【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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今更で申し訳ないですが、書いていると偶に自分の地元の方言が入っちゃいます。最終チェックで確認して、標準語に訂正していますが、もしかしたら方言が残っているかもしれないです。何か変な日本語があれば、方言の可能性があります。お手数をおかけしますが、ご連絡ください。

※文字数を抑えるために、原作を色々とカットしています


冬月の妙策

Erlösungから猛烈な砲撃を受けつつ、ヴンダーはカルヴァリーベースまで向かっていた。腐ってもNHGであったヴンダーはその砲撃を耐えていた。しかし、それでも、苦しいことに変わりはない。

 

一切の回避行動をとらない覚悟の甲斐あってか、Erlösungと離れつつあった。そう簡単に冬月がヴンダーを逃がすはずがない。これまで、幾度となくヴィレに対して攻撃を仕掛けてきては、あと一歩まで追い詰めて来た策士なのだから。

 

「敵艦来ます!」

 

「正面と後方とで挟まれました!集中砲火を受けます!」

 

「予定に変更はない。このまま突っ込む!」

 

正面に出現したNERVのNHG三番艦Erbsündeと後方から猛烈な砲撃をしてくるErlösungに挟まれた。見事なまでの挟み撃ちである。挟み撃ちにより砲撃のわんこそば状態となる。Erbsündeは火力は少しErlösungに劣るものの、ヴンダーよりかは上回る。

 

標的となったヴンダーは応戦しつつ、構わず突貫をするだけだった。

 

「その意志の強さは、彼女も成長したということか」

 

「私は、ヴィレの長ですから」

 

正面のNHGにミサトは気にする姿すら見せなかった。まさに、「眼中にない」と。この作戦では、射出した二機のエヴァが肝になるのだが、それ以前の問題がある。それは、敵の守りを剥がさないといけないこと。その役割はヴンダーの翼につけている無人艦誘導弾である。それ等を以てして、第壱拾参号機を守る壁を破り、エヴァ弐号機が持っている強制停止装置で、第壱拾参号機を無力化する。

 

「さて、どうする?葛城君」

 

挟み撃ちにより前後から猛烈な砲撃が襲って来る。既に全ての回避行動は捨てているので、砲撃は直撃上等の覚悟。しかし、覚悟だけで上手く行くほど、世の中は甘くない。ヴンダーの指揮所は焦りで支配される。艦長と副長は黙り込んで正面を睨んでいるが、その部下たちはごく一部を除いて焦るしかない。

 

これまで幾度となく相対して来たNERVだが、今回ばかりは度が違う。おもちゃのようなエヴァMK-4じゃない。なんせ、こちらと同型のNHG二隻が相手なのだから。

 

しかも、それを操っているのは、NERVのブレイン。冬月コウゾウNERV副司令。かつての使徒戦で、その能力を遺憾なく発揮していた。また、各国の圧力や国連の圧力を全て跳ね返して、強烈なカウンターを決めていた。全ての面において圧倒的な力を見せつけて来ている御仁、その本人が自ら出て来たのだから。

 

「葛城艦長!」

 

「機関出力は下げず、全速を維持。言ったはずだ、回避行動はとらないと」

 

「それでも、このまま行けばぁ!真正面から衝突なんですけどぉ!」

 

「騒ぐな!」

 

「今更、艦長が突拍子もない事を言っても、どうしようもねぇ。俺たちは従うしかない」

 

「了解。全速維持、進路変えません」

 

「ちょっとぉ!アタシ死にたくないんですけどぉ!」

 

ヴンダーはその進路と速度を維持していた。真正面には砲撃を行っているErbsündeがいる。このまま行けば、ドーン!と大事故である。巨大戦艦と巨大戦艦同士がぶつかれば、それはそれはだ。

そうなのだが、衝突したとしても、NERVはそこまで痛くない。ヴィレのヴンダーの邪魔が消えるなら、それに越したことが無いからだ。しかし、逆に言えば、ヴィレにとっては冗談じゃない。ヴンダーを失えば、ヴィレはNERVと戦えない。

 

だが、ミサトは突貫を堅持した。このまま、突っ込めと。

 

「フッ…それが正解だ。葛城君」

 

「冬月副司令…」

 

巨大戦艦同士が正面からぶつかり合うかと思われた。仮に、この光景を遠い所から見ていれば、絶対にぶつかると思う。しかし、現実はそういかなかった。僅か数mという間で二隻の巨大戦艦こと、Erbsündeとヴンダーはすれ違った。数mと言うと、結構間があるかのように思われるが、NHG同士がすれ違うのだから、それはもう、純粋な恐怖でしかない。

 

「抜けたのぉ!?」

 

「どっしり構えていれば、どうってことは無いんだよ。それにしても、ちと肝が冷えたが」

 

すれ違った直後にNERVのNHGは反転しようとしたが、如何せん大きさと重さ、スピードが邪魔をして機敏に動けない。対して、ヴンダーはそのまま直進すればいいだけなのだ。元より後ろについているErlösungとの、無限鬼ごっこは続いているが、まだ距離に余裕はある。

 

その余裕があるなら、予定通りに動ける。

 

「誘導弾発射用意!」

 

無人艦を転用した誘導弾がヴンダーの両翼につけられていて、これをぶっ放す。さすがに無人艦丸ごとの誘導弾を貰えば、堅牢な守りを崩せる。そうして、第壱拾参号機を丸裸にして、エヴァ二機の道を切り開く。それがヴンダーに任せられた役目だった。

 

「発射!」

 

発射地点まで進むと、誘導弾が発射される。誘導弾の名前の通りで、無人艦自体が推進力を持って飛んで行く。既に目標は見えていて、目標設定はされている。誘導弾は撃ちっ放しでいい。

 

これでやっとNERVのNHGとの戦闘に集中することができる。

 

飛んでいった誘導弾はヴンダー達を上回る速度で目標物に驀進し、そのまま綺麗に全弾が一切逸れることが無く直撃した。運動エネルギーに炸薬、無人艦本体が混ざり合って、爆発的な威力を生み出す。NERV自慢の守りも、さっぱり破壊された。その先にあるのは、ロンギヌスの槍とカシウスの槍、二本の槍が突き刺さっていて、機能を完全に停止しているエヴァ第壱拾参号機だ。NERVはこの第壱拾参号機を再起動しようとしている。ヴィレは、それを止める。

 

「後方の二隻の敵艦、肉薄してきます!」

 

「最低限の目標は達成した。だが、敵のNHGを一隻でも沈める。最低でも一隻沈めれば、アディショナルインパクトは起こすことができない!」

 

第壱拾参号機の方は、予定通りでアスカの弐号機とマリの八号機に任せる。では、ヴンダーは何もしないと言うわけにはいかないだろうて。世の中には万が一の事があるし、他に潰せるところがあるのなら潰す以外の選択肢は無い。その潰せるところがNERVのNHGである。NHGは単純な戦闘用の戦艦として建造されたのではない。NHGは儀式のための道具としても建造された。つまり、NHGもアディショナルインパクトの道具の一つ。

 

となれば、NHGは第壱拾参号機と同じで、欠ければ、アディショナルインパクトを発生させることは出来ない。

 

「差し違えてでもやるわよ」

 

「若い嬢さん方に任せるわけにはいかねぇからな。俺たちがやれることをやらんと。ですね、艦長」

 

「葛城艦長…」

 

「やりましょうか」

 

指揮所は戦意が高まっていた。大人である自分達が何もしないで、若い二人に任せる?冗談じゃない。そんな腐った精神でいられるような人間ではない。向こうのリリンの王とは違うのだ。その気概を感じ取ったのかは分からないが、後方にいた二隻のNHGは動き始めた。

 

二隻のNHGはヴンダーの追跡を行うことを中断して、降下していく。降下していく先にあるのは、第壱拾参号機の眠りつく場所である。これまで、あれほど執拗にヴンダーを狙って来ていた。つい先ほどまでの動きを無に帰してしまうような行動の変容である。一体、何がしたいのだ?第壱拾参号機は裸にされてしまったのだから、せめてヴンダーという芽でも摘んでおくようにするのが普通だ。

 

「悪いが、私は私のシナリオの遂行がある。そのために、君たちと差し違える気は無い。それに、差し違えれば、彼らを殺してしまう。そんなことはしない」

 

ErlösungとErbsündeは戦線を離脱していく。その動きはヴンダーでも捉えていて、流石の葛城ミサトでもこの動きの答えを読めないでいた。

 

「敵艦降下していきます」

 

「このまま、みすみす逃すわけにはいかない。Erbsündeを狙って主砲斉射!」

 

恐らく、あの動きは被害を最小限に抑えておく為だと読んだ。NHGは儀式のために建造された戦艦であるので、儀式に支障をきたしては堪らない。ここで無理にヴンダーを撃ちあって、無用な損害を出すのを避けたい。

 

しかし、それは盛大な罠であることを、葛城ミサトは読めなかった。いくら彼女でもだ。旧NERVの時から恐ろしい戦略を練って来た老人の策を看破することは不可能だった。ヴィレは冬月からの攻撃を幾度となく防いでいたが、その場しのぎであることが少なくなかった。

 

「かかったな…葛城君。君はまだ甘い」

 

三番艦を狙って主砲を放とうとした瞬間だった。下から突き上げられるような衝撃がヴンダーを襲った。これまで経験したことのない恐ろしい揺れだ。エヴァMK-4の攻撃や、先からの二隻のNHGからの砲撃と、一味も二味も三味も違う。これは桁違い以上の何物でもない。

 

「主砲部に直撃!主砲、全砲門発射不能!」

 

「下方から敵戦艦が出現しました!」

 

「まさか…四番艦Gebet(ゲベート)!?未完成だというのに、ここで出して来るとは!」

 

「使える物はすべて使う。それが、私の信条だよ、葛城君」

 

「…」

 

砲撃を行うために、意識をErbsündeだけに集中させていたヴンダー。それに体当たりしてきた。四隻目のNHGが攻撃してきた。NERVのNHGは合計で4隻であるが、そのうち最後の四番艦は建造途中であって、完成していない。主砲も取り付けられていないので、とでもだが、戦闘には耐えられないと考えるのが順当だろう。しかし、攻撃する手段は、何も主砲だけではない。その体が武器になる。

 

もちろん、これは本当にイチかバチかの手段、博打である。

 

イチかバチかの非合理的な攻撃手段だから、冬月がそんな手を使って来るとは読めなかった。彼は入念に準備をして来る。そんな彼が、こんな博打に等しい手を、冗談のような奇策を取ってくるなんて予想できない。

 

その心理的な虚を突いたのは、冬月コウゾウの老獪な罠だった。

 

「王手だよ。そして、君たちの詰みだ」

 

「くっ…」

 

主砲を封じられて、さらに体当たりで行動を制限されたヴンダーに勝ち目はない。ズルズルと四番艦に引きずられて行く。その行く先はカルヴァリーベース。

 

「さて、彼女たちは…」

 

続く




次回予告

冬月コウゾウの奇策が炸裂して、ヴンダーは行動不能に追い込まれる。

カルヴァリーベースで進まんとする儀式

その儀式を止めるために、エヴァ第壱拾参号機を狙う二機のエヴァ

数万以上の数のエヴァMK-7の壁

アスカとマリは全ての力を使って、がむしゃらに突き進む

次回 新世紀エヴァンゲリオン 「邪魔だぁぁぁぁぁ!!」

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