【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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タイトルは超適当です。あと、本話より使徒戦も大幅に変わります。


鳴らない電話/出る者は老人

「こんな短いスパンで来るとはな…わずか数週間か」

 

「あぁ」

 

NERV本部は切羽詰まった空気で充填されていた。理由は言わずもがな使徒の出現である。相も変わらずで突如として出現するのはまさに神出鬼没。下手な自然災害よりも読めない。

 

「使徒依然として侵攻中!」

 

「第45砲台攻撃開始、第98砲台攻撃終了」

 

冬月が推し進めていた要塞強化計画は完全には終了していなかったが、割と早く完成していた防御陣地の砲台が火を噴いている。冬月の要塞施設の強化の尽力のおかげで防御砲火は苛烈だ。これによって使徒の侵攻は遅延を余儀なくされている。使徒はいくらATフィールドで防げるとは言え、気を抜くことはできない。だから使徒でも慎重に進む。

 

それだけ遅延させることが出来れば、市民の避難誘導を完璧にすることができる。前回の反省があったため、冬月は各部署に命令してエヴァが100%の力で戦える舞台を用意した。避難はとっくに完了している。だが、冬月は手を緩めなかった。なぜなら、前世の記憶があったからだ。そう、前世ではシンジの友人たちが避難所から脱走して、地上に出ていた。しかも、その友人たちがいるところで初号機と使徒が戦闘していたため、使徒との戦闘に極めて支障が出た。これによりパイロット及び作戦の行動も大きく狂わされて、結果的にパイロットに大きな精神的なダメージを与えてしまった。

その記憶から冬月は先手を打った。避難所で警備に当たる者にはNERVの職員を増員して、ダクト類など地上へ出れるようなところは封鎖した。地上に出れるところも強固な電子ロックと堅牢な物理的なロックをして常人では絶対に突破できないようにしてある。いくらその友人たちが知識があったり、行動力があっても無理だ。

 

「まだ初号機しか出せんとは、第三の少年には苦労をかける」

 

「構わん。経験を積ませるんだ」

 

初号機とシンジが存分に戦えるようにと舞台を用意した。既に初号機の静粛発進は為されていて、初号機はビル裏で隠れている。実は冬月が要塞を増築したのは、このように使徒に初号機の存在を悟られないようにするためだ。砲台による攻撃で使徒の注意を引きまくる。攻撃自体は無意味でも、攻撃による副次的な効果を期待する。

 

なんとか、この使徒出現までには対使徒用兵器は開発できていて、初号機にはガトリング砲を持たせている。シミュレーションで使い慣れたガトリング砲だ。高貫徹の劣化ウラン弾を使用しているのでダメージを与えることはできると思う。

 

「使徒接近!」

 

「砲台の射撃を中断!」

 

使徒が初号機が隠れているビルに近づいてきた。ここで砲台の射撃をやめる。砲台の射撃で視界が悪くなっており、このままの状態で戦闘は不可能である。射撃が中断されて視界が良くなる。有効射程になるまで待って、機会を逃さない。

作戦指揮は葛城ミサトが行っているので彼女の指示をシンジは待つことになっている。彼女の一言ですべてが始まる。

 

「今よ!」

 

「っ!」

 

ビルに隠れつつ初号機は身を乗り出して、使徒と対面する。そして両手で持っているガトリング砲を乱射する。ガトリング砲の強みは圧倒的な射撃量。一発一発の威力よりは、全体の射撃量で勝負をつける。だが、その射撃量が余りにも過ぎると。

 

「馬鹿!見えない!」

 

「やはりか」

 

ガトリング砲の圧倒的な物量の砲弾の着弾で煙が使徒を包み込む。ダメージが入っているのか、いないのかすら分からない程濃い煙である。思わずミサトは悪態を吐いてしまった。冬月はわかっていたと呟いた。

 

だが、わかっていたからこそ手を打てるのだ。

 

「装甲版を展開しろ」

 

「初号機前に第09装甲ビルを展開!」

 

間髪を入れず地下収納の要塞施設の一つ。エヴァ防御用の装甲ビルを展開させる。戦果確認が済んでいないのに次の一手を打つのはおかしいが、冬月の指示は実を結んだ。

 

「うわっ!」

 

「後退しなさい!」

 

初号機の前に展開されたビルは一刀両断どころか、細切れにされた。光の鞭が遠慮なく切り裂いていたのだ。つまり、使徒は健在だということだ。前世では視界が悪くなり行動するかためらっている隙を突かれてケーブルを切断された。そしてそこからグダグダとなって、しまいには危険な綱渡りだった。今回はそれを許さない。

 

「くっ、ダメだったか」

 

「ミサトさん!どうすれば!」

 

「防御砲火を再開、初号機を守れ。装甲ビルを大量展開。初号機は後退し体勢を立て直せ。後退先に兵装ビルを展開し、初号機はそこから武器を受け取れ」

 

「はい!」

 

ミサトが指示を飛ばすよりも早く、冬月が話した。一応は冬月の方が上であるから葛城ミサトの仕事を奪っても文句は言われない。それに、先の指示が的確だったから、そのほうがいいとまでも思われる。すぐさま初号機は装甲ビルを縫って後退する。防御砲火が再開されて使徒には無意味な攻撃が行われる。使徒は目の前の初号機を攻撃したくても、防御砲火や装甲ビルが邪魔で思うように攻撃できない。その間に初号機は兵装ビルからアサルトライフルを受け取り、使徒の状態を伺う。

 

「行けそうね。よし、シンジ君。使徒に肉薄して攻撃。コアを攻撃して」

 

「はい…わかっています」

 

シンジは恐怖と緊張で狂う自分を抑えて、息を整えて、前をにらむ。そこにいるのは使徒。使徒は人類の敵。倒さなければならない存在だ。だから、倒す。倒して認めてもらう、必要としてらもらう。だから、だから。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

シンジは雄たけびを上げて初号機を使徒へと驀進させる。使徒は相手から出向いてくれたことで迎撃する。光の鞭を振りかぶって初号機を切り裂かんとする。初号機は回避行動をとらずにそのまま突撃する。

 

「突っ込み過ぎよ!」

 

「行け、シンジ君」

 

危険を察して叫ぶ葛城ミサトに対して冬月は冷静だった。舞台は作ったのだから、あとは演者に任せるだけ。我々から言うことは無い。彼に任せるしかないのだ。いや、彼と彼女か。

 

「ぐっ!ああああああああ!!」

 

何度かは光の鞭の攻撃を掻い潜った初号機であったが、ついに貰った。光の鞭が肩部の部分に鞭が刺さって貫いた。さらにもう一本が腹部を貫いた。肩部はともかく腹部はマズイ。フィードバックによる痛みがパイロットにのしかかるからだ。その痛みは想像を絶する。

だが、止まらない。止まることを知らなかったのだ。シンジは。

 

「ああああああ!!」

 

絶叫しつつ、アサルトライフルに付属となっていた銃剣を使徒のコアに刺突した。かなり大掛かりな銃剣突撃だった。この銃剣はプログレッシブナイフと同じ材質のため威力はお墨付き。コアなんてガラスに過ぎない。

 

コアにはヒビが入り、そのままコアは崩壊した。心臓部を破壊されたことで使徒が活動を停止して薄暗くなるのと同時に、使徒は大爆発を起こした。

 

「パターン青完全に消滅」

 

「使徒の撃破は確実です」

 

「初号機パイロットの救出を優先し、医療班は急行。回収班はパイロット救出が完了次第に初号機を回収。初号機は修復に回して」

 

使徒の撃破は為った。途中は冷や冷やすることがあったが、結果が良ければいいだろう。しかし、それでも今回の戦いは危なかった。途中で冬月が指示を挟まなければ初号機は更に苦しい戦いをさせられていた。

 

「やれやれ、私が口を挟まないといけないとはな。葛城君もまだまだということか」

 

「冬月後は頼む」

 

碇ゲンドウは第五の使徒との戦いを見届けると、サッサと退場していった。自分の息子が負傷してまでも使徒を撃破したというのに。本当に冷徹な人間で、弱小な人間だ。

 

「葛城君は上手くやればいいのだが」

 

冬月の心配はこの後の葛城ミサトと碇シンジの関係だった。彼女が上手くやれば、彼は苦しむことはないのだが。

 

続く




ミサトさんもうちょっと上手くやれないかな。

それでは次のお話でお会いしましょう。

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