【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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そうだ、南極行こう。



ヤマト作戦始動

第三村を離脱して、最後の決戦に向かう前に色々とやることがあるので、ヴンダーは衛星軌道上にいた。始まりの地である南極に行く前に、人類の存続のためにやらねばならぬことがある。

 

その事が進んでいる頃、パイロット2人は髪の毛を切っていた。

 

「身体の成長無いくせに、髪の毛だけは伸びるなんて」

 

「いいじゃん別に。髪の毛が伸びるということは、私たちが、まだ、ギリギリ人間だってことを示しているんだよ。完全に人間を捨てたわけじゃないないからね。まぁ…ワンコ君は分からないけど」

 

「そうね…シンジは人を捨てたからね」

 

アスカとマリの2人は協力して髪の毛を切っていた。彼女たちは、通称「エヴァの呪縛」によって、目に見える変化がない。数年なら変わらなくても、別におかしくはないが、14年も経って変化なしは、どう考えてもおかしい。ただ、幸運にも髪の毛は伸びるということで、髪だけは目に見えて変化した。髪の毛が伸びるなら、まだ人間らしさを持っていると思われる。

 

それは2人の話だった。少年の方は、ちょっと、いや、かなり疑問点が残る。見た目の変化は2人と同じく無い。そこでは同じであるのだが、彼は完全に人間を捨てた過去がある。そして、ましてや、神に限りなく近い存在となっていた。その過去を考えると、そう簡単に判断はできない。

 

「罪深い少年だね~彼は。姫だけじゃなくて、可愛げのあるオリジナル、第一の使徒。みんな彼を中心に考えて動いている。決して、強制されるわけではない。皆が純粋に、他意無く、彼を想っている。それも招いたのは、彼だからねぇ」

 

「シンジは自然に人を惹きつける。全く意識することなく、無意識でね。だから、タチが悪いのよ。だって、こっちは全然悪い思いがしないから」

 

「それにしてもにゃよ。本当に運命は残酷だにゃ。あんな子が、世界を破滅に導く道具にされた」

 

「まったくよ。もう、アイツが苦しまないように、アタシが全部ケリをつける」

 

「援護は任せてね、姫」

 

「えぇ。頼むわ」

 

髪の毛を切り終え、毛一本残さないように掃除をする。今度の出撃で、ヴンダーに帰ることはないかもしれない。もしもを考えれば、自分たちの部屋を綺麗にしておくのが礼儀と言うもの。「立つ鳥跡を濁さず」と言うだろう?

 

掃除を終えたら、今度の作戦の確認を行う。もう、嫌と言うほど読み込んでいて、全部が頭に入っている。それでも、確認を繰り返す。何故なら、今度の作戦で全てが決まる。

 

ここで失敗すれば、お終い。

 

やり直しはきかない。

 

その2人は、特にNERVの戦力分析を行っていた。目標物であるエヴァ第壱拾参号機を強制停止させるのが作戦目標である。その第壱拾参号機はNERVが厳重に守っている。ただの、物理的な防壁だけで守っているわけがない。

 

「エヴァMK-4がNERVの主力だけど、黒き月を守るには向いていない。多分だけど、完全な量産型エヴァが出てくるはず。それに、まだ未確認のエヴァが、あと三機いるはず。NERVだから、基本的に無人のダミーシステム、または量産されたアダムスの器を使ってくる」

 

「質で言えば、アタシたちの圧勝。でも、数では絶対不利。シンジが言っていたけど、まさにその通りよ」

 

「あんな数を一人で揃えるのは、本当に恐ろしいよ。先生は」

 

NERVの戦力はこれまで、エヴァMK-4が基本だった。エヴァMK-4はそれぞれの戦闘に特化させてきた。宇宙空間での戦闘特化、地球上の空中機動戦特化、電力供給特化、陽電子砲運用特化、海中からの奇襲特化と多岐にわたる。しかし、それは限定的に特化しているので、汎用性は決して高くない。そうなると、黒き月を守るには向いていないと言わざるを得ない。そんなことをNERVがわからないわけがない。だから、おそらくNERVはエヴァMK-4に代わる、新型量産機を投入していると考えている。エヴァMK-4を大量投入してきた、力のあるNERVだから、新型機も数えきれないぐらい出してくる。

 

そして、それを全部揃えてきたのは、たった一人の老人だった。一人で対ヴィレの戦闘の指揮を執ってきた。たった"一人"でである。その人物が単に敵だったら、本当に震え上がるしかない。だが、幸運なことに、その老人は見た目だけは敵で、真なる姿は自分たちと共通の目的を持っている。

 

全ては、少年の幸せのために。

 

「ま、それは行ってみてのお楽しみに。いくらここで考えても、答えは出ない。まず、先生のことを読もうとする時点で私たちが間違っているんだよ。大丈夫。先生は全部、演出してくれるよ」

 

「そうするしかないか。過剰に考えるのはやめないと。私たちは、私たちの最善を尽くす」

 

アスカは作戦概要が纏められていた作戦書をしまって、スッと立った。そして、マリにこう言った。

 

「作戦開始の時間はNERV次第。数分後にも出撃になるかもしれないから、先に挨拶を済ませておきましょ」

 

「姫、意外と気が利くじゃん」

 

2人は部屋を出て、どこかへと向かっていった。

 

~シンジの部屋~

 

プライバシーのプの「p」すらない部屋で、シンジはベッドに横になってS-DATで音楽を聞いていた。S-DATは彼と外の世界を断絶するための道具だったが、今は違う。純粋に音楽を楽しむ道具になっていた。

 

すると

 

「やっほい!」

 

「うわっ!」

 

「ちょっと、強引すぎるわね」

 

横たわっていたシンジの視点は目まぐるしく変わった。そして、気がつけば、目の前にはアスカがいる。アスカがやったのかと一瞬だけ思ったが、すぐに違うと気づいた。そんな高速移動できない。それに、自分の背中に柔らかな感触を覚えた。

 

「アスカ…あと、もう一人いるね」

 

「正解!覚えているよねぇ?あの時、助けたこと」

 

「う…はい。あの時は…ありがとうございました」

 

「シンジは硬過ぎよ」

 

その声は非常に聞き覚えがあった。フォースの時に、自らの命を捨ててまで止めようとした時。自分がいるプラグを力技で強制的に排出させた人物である。命の恩人なので、シンジは硬い挨拶をした。

 

「覚えていたか!よしよし、いい子だ。あ、自己紹介してなかったっけ。私は胸の大きないい女よ」

 

「あんたねぇ。挨拶するなら、ちゃんとしなさいよ。ただでさえ、時間が無いのよ」

 

「はいはい。胸の大きないい女こと、真希波・マリ・イラストリアスです!よろしくね」

 

「あの、その。この状態だと、顔を見れないんですけど」

 

シンジは目の前にアスカはいても、肝心の人物が見えなかった。どうやら、自分の背中に引っ付いているらしい。いくら何でも、顔を見せないで挨拶を終わらせるのはダメだ。

 

「ホイッ!」

 

「ちょっ!」

 

クルっとシンジは180度回転した。これなら顔と顔を合わせることができる。しかし、シンジの視界は真っ暗で何も見えない。それどころか、背中で味わった感触を顔で再び感じていた。

 

「あ~ん~た~ねぇ!」

 

業を煮やしたアスカが、二人が顔を合わせることができるようにした。具体的には、マリをシンジから引っぺがした。

 

「はぁ、はぁ。息が…」

 

「ありゃ、これは失敬。やっほ、シンジ君」

 

「ええっと。マリさん?でいいですよね」

 

「むぅ、ダメ。マリと呼びなさい」

 

「マ、マリ」

 

ちょっと、まだ硬さが残っているが、及第点だろう。急展開過ぎる中で、ここまで適応できたら上出来である。

 

「これから末永い縁をよろしっくぅ!」

 

「よ、よろしく」

 

「挨拶はそんなもんでいい?」

 

「うん!いいよ。」

 

マリとシンジの顔合わせは完了した。しかし、まだ、アスカの方で、彼女が彼に伝えられていないことがあるので、それを伝える。

 

「シンジ、わかっているとは思うけど、敢えて言うわ。私たちは、これから最後の戦いに身を投じる。作戦を成功させて、無事に帰ってくるつもりだけど。世の中には、万が一があるのよ」

 

「うん…わかっているよ」

 

「だから、今伝えるわね」

 

「…」

 

「…(おおっ!これはいい感じぃ!若いっていいねぇ!)」

 

「シンジ…愛してる。それじゃ」

 

アスカは伝えるだけ伝えて、退散しようとした。伝えられるだけ、という受け身で終わるほど、シンジは弱くない。送られたら、返す。

 

「僕も…愛しているよアスカ」

 

アスカは立ち止まって、少しだけ顔を横へ向けた。しかし、完全にシンジの方に向けることなく、かと言って、何か言葉を放つこともしなかった。傍から見れば、何も起こっていないが、2人の間には何かが起こっていた。それは言葉にできない。強いて言うのなら、「以心伝心」であろう。

 

「やるじゃ~ん、シンジ君。あ、私も念のため言っておくけど。シンジ君。私を忘れないでねっ!バイち!」

 

マリもアスカについていく形で退散していった。その足取りは軽くて、ちょっとびっくりした。

 

さて、残されたシンジは再びベッドに横になって、S-DATで音楽を聞くのを再開した。

 

音楽を聞きながら、ハッキリとした声で。

 

「先生…僕は僕で(色々と)頑張ります。だから、最後までお願いします」

 

 

~??????????~

 

とある老人は、一人で、広大な空間にいた。広いには広いが、それは外ではない。屋内である。

 

「本当は無人で運用する箱舟だから、常人では耐えれない程の異常に高いL結界密度か。まぁ、私はもう慣れたがね」

 

老人は手すりに掴まって、息を大きく吸った。そして、大きく吐いた。深呼吸をして呼吸を整える。年齢が年齢だけに、呼吸は正常にしないと怖い。今更、健康を気にしても、あれだが、

 

そして、一人呟いた。

 

「終劇の時は近いぞ、ユイ君。これで…いいんだな」

 

続く




次回予告

移動を開始する黒き月

それを察知して、衛星軌道上から一気に南極への奇襲を行うヴィレのヴンダー

全てを終わらせるために、ヴィレの総攻撃が始まる

受けるはNERV

繰り出したるは、絶望の箱舟

次回 新世紀エヴァンゲリオン 「悪いね…私の劇に付き合ってもらうよ」

「冬月コウゾウ副司令…」
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