【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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第三村で生きる。


第三村:後編

~翌日 第三村~

 

「さすがだな、碇は。午前6時の早起きは全く苦じゃないか」

 

「うん。昔はお弁当を作ったりしていたから、早起きは普通だったよ」

 

シンジとケンスケは午前6時に起きて、朝早くから活動をしていた。昨日の再会を祝した席では、各々の生活を教えられた。ケンスケは、このシェルターこと第三村で便利屋をしている。便利屋とは言うが、実際には第三村の機能を維持する機械設備の整備をしている。機械類は全部ヴィレやその下部組織であるクレーディトから貰っている。それらは全部ケンスケが面倒を見ている。機械は多岐に渡り、下水道や電気などの生活インフラから車、旧型鉄道車両を流用した設備などある。それを一人で頑張って整備している。

トウジは無資格だが、医者をしている。医者と言っても、本人曰く「真似事」らしい。彼が、そう言ったのには理由がある。その実情では、クレーディトやヴィレから貰った医療設備に頼り切っているからだろう。

 

さて、話を戻そう。シンジはケンスケの手伝いのために朝早くから動いていた。シンジはこの第三村で暫く暮らすことになる。第三村は沢山の人が、若人から老人までがお互いに助け合って生きている。ごく一部の人を除いて、皆が働いている。新参者であるシンジが働かないことは許されない。それはシンジが一番分かっていたので、自ら進んで労働を申し出た。

 

シンジはケンスケの運転する車に乗って、山を登っていく。

 

「今日は山の発電施設の点検をするんだけど、ちょっと見せたいものがあるんだ。この第三村のようなシェルターは、ヴィレの支援のおかげで成り立っている。物資以前の問題で、俺たちがこうやって人間の体を維持して生きていられるのはアレのおかげなんだ。後でもっと見せるけど、とりあえず、今見ておいてくれ」

 

そう言ってケンスケは指をさした。シンジはさされた方向を見ると、そこには大地に突き刺さった真っ黒な大きな円柱があった。所々に赤い紋章らしきものがある。見た目だけで言えば、不気味でしかない。

 

「あれのおかげで、大地はコア化せず、L結界密度もゼロだ。俺は定期的にアレの観察をしているんだけど、どういう仕組みなのかは全く分からないんだ。聞いた話だと、ミサトさんたちがNERVから奪取したらしい。仕組みが分かれば、整備をすることができるが、分からないから触ることも出来ない。もし、あれが壊れたら、俺たちは終わりだよ。その前に、決着をつけないとな」

 

「あれが…か」

 

シンジは得体の知れないの装置(?)を何となく眺めていた。

 

車を適当な場所に停め、二人は山道を歩く。誰も入らなそうな山奥に向かう道なので、舗装も何もされていない。ケンスケが踏みしめて作った道があるだけだ。その道を歩いていくと、途中から綺麗な川が沿って来る。

 

川は赤くない。死の水ではなく、生命が生きている命の水だ。

 

「まさか、こうやって本当の水を再び見ることが出来るとは思わなかったよ」

 

「そうだね。僕たちが知っているのは、赤い海と大地だもんね」

 

二人は川沿いに登っていき、少し開けた場所に出た。自然の展望台が出来ている。なるほど、眺望は中々よさそうだ。

 

「さ、仕事に取り掛かる前に、改めて見せようか。この大地を」

 

二人の前には、昔の世界がと今の世界が両立している。前者はサードインパクト以前の、青々とした自然と乱立する建物たちが構成する世界。後者は全てが赤く染まっていて、建物も何もない世界。

 

「さっき言ったことが分かるだろ?あの柱が一定の範囲の大地及び自然のコア化を無効化している。さらに、外から来るコア化の波やL結界密度の伝播を防ぐ防壁の役割をしているんだ。碇はもう知っていると思うけど、あのインフィニティもね」

 

「サードインパクトが残したものを…だね」

 

「あぁ。碇、あんまり考えすぎるなよ。碇はよくやったんだから。少なくとも、俺やトウジは認める。向こう(ヴィレ)で何があったかは知らないけど、碇は悪くない。周りの大人たちが碇を責めても、気にするな」

 

「そうする、とは言えないよ。少なくとも、僕がサードインパクトに関わってしまったのは事実だから。それに、僕の父さんがしている事なんだし」

 

前も述べたが、ケンスケは真実を知っている。ヴィレからもたらされた情報は余りにも少なくて、何も分からなかった。幸いにも、ヴィレ内部の協力者が裏の人物からの情報を伝えてくれた。それは、いっさい粉飾されておらず、真なる事実が伝えられた。だから、ケンスケはシンジが話すことは全て理解できている。

 

「そうか。まぁ、俺から言えることは無いな」

 

「ねぇ、ケンスケ」

 

「ん?なんだい?」

 

「なんで、二人は僕に優しいの?僕のせいで、色々と世界は狂ってしまった。二人も例に漏れずにね。直接的にではないけど、僕が関わってた。いくら、昔の友達でも、僕を拒絶して当然だよ。それなのに、二人は僕を受け入れた。なんか…信じられなくてさ」

 

「何を言うかと思えば、そんなことか。なんで俺たちが碇のことを拒絶するんだよ。俺たちは友達だ。それに、俺たちは碇にいつも助けられていた。碇が命を捨てて、使徒と戦って、使徒を倒してくれたから俺たちは生きて来れた。いくら感謝してもしきれない恩がある。それを忘れるほど、俺たちは薄情じゃない」

 

シンジは笑顔になって、ケンスケに答えた。

 

「ありがとう、ケンスケ」

 

「友達なんだから当然だ。さ、仕事に入ろう。今日の内に終わらせないと」

 

二人は自然の展望台から降りて、元の道に入る。入ったところで、ケンスケはシンジに釣竿を手渡した。

 

「この仕事は俺しかできない。だから、碇には釣りを頼む。いくら畑があって、安定的な食料供給が可能でも、食料が増えて悪いことは無い。それに、毎日野菜だと飽きるしな。頼むぜ」

 

そう言ってケンスケは発電施設がある方へと向かっていった。シンジは言われた通り、川で釣りを始める。第三村では昔ながらのやり方で農耕をしている。野菜はもちろん、主食となる米も栽培している。田んぼでは手植えをしている人たちを見ることが出来る。自給自足が成立していて、第三村の人々は飢えに苦しむことは無い。しかし、それでも食料は貴重なのだ。絶対的に数が足らないわけではないが、余裕がない。割とギリギリのラインを推移している。何があってもいいようにと考えるなら、余裕があって損は絶対に無い。畑の作物の増産に力を入れているが、そう簡単に上手く行くほど自然は優しくない。

 

「釣れると良いんだけど」

 

シンジは岩場に腰かけて、糸を垂らす。横にはクーラーボックスを置いてある。たくさん釣れても安心だ。シンジは川の水面に集中することは無く、周囲の景色を360度ぐるっと見回した。14年を超えて目覚めた時に見たのは、何もない。ただ赤いだけの世界。全ての生命は滅んでしまったのかと思われたが、違った。少なくとも、この第三村には自然が生きている。その時を知らないのに、懐かしいと感じる世界が生きている。

 

それが、シンジにとっては新鮮だった。前のように文明が発達した世界とは、また違う。これもこれでありだ。

 

「こんな世界でも、みんなは生きているんだ。先生も連れて来られたら良かったなぁ。冬月先生…先生は何をしているんだろう」

 

恩師の事を想ったシンジ。

 

その恩師は。

 

~????????????~

 

「とりあえず最低限までは完成したか。アディショナルインパクトのカギたる、四隻の箱舟が揃ったか。二番艦のErlösung(エアレーズング)、三番艦のErbsünde(エルブズュンデ)、四番艦のGebet(ゲベート)。皮肉なものだな。本当の意味は祈りだというのに、招こうとしているのはエゴか」

 

とある老人は、一人で佇んでいた。そして、呟いた。

 

「Alles ist für Jungen gesegnet.」

 

続く




次回予告

第三村で働くシンジ。

旧友が自分を拒絶せず、ありのままを受け入れてくれることを喜んだ。

しかし、彼には心残りがあった。恩師が心配だった。

その恩師たる人物は、着実にカギを揃えつつあった。

全てが揃うのは近いのか。

次回 新世紀エヴァンゲリオン 「箱舟」

「Es ist alles für die Hoffnungen des Jungen.」
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