見上げる。

エヴァンゲリオン第壱拾参号機の建造は終了し、ついに完成する。出撃の前にカヲルはシンジにつけられた楔を取り除く。

次回 新世紀エヴァンゲリオン 「元々は自分を恐れたリリンが作った物 いや、そんな勝手は許さんよ」

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