【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね? 作:5の名のつくもの
※お詫び※
第三村は本話で入りきらないので、分割して投稿します。具体的には前後編になるかなと。
第三村;前編
長々と歩いていた4人一行だったが、ようやく、彼らは仲間に救出された。何度も申し上げているが、大地は赤く染まっている。それを裏付けるように、大地はコア化され、更にそれに帯同して尋常じゃない強さのL結界密度のせいで通常のリリンが行動することはできない。しかし。それでは何もできないではないか。そこで、リリンたちは知恵を絞り、防護服を作った。その防護服を纏った者が4人を助けに来た。
「待たせてすまなかった。連絡を受けた時は、飛び跳ねて驚いたよ。まさか、碇が生きているなんてな。なんか、おまけがついているらしいが。さて、表向きの理由はミサトさんたちから聞いているけど、本当のこと(真実)はもう一人のパイロットさんを通して、聞いているよ。安心してくれ」
「はぁ~、やっぱり、アイツは繋がっていたのね。どうりでアイツだけは動きが違うわけね」
「まぁ、まぁ。さ、乗りな。一気に俺たちの家に行こう」
4人は車に乗り込んで、そのまま目的地へと向かう。このまま歩きで向かうにはあまりにも時間がかかるし、途轍もなく疲れる。ここは、文明の利器で、車という非常に便利な乗り物に乗って向かう。運転手たる人物は単に4人を助けたのではなく、全ての事情を知った上で彼ら彼女ら家に送る。全ての事情とは?それは、まさしく、"全て"だ。全てを伝えた人物はもう一人のエヴァパイロットで、そのパイロットを経由して情報が来たらしい。
ということはだ。実際には、裏の人物がいる。まぁ、ここまで言っておけば、もうお分かりだろう。
答え合わせをするまでもない。
その車は一気に山を登って行った。
~数時間後 とある村~
「さて、着いたけど。4人は一旦検査を受けてくれ。いくら4人がL結界密度を無視できる体でも、念のためな。向こうに病院というか、診療所があるから、そっちに行ってくれ」
「君はその防護服を脱いでいいんじゃないかな?ここなら、L結界密度は高くない、むしろ、ゼロだよ」
「あ、そうか。ちょっと待ってね」
防護服は物理的に厚い。己の身を守る為には厚い鎧が必要なのだ。手際よく防護服を脱いだ者は、シンジにとっては再びの14年越しの再会だった。この再会は非常に優しい、とてもホッとする再会だった。
「久しぶりだな、碇」
シンジは割と冷静に、再会を喜んだ。ギャアギャアとわめくような喜び方はしなかったが、純粋に喜んでいるのは確かだ。
「長く語り合いたいところだけど、まずは向こうでね」
「そうだね。また、後で」
ここで語り合いたいが、そうはいかない。シンジは先に行ったアスカを追いかけるように言われた場所に向かった。それについていく形でカヲルもついて行こうとしたが、呼び止められた。
「君も、訳ありなんだよな?」
「そう、僕は訳ありさ。君たちのようなリリンでも、シンジ君達のような存在もでもない。だからと言って、何か危険なことをすることは無いから、安心してほしい。僕がすることは、シンジ君のためになることだけさ。もちろん、彼が望まないことは絶対にしない」
「そうか。なら、シンジの知り合いとして頼みたい。シンジを守ってやって欲しい。シンジは戦いすぎたんだ。しかも、一人で、だから、シンジを助けてやってくれ。俺ができるのは周りの、この環境を維持することだけぐらいなんだ」
「わかった。一応言っておくけど、元々、僕が生きる意味は彼の幸せのためだからね」
そう言ってカヲルも向かっていった。防護服を右手に持って、それを見送るケンスケ。彼は脳裏にとある人の言葉が再生されていた。その人物は、たった一人で、孤独で、命を捨てた戦いをしている。
「シンジ君は本当の寂しさを知っている。だから、強い時は強い。だが、それはまた表裏一体。弱い時はとことん弱い。だから、私のような老人が支えるのだよ。しかし、それも永遠とはいかん。私とて、こんな齢だ。いつ、死ぬか分からんからな。そこでだ。君たちに頼みたい。彼を…支えてやってくれ。無論、君たちだけでとは言わん。みんなで、シンジ君の事を支えてあげて欲しい」
それを思い出したケンスケはボソッと呟いた。
「シンジは、本当に良い先生を持ったな」
所変わって、診療所では。
~診療所~
「来たか…シンジ。その、なんや。久しぶりやな」
「トウジ…やっぱり生きていたんだね。それに…もしかして」
「分かるか?わしの嫁さん、そう、委員長や。覚えてるか?」
「碇君、私。洞木ヒカリよ。本当に…久しぶりね」
「覚えているよ。いくら14年、僕は寝ていてもね」
診療所に着くなり、そこには出迎えが二人いた。シンジの親友の一人、鈴原トウジと、彼の奥さんである、シンジが中学在籍していた時のクラスの委員長を務めていた洞木ヒカリだった。二人をシンジが忘れるわけがない。クラスの中でも彼らは仲良しとして有名だったからだ。
「わしは話したくて堪らないんだが、ちょっと我慢してくれ。やるべきことがあるからな」
「うん。いいよ」
ここでも本当に久しぶりの再会を果たしたのだが、先にしなければならないことがある。まずは、そっちを優先だ
シンジ達は見た目から分かるほど、綺麗で凄そうな装置をして検診を受けた。カヲルとレイを除いた彼らは特殊な存在だ。それは、とてもとても、一言で片づけることは出来ない。
ちょっと、これは適当ではないが、「エヴァの呪縛に縛られし者」というのが良いだろうか。
検診では特に異常とかは確認されなかった。いや、異常はあるにはある。目に見えて分かる。成長(加齢)していないということ。14年前の姿を変わらずに維持している。見た目だけでは無く、体の中身も変わっていない。特にシンジは14年間ずっと寝ていた。いくら寝ていたとはいえ、全く変化なしというのは明らかに異常だろう。これを異常と言わずに、何と言う?
検診は長時間にわたったが、横になったりしているだけでよかった。そのため、昔、遠足で行った国立の施設での長ったらしい、幾度となく行われる滅菌作業に比べれば遥かにマシだった。
全員が検診を終えると、総員が勢ぞろいした。なんせ、なんと、14年越しの再会なのだ、積もる話は富士山をも超える。じゃあ、積もる話を話そうと行きたいところだが、トウジ&ケンスケにとっては初めましての人(?)が二人いたので、そっちが優先された。
「えっと…僕の左隣にいるのが渚カヲル君。なんて言えばいいのかな…カヲル君は…」
「僕はシンジ君の兄かな」
「え?」
「あんた…いい加減にしなさいよ」
「冗談だよ。シンジ君の友達でいいよ」
カヲルが爆弾を投下し、見事に炸裂して燃え広がった。しかし、それはいい意味で燃え広がり、固かった空気が柔らかくなった。これをグッジョブと見るか、バッドと見るかは皆様次第だろう。
「そ、そうなのか。よろしくな、カヲル」
「よろしくね、渚」
「そして、彼女はアヤナミ・レイ。あの、その。3人が知っている綾波とは…違うんだ」
トウジとケンスケは最初アヤナミ・レイを見たときは、綾波・レイかと誤解した。見た目は全く同じだからやむを得ないが、シンジから言われる前に違うと気づいた。なぜなら、雰囲気が違ったからだ。オリジナルの綾波・レイはシンジとの生を謳歌していたから、雰囲気は柔和だった。しかし、このアヤナミ・レイは冷たい。冷たいというか、無機質?と言うか。
「そう…やな。その、なんだ。シンジ、辛いな」
「碇、辛いからと言って、馬鹿はするなよ」
二人は綾波のことを何となく察していた。ニアサーやサードについてはマリ経由で裏のフィクサーから知らされている。だから、シンジの身に何があったのかは知っている。それを踏まえた上で、シンジの心を察した。毎日、離れることが無かった二人。その二人が引き離されたのである。
「大丈夫だよ。馬鹿なことなんてしたら、先生から叱られるからね」
シンジは強かった。澱みなく答えた。
「にしても、シンジが生きているなんてなぁ。よく帰って来た、シンジ」
「あぁ、まったくだよ。碇、還った来たんだし。今は休んだ方がいい。碇は働き過ぎたんだ」
「で、でも。そうかな?」
「そうよ、あんたは一人で突っ走り過ぎたの」
3人から言われてしまっては、シンジは大人しく言うことを聞くしかない。フォースでは、シンジの献身が無ければ止めることはできなかった。シンジ以外にも働いた者は沢山いるが、一番は?と聞かれれば、答えはシンジしかない。誰がシンジ以上に働いたと言うのか。
「ま、食べながら話そう。せっかくの料理が、冷めちまうからな」
「そうだな」
食事をしないで語り合うのはつまらない。食べながら話すのは、人類の歴史でも証明されてい楽しい事である。黙食と言うのも大事なことだが、友と語り合いながら食事をとることの方が大事だ。それだけで、思い出になるし、何よりも心が軽くなる。
そうして皆で語り合いながら食事をとるのだが。
「ほら、シンジ」
「シンジ君」
「あっ、その。一人で食べられるんだけど…」
「ダメよ」
「それはいけないね」
「助けて…トウジ、ケンスケ」
「「…」」
アスカとカヲルに挟まれて、迫られているシンジ。そのシンジに助けを求められ、助けようがないトウジとケンスケ。そして、一人で黙々と食するアヤナミという構図だった。
うむ、これは後で戦争が起きそうだ。
続く
冬月先生の登場は先ですかね。
次回予告
旧友と再会を果たし、喜び合うシンジたち。友たちは全てを知っていて、シンジを支える。
第三村と呼ばれる、一種のシェルターで生活をするシンジ。何もしないのは気が引けるので働くことにする。
日本の原風景が広がり、生存者たちが力強く生き抜こうとする姿を見て、シンジは決意を新たにする。
次回 新世紀エヴァンゲリオン 「第三村:後編」