【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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一話遅れですが、50話を超えました。完結までお付き合いいただけると幸いです。

※Qでカットした場面からつながるストーリーですので、違和感を感じるかもしれません。脳内補完していただけると、スッと読めると思います。


碇さん!

事前の連絡通りに第三村にはAAAヴンダーが来た。第三村の中でも割と広い土地について、物資の運搬を行っている。第三村の方には持参した機械類を、ヴンダーの方には第三村の方から食料類を搬入している。

 

そんな中で、逆に第三村の方からヴンダーに乗り込もうとする者たちがいた。

 

通信が可能な距離にまでヴンダーが近づいてきた段階で、アスカを通してヴィレの方には伝達していて、乗艦許可を出されていた。無論、この決定にはヴンダー内で一悶着どころか三悶着ほど起こったらしいが、長である葛城ミサトの鶴の一声で決まった。決まりはしたものの、不服がきれいさっぱりに、消えることはない。

 

万が一を考えると、回収には万全を期さなければならない。トリガーと成りえる人物が3名いて、このうち1人でも死傷するなどしたら…最悪だ。彼らはこの世界に多大な影響を及ぼすことができる存在だ。世界の均衡を保っていられているのは、彼らが生きているからだとも言える。釣り合っている天秤があったとしよう。その天秤の片方の重りが消えたらどうなるだろうか?当然、ガタっと均衡は崩れる。その現象がこの世界でも起こりかねないということだ。

 

そこで、念のためということで、職員を迎えに行かせた。

 

「来たみたい…はぁ。ミサトにはもうちょっとマシな人選をしてほしかったわ(小声)」

 

4人はヴンダー前で待っていると、出迎えが来た。てっきり、全身重武装の陸戦戦闘員が来るかと思ったが、全くの逆で、普通の服装をした人が来た。ただ、肝心なのは

その人物だ。

 

「何か、これは…危険だ」

 

使徒であるため、人間より色々と感受性の高いカヲルは不穏な感じを受けた。言葉にできない、なんとも言い難い感じだ。アヤナミの方は特に変化はないが、警戒心は上げていた。シンジは黄金仮面で顔色を変えなかったが、内心は苦笑いをしていた。

 

「碇さん!」

 

来て早々の第一声がそれか、と誰もが言いたくなった。

 

「エヴァに乗らんでくださいって言ったのに!碇さんは!」

 

「鈴原少尉、職務を忘れないで欲しいけど」

 

「わかっています。それでも!あれだけ釘を刺したのに!」

 

「だからと言って、仕事はね!」

 

アスカと来た職員の間でバチバチしている。これは良くない。

 

「アスカ、怒らないで。エヴァに乗る決断をしたのは僕だ。悪いのは僕だから、怒るのなら、僕を怒ればいい」

 

シンジはこのままの状況が続くのを危惧して、強引に割り込んだ。確かにエヴァに乗るなと言われたのにもかかわらず、シンジは自ら進んでエヴァに乗った。それは事実であるから、彼女が怒る道理はよくわかる。

 

また、今更になるが、来た人物は鈴原サクラだった。これは言わずともわかるだろう。

 

「シンジがそう言うなら、あたしは引き下がるしかないわね。じゃあ、鈴原少尉。後は頼むわよ」

 

「はい!お任せください」

 

サクラはシンジに怒っていたが、その碇シンジ氏に助け舟を出されたので、これ以上は控えて、元の職務を全うする。言われた通りに、三人を誘導する。本来なら規則で、スタンガン等で完全に気絶させてから運ぶことになっている。しかし、彼らにそれは不必要と判断された。フォースの時に見せた行動を鑑みるに、彼らは危険ではない。自らの命を捨てようとしてまで、フォースを止めようとした。と言うか、ヴィレではなく、彼らがフォースを止めたと言っても過言ではない。そんな彼らが変なことをするだろうか?しないだろう。

 

ヴンダー内を武装した職員に監視されながら進む。途中で、違う仕事のために移動中だった職員とすれ違う。やはり、その度に、職員達からは良からぬ視線を感じた。そうみられても、無理はない。それは、その彼らが一番わかっているので、全てを甘受した。

 

「皆さんを同じ部屋に入れるわけにはいきません。ここで、別れてもらいます」

 

途中の道で、三人は離れ離れになることになった。確かに、3人を一緒にすると危ない。一網打尽にされてしまう。分散させた方が得策だ。それぞれに別の職員がついて誘導する。カヲルとアヤナミには武装職員がつき、シンジには鈴原サクラがついた。

 

皆が完全に分かれたことを確認すると、サクラはシンジの誘導を始めた。良い意味でも、悪い意味でも二人きりになった。

 

「あの…鈴原さん?」

 

「サクラがいいです。碇さん。先程は取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」

 

「いえ、元はと言えば、僕が悪いんです。あなたが謝ることはありません」

 

シンジは極めて大人だった。自身の行いを忘れることなく、しっかりと反省していた。その心は見習うべきだ。

 

「いえ!碇さんは悪くないんです!」

 

急にサクラは立ち止まり、シンジの方に振り向いた。そして、これまた急に大きな声を出した。さすがのシンジでも、体を震わせて驚いた。それでも、しっかりと両足を踏ん張って体勢を崩さないようにしたのは見事の一言に尽きる。素晴らしきやシンジの体幹。

 

「碇さんは…悪くないです。碇さんは!利用されてきたんです。確かに、ニアサードインパクトやサードインパクト、フォースインパクトと三度のインパクトに関わってきました。でも、でもなんです!それは、利用されただけなんです!碇さんは自分からインパクトを起こそうとはしていません!」

 

他に誰かいれば、よく一息で言い切ったなと言いたくなっただろう。シンジは一切、微動だにせず、彼女の言うことを聞いていた。

 

「まだ14歳の少年に、この世界の未来を託して、エヴァに乗せて、バケモノの使徒と戦わせる。戦わせたかと思えば、後には碌な支援もしない。幸い、ある人が碇さんを支えてくれましたからよかったです。でも、そんな中で、碇さんは私達のために逃げないで使徒と戦ってくれたんです!自分の望みを叶えようとしただけで、それがニアサードインパクトになってしまった。誰が!誰が碇さんを非難できるんですか!」

 

何と言う熱量。もし受けるのがシンジでなく、常人なら腰を抜かしている。腰を抜かさなくても、直立不動で意識を失っていてもおかしくない。

 

「で、でも。あの時、鈴原さんはエヴァに乗るなと」

 

「あ。すいません…私の言葉足らずで、碇さんに誤解させてしまいました。あれは、碇さんには苦しんで欲しくないから、あぁ言ったんです。エヴァに乗るたびに、碇さんは苦しんでいましたから」

 

「あぁ…なるほど」

 

シンジは過去を振り返れば、確かに彼女の言う通りだと思った。自分はエヴァに乗って、使徒と戦う度に辛い思いをしていた。辛い思いと一言で片付けてしまえるが、それは14歳だったシンジにとっては、とてもではないが耐え難かった。彼の恩師がいなければ、彼は潰れていた。

 

「だ・か・ら!私達、いえ、私は碇さんが苦しまないようにするんです。今度の戦いにも、碇さんを出すわけにはいかんです!」

 

(アスカと同じことを言っているなぁ。僕としては、出ざるを得ない気がする。でも、ここで、それを言うと火に油を注ぐことになるからやめておこう)

 

シンジは僅か数秒で頭をフル回転させて、最善手を導き出した。冬月コウゾウが教えていただけはある。冬月は学問だけでなく、世渡りの手段も教えていた。それが生きた瞬間だった。

 

「そうですね。アスカや、もう一人のエヴァパイロット?がいるんですよね。ミサトさんもいますし、皆さんにお任せします。古くから餅は餅屋と言いますし」

 

「わかってくれるなら、何よりです。碇さんは大人しくしてくださいね」

 

ここで穏便に終わるかと思われた。しかし。

 

「絶対に無いとは思いますが、仮にです。碇さんが不穏な動きを見せたら」

 

サクラは自分の腰部に手を当て、とある黒光りする道具を取り出した。

 

「碇さんは痛い目にあうことになります。もちろん、命を奪うことはしませんから、ご安心ください」

 

「えぇ。もちろん、わかっています。鈴原さんに、そんなことはさせませんから」

 

サラッとシンジは流したが、サクラは手に拳銃を持っていた。モデルガンではなく、本物の拳銃だ。使っているはずなのに、指紋一つ付いていない。綺麗に整備・管理されているようだ。

彼女の指を見ると、小さいがタコができている。これより、彼女は相当の訓練を積んでいることが窺える。何度も射撃訓練を積まなければ、タコはできない。シンジはそこまで見抜いた。

 

「はい。そうしてくださいね。では、行きましょう」

 

二人は移動を再開した。

 

続く




次話よりヤマト作戦入ると言いましたが、諸々のすり合わせのために、次回はヤマト作戦の導入といたします。

次回予告

第三村での最後の寄港を行ったヴィレのAAAヴンダー

第三村を後にして、一旦、衛星軌道上に離脱する

衛星軌道上で最後の最後の準備を行う。全ては、始まりの地での戦いで勝つために

また、それはパイロットたちも同じ。最後に備えて

次回 新世紀エヴァンゲリオン 「ヤマト作戦始動」

「来るか…この老人がお相手させてもらうよ」

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