【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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懐かしの再会。


ペンペン…?

~第三村近郊の湖~

 

今日はシンジたちは労働が休みの日である。休みの日は各々が好きに過ごすのであるが、皆で気分転換にどこかに行こうと言うことで、第三村の近くにある湖に来ていた。この湖はかつてのNERV本部の構成施設がニアサーとサードで破壊されつくした結果の廃墟と共にある。その廃墟には雨宿りなどのために、奇跡的に生き残った生物達が住み着いている。それを見に行こうとのことだ。

 

「NERV本部の跡か、やっぱり、見る影もないんだね」

 

「えぇ。ニアサーとサードによってNERV本部を中心にして起こった二度のインパクトで(厳密にはモドキ)、NERV本部どころか第三新東京市ごと吹き飛んだ。それは周囲のにも甚大な被害を及ぼした」

 

「でも、こうやって自然が戻って来たのは喜ばしいね」

 

「その、自然を取り戻すことの立役者である封印柱はNERVの遺産なんだけどね」

 

封印柱はヴィレが作ったものではなく、元はと言えばNERVが作ったものである。それは解説が不能な、文字通りのオーパーツでコア化とL結界密度を完全に取り除くことができる。また、外からの侵蝕と侵入を防ぐことができる。世界を破滅へと導こうとしているNERVの作りし物が、世界を救っているのは本当に皮肉な話だ。

 

ちなみにであるが、その封印柱はNERVから強奪されたのだが、実際には密約で提供された。裏のフィクサーたる者が、とある男を経由して様々な物品を横流ししたのである。

 

「ま、どうであれ、こうやって青き自然と触れ合うことが出来るんだからいいのよ」

 

「青い水…赤くない。なぜ?」

 

今日、湖を訪れたのはシンジ、アスカ、アヤナミ、カヲルの四人である。アヤナミは四人の中でも特に、自然に興味を示していた。彼女だけ、赤い海や赤い液体しか知らないからだ。青い水だけなく、全ての自然に興味があって当然だ。他の三人は、一応、国立施設で赤い海が浄化された青い海を知っている。

 

四人は廃墟から湖を眺めて、静かな世界に身を置いていた。

 

すると

 

「ん?」

 

「どうしだんたい?」

 

「いや、何か物音がしたから」

 

耳をすませば、所々からゴソゴソと音がする。アヤナミやアスカかと思われたが、皆は立ったり座ったりしていて、微動だにしていない。となれば、風などの自然音かと予想されたが、風は極めて微弱だ。物音を出すためには相当の風量が必要だ。この弱さでは音は立たない。

 

では、何が音を立てているのだろうか?

 

答えは直ぐにわかった。

 

「あれは…温泉ペンギン?」

 

団体さんで懐かしい動物がわらわらと出て来た。どうやら、この湖を住処としているようだ。人間が来たので、気になって出て来たのだろう。その動物はペンギンである。通称で温泉ペンギンと呼ばれる。シンジも良く知っている。なぜなら、昔、葛城ミサトの家で暮らしているときに、同居人として温泉ペンギンがいた。非常に賢く、一人で人間の飲み物を飲むことが出来て、新聞を読むことが出来る。更に極めつけは、人の言うことが分かるのである。なんと賢いのだろうか。

 

そんなペンギンの友がいたとシンジは懐かしんだ。懐かしんだというのは、おそらくその友は生きていない。ただでさえ、世界に破滅的な被害をもたらした二度のインパクトがあったのだ。それに人間でさえ、多くが死に追いやられたのだ。言い方が悪くなるが、人間でさえ生き残れたのは極わずかなのに、動物が生き残れるはずがない。

 

しかし、運が良いのか、一部は生き残ったようだ。それでも、本当に運がいい者達だけだ。おそらく、この中に自分の友達はいない。

 

シンジは悲しくなった。自らが招いたことで、友を殺してしまったのだから。

 

そう、思っていたが、人生とは本当に良く分からないものだ。

 

「ほら、シンジ。お友達が来たわよ」

 

「え?誰が?」

 

「誰って、ほら、よく見なさいよ」

 

アスカに促されて、シンジは温泉ペンギンの団体を注意深く見る。注意深く見ても、ただの温泉ペンギン達だ。テクテクこちらの方に歩いてくるだけだ。一般人にとっては、何なのか分からないが、シンジは何かに気づいた。まだ、確実とまでは行かないが、何となく、何かに気づいた。

 

もしかして…

 

「ペン、ペンペン…?ペンペンなの?」

 

群れの中にいた一羽は、ピクッ!と震えた。震えたかと思えば、絶叫に近い鳴き声音ともに猛然と走り出した。碌に整備がされていない土地なので、足場が非常に悪い。それでも、トップスピードを維持して驀進できるのは、動物の進化の賜物だろう。

 

「クエ~~~~!!!」

 

「やっぱり…ペンペンなんだ!」

 

群れから突出する形となった一羽の温泉ペンギンは勢いを殺すことなく、シンジに突撃を敢行した。その突撃をシンジはがっちりと受け止めた。後ろに尻餅をつきそうになったが、足を踏ん張って耐えた。

 

「クエ~!」

 

「ペンペン!生きてたんだ!」

 

ペンギンはその頭をシンジの胸元に擦り付けて、両手をバタバタを震わせて、全身で喜びを表現している。動物がこれほどの感情の表現をするというのは、極めて貴重だ。シンジはそれに応えるように、ペンギンを抱きしめる。

 

「何度目か分からない、14年越しの再会ね」

 

「そうだけど、これほど、喜ばしい再会は無いと思うよ。リリンと動物の心の繋がり。いいねぇ」

 

「あれは、何?」

 

事情を知っているアスカと、察したカヲル。そして、ペンギンが何かすらを知らないアヤナミ。三人は三者三様の見方で、その再会を見ていた。この再会は本当に喜ばしい。

 

「生きてたんだね…ペンペン。ごめんね、酷い目にあわせてしまって。大丈夫だった?」

 

「クゥ~」

 

人間のように言語を発することはできないので、その鳴き声の声色を変えることで、何とか伝えようとする。

 

「そうか、大変だったよね。ごめんね、僕のせいだ。皆を守るどころか、殺そうとしてしまった僕が悪いんだ。だから、僕は僕の尻拭いをするよ。全部にケリをつける。それにしても、ペンペンは変わらないね…、よかった。ペンペンが生きていて」

 

シンジの目から、涙が溢れ出て来た。まさか、ここで旧友と生きて再会できるなんて思っていなかった。

 

「クッ!」

 

ペンペンは優しく、手でシンジの目元を撫でた。涙を掬ってあげたのだ。そんな気遣いまでも出来るとは、本当に賢くて、心優しい温泉ペンギンだ。色々な邪念がある人間とは違って、動物は純粋だ。

 

「ありがとうね、ペンペン」

 

ふと周囲を見て見ると、先まで移動していた温泉ペンギンの群れが二人を取り囲んでいた。二人を中心に置いて、綺麗な円形をしている。スポーツの試合開始前にある円陣と似ている。

 

その温泉ペンギン達は二人の再会を祝うかのように、両手でパチパチと拍手をしていた。周りのペンギン達にとっても、仲間が友と再会できたことを心から喜んでくれている。そして、祝ってくれている。

 

「ちょうどいいし、ペンペンも釣りをする?」

 

「クエッ!」

 

シンジは湖に行くということで、釣りセット一式を持参していた。いつの時でも食料を手に入れたいというのだが建前だが、本音では純粋に釣りを好んでいて、楽しんでいた。ペンギンは基本的に魚を食べる。しかし、ペンペンは例外的に人間が食べる物でも、工夫すれば食べることができる。とは言っても、この状況なので贅沢を言うことは出来ない。素直に魚を釣って、ペンペンに食べさせるのが一番好ましい。

 

ペンペンとシンジは二人仲良く並んで釣りを始めた。シンジがペンペンに話しかけ、ペンペンが答えるという光景が見られた。釣れる度に、シンジはペンペンや他の温泉ペンギン達にあげていた。

 

非常に温かくなる光景だった。

 

続く




次回予告

今日もケンスケと共に働きに行こうとしていたが、今日は特別な仕事で第三村から少し離れたところにある場所に連れていかれる。

そこでは、近未来的な農業を行っていた。

そこで働くクレーディトの職員の一人に、知っている名前の人物がいた。

その者は。

次回 新世紀エヴァンゲリオン 「加持さん…」
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