【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

47 / 66
投稿時間がグラグラと定まっていなくて、申し訳ないです。

追記
一部を修正。投稿日21:26


加持さん…

友との懐かしき再会を果たして、心と心を通じ合ったシンジは、今日もケンスケと一緒に労働に出ていた。

 

あの日、ペンペンと意思疎通を行って、お互いの近況を報告し合った。ペンペンは人間と共に暮らすことはやめて、あの湖で群れの長として生きているらしい。湖には魚がいるので、食い尽くさない程度に食べて暮らしている。元より賢いし、野生の自制心を持っているので、人間のような乱獲はしない。ただ、それでも、辛うじて生態系を維持できているぐらいであるので、下手をすれば魚がいなくなりかねない。そこで、クレーディトが作った人工飼料を食べることもあるらしい。

 

こんな苦しい状況でも、ペンペンを含めて温泉ペンギン達は力強く生きている。それにシンジは元気づけられた。

 

少し元気になったシンジは、ケンスケの車に乗って、また違う所へ向かっていた。車に乗る前には防護服を着させられたので、今回は第三村を出る仕事らしい。ご存知の通り、第三村から外はコア化された赤い世界が広がっている。また、強烈なL結界密度により、生身で活動するのは自殺行為。防護服を着なければ、とてもではないが活動できない。

 

車を運転するケンスケはシンジに面白い所へ行くと言った。

 

「プラント?」

 

「そう、今まで第三村では手作業を基本とした古き良き農業をしていただろ?それもいいんだけど、効率が悪いからな。だから、徹底的な効率化として細部まで機械化された農業施設を作ろうとしている。機械化がされれば、人の手は必要なくなる。それだけ、別の事に労力を回せるから、結果的に発展が促される。将来的には第三村の畑は全部機械化するつもりだけど、その前段階の実験として、プラントを作ったんだ。第三村だと実験所を作るには土地が足りないから、外に作るしかなかったんだ。同時に、大地の浄化も試みている」

 

第三村の農業を古き良きと言えば好印象を持たれるが、裏を返して言えば、手作業が基本で非常に効率が悪い。ちょっと、それはいただけない。生存者の全員に食料を平等に余裕たっぷりで配給するために、農業の機械化による合理化は必須だ。その実験として、小規模なプラントが作られた。

 

ただ、念のためと言うことがあるので、比較的、L結界密度が弱く、緊急事態が発生しても、ある程度は逃げられる場所に作ってあるため、第三村からは少し遠い。本当なら歩きで行ける程度の場所に作りたかったが、こればかりは仕方ない。

 

「プラントは封印柱で守られているから中に入れば、防護服は脱いでいいからな」

 

「わかった」

 

車は赤い世界を進んでいった。

 

~実験プラント~

 

適当な場所に車を停めて、二人はしっかりと防護服を着てプラントに来た。プラントの中央部には封印柱が突き刺さっていて、その周りに緑が広がっている。水路が引かれており、水に不足は無いようだ。区画ごとに分けられており、それぞれの区画でクレーディトの職員が端末を手に持っている。おそらく、あの端末で畑の状況を把握しているのだろう。

 

「ここがプラントだ。ここで得たデータや経験を基にして、第三村の農業改革を進めるつもりさ」

 

「へぇ~ここが」

 

想像していたよりも、かなり機械化及び自動化がされていたのでシンジは驚いた。これだけの設備が第三村に組み込むことができれば、食糧問題は解決できるだろう。まだ先の先だが。

 

「あ、先生!」

 

「お、悪いな、仕事中に」

 

プラントの方に向かっていくと、こちらの方を確認したのか職員の一人が反応した。ケンスケは第三村の便利屋で機械関係は彼が一人でこなしているので、クレーディトからも知られている。一種の有名人である。

 

「いえ、先生がいないとクレーディト&ヴィレと第三村の連絡がつきませんから。こうして、こっちにも来てくれないと、むしろ僕たちが困りますよ」

 

「そうか、ならよかった」

 

ケンスケはその立ち位置から、クレーディト及びヴィレ側と第三村側の間に立って、連絡役をしている。

 

「あ、新しい方ですか?」

 

「そうだ。ほら」

 

「僕は碇シンジ。よろしくね」

 

目の前の人物は防護服のうち、頭をすっぽりと覆ってしまうヘルメットを取って、自身の顔を見せた。見た目も背丈からも、シンジと同年代と思われる。

 

「よっと。僕は加持リョウジ、よろしくね」

 

「よろしく」

 

シンジはがっしりと握手を交わした。ただ、内心では大きく動揺していた。名前が、自分が知っている人と全く同じだったからだ。世の中に同名の人物がいるのは、そこまで不思議なことではない。しかし、それでも、今回は不思議だ。あの人物と同じなのだから。

 

「彼は加持リョウジ君。クレーディトの職員として、L結界密度の比較的弱い土地の浄化を試みている。同時にプラントで農業の実験をしてくれている。彼らのおかげで、俺たちは生きれていると言っても過言じゃない」

 

「過言ですよ。僕たちはお互いに支え合って生きているんです。お互い様ですよ」

 

「さて、一つ仕事だと思って、彼に現状について教えてあげてくれないか。まぁ、俺も聞きたいんだがな」

 

「わかりました。ここだと場が悪いですし、こちらへ」

 

クレーディトはNERVとバチバチにやり合うヴィレとは違って、地上での生存者支援や復興を行っている。そのため、現地の細かい情報はヴィレやケンスケ達よりも持っている。だから、ケンスケも情報を手に入れるために聞いておきたい。通信で聞けないこともないが、今が丁度いい。

 

コンクリートでしっかりとした足場のある場所で、報告を受ける。

 

「見ればわかりますが、プラントの方は順調です。L結界密度とコア化の侵蝕が無ければ、機械は動けます。ただ、やはり電気を食うので、エネルギー源が必要です。どうにかして省エネルギー化をしようと思っていますが、すぐにはできません」

 

「電気がネック…か」

 

「そう、第三村でも電気は使えるけど、電力供給は弱い。一応、鉄道の旧型車両のエンジンを使って仮設の発電施設があるけど、それだと足りない」

 

機械があれば急速な効率化を見込めるが、そのためには電気が必要になる。電気が無ければ機械は動けない。クレーディトで発電機を持っているので、それを使えばいいと思われる。しかし、それはクレーディトが使いたい。第三村にも発電施設があるが、第三村の家々や電気以外のインフラへの供給でいっぱいいっぱいだ。幸いにも、第三村がある旧二俣線は、ニアサー以前から非電化路線だったので、その施設には旧型のディーゼル車が保存されていた。そのため、旧二俣線で使用されていた旧型ディーゼル車のエンジンを修理して、それを流用し、即席の発電機としている。これで多少の公共設備の電力を賄っている。ただ、それはあくまでも小さな発電機であって、本格的な発電施設には到底届かない。

 

「まぁ、ここらは俺の仕事でもある。電力関係は俺も頑張ってみるよ」

 

「すいません、お願いします」

 

「世界を覆う、L結界密度の浄化はどうなっているの?あの、柱が働いているのは知っているけど」

 

「うん、あの封印柱があれば大地の浄化は出来るんだけど、数に限りがあるんだ。ヴィレで封印柱の分析が行われているんだけど、首尾は良くないんだ。なんせ、あのコア化とL結界密度を跳ね返すほどの力を持つから、そう簡単に手の内を明かしてくれない」

 

「あれが量産できて、さらに小型化などが出来れば、復興や復旧も一気に進むんだが、それは難しいか」

 

「僕たちでも何とか出来ないかと調べていますが、さっぱりです」

 

封印柱があれば大地を取り戻すことが出来る。あれを大量に作れれば、第三村の拡大も可能である。だが、物事は簡単にはいかないのが世の常だ。

 

「封印柱とまで来ると、俺は手を出せない。申し訳が、そっちは頼む」

 

「はい、任せてください」

 

この後も一通りの報告を受けた。報告を受ければ、あとは楽しいおしゃべりとなる。

 

シンジは、加持リョウジと楽しく会話して、数時間話しただけであったが、心を通わせて友となった。ケンスケの仕事も済ませると二人はプラントこと実験地を後にした。

 

帰り道、ケンスケはシンジの疑念に答えた。

 

「碇が勘付いている通りで、彼はミサトさんと加持さん夫婦の子だよ。加持さんはサードインパクトで亡くなったけど、ミサトさんは生き残った。でも、ミサトさんは彼を育てることはしなかった。母としての姿を捨てたんだ。NERVを止めるためには、母を捨てるしかなかったからな」

 

「苦しいだろうね、ミサトさん。加持さんを失って、さらに子を捨てて、戦いに身を投じないといけない。本当なら母として、子と平和に暮らしたいのに、それが出来ないなんて」

 

「あぁ。ミサトさんも苦しんでいるんだ、それは理解してくれよ」

 

「分かっているよ。ミサトさんを含めて、みんなの苦しみを理解しないとね」

 

「碇は変わらないな」

 

続く




次回予告 

世界を知っていくシンジ。そのシンジに、とある届け物が届いた。

それは、一本の音声カセットだった。

シンジは気になって、それを再生してみると。散った者からの願いが込められていた。

散った者から願いを託されたシンジは、より一層、覚悟を決める。

次回 新世紀エヴァンゲリオン 「スイカを…頼んだぞ。シンジ君」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。