【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね? 作:5の名のつくもの
完結させますが、それは、私の思う「終わり」です。ここまでご拝読いただけている皆様には、ご納得いただけると思います。しかし、「違う」「こうじゃない」「面白くない」と思われる方も中にはいらっしゃるかと思います。感じ方は人それぞれですので、そう思われて当然です。
数話前にて申し上げましたが、改めまして、申し上げます。
感想等での異議申し立ては、幾らでもしていただいて構いません。ただし、原則として、私は一切反応しません。また、罵詈雑言や誹謗中傷など社会通念上から見て、許容できない感想には、それ相応の対応を取ります。予めご了承ください。
もちろん、受容できないのであれば、遠慮なくブラウザバックしてください。
ガタン…ゴトン…
カン、カン、カン、カン…
「父さん」
「シンジ…か」
マイナス宇宙へ入ったシンジだったが、周囲の環境は一変していた。
古い鉄道車両のシートに腰かけている。時刻は夕方であろうか、ほんのりと橙色の光が差し込んでくる。
そして、彼の目の前には、父が。
碇ゲンドウが座っていた。
「もう…いいんだよ。父さん」
「そう…だな」
シンジはゲンドウの前に立った。
「父さん、これは返すよ」
「それは…お前に渡したものか。私が数少なく、シンジに渡したもの」
シンジはゲンドウにS-DATを渡した。S-DATは元々はゲンドウが使っていたが、シンジへと渡ったのだ。それをシンジもよく愛用していた。父と子で愛用していたとなる。
「そうさ。これは、もう、僕には必要ないから。元はと言えば、これは父さんのものだから、父さんに返さないと」
S-DATをゲンドウはしっかりと受け取った。
「成長したな…シンジ。成長していなかったのは、私の方だったか」
シンジもゲンドウと同じく、外の世界と己を完全に遮断するためにS-DATを使っていた。イヤホンと流れる音楽で物理的に遮断するだけじゃない。心と世界を遮断する。精神的に遮断する。
しかし、それは、もう、昔の話だ。
シンジは一人の大人となっていた。度重なる使徒戦、チルドレンたちの交流、真実を知り、碇シンジは逞しくなっていた。一人でいることはやめ、他者と積極的に関わるようになった。時折、折れそうになった。でも、最後は自分で立ち直った。周りの手助けがあっても、自分が決めた。全てを。
対して、碇ゲンドウは違った。愛する妻、碇ユイを失ってから。成長していないと言うと語弊があるが、「変われなかった」点で言えば、成長していない。愛する者を失った悲しみ、喪失感に打ちひしがれた。誰もがそうだ。愛する者を失って、打ちひしがれない人はいない。だが、誰だって、前を向いて歩き出すのだ。後ろを振り返っても、笑って、前を向いて歩き出す。
しかし、ゲンドウはその悲しみを乗り越えることができなかった。だから、全てを捨てて、ありとあらゆる犠牲を払った。碇ユイを取り戻すために、息子までも捨てようとした。もし、完全に捨てきれることが出来れば、結果は変わっていただろう。
この結果は、ご存知の通りである。
息子にしてやられた。認めるしかないだろう。現実を受け入れることが出来ないで、現実を捻じ曲げようとしたのだ。自分は強い大人として動いていたつもりだったが、真反対だ。弱い、いつまでも過去を引きずる人間だった。対して、息子は自分と同じ道を歩んではいたが、途中からガラリと変わった。周囲の助けもあるだろうが、息子は息子なりに強くなった。
「私は…お前を捨てきれなかった。あの時…シンジを受け入れていれば、ユイは戻ってきてくれたかもしれないな。私は、道を正すことが出来たのに、正すことをしなかった。その道があることを知っていながら、それを蹴った。シンジ…すまなかった」
「だってさ、母さん」
シンジが言った。自分を包み込んでくれる、大きな愛が流れて来た。ゲンドウがそれに気づかないわけがない。昔のように、若かりし頃、夫婦二人で暮らしていた時と同じ。
「ユイ…そこに…いたのか」
「あなた。もういいのよ」
ゲンドウの前には、シンジではなく、碇ユイ。彼女本人が立っていた。ゲンドウは流すはずの無い涙を流していた。人としての姿を捨てた彼が、涙を流すはずがない。
だが、流していた。
そう、彼は人に戻っていた。ゲンドウは、自らの弱さを認めた。それによって、彼は人の姿を取り戻した。人は弱さを認めることが出来る生き物である。自分の弱さを認めることが出来れば、それは、もう、完全な人である。
「私たちの代わりに、全部シンジがやってくれたんです。これで、いいですよね?あなた」
「あぁ…ユイ。シンジは私が知らない間に、強くなっていた。私は…シンジを認めるしかない。ユイ、シンジは成長していたな」
「えぇ、シンジは強い子になりました」
ユイとゲンドウの再会をシンジは大人しく、何も言うことなく、ただ見ていた。ここに息子である自分が入る権利はあるが、その権利は行使しない。夫婦の再会を邪魔するほど、彼は非常識ではない。人格者で且つ教育者である恩師に教わって来たんだ。その恩師の教えは死んでいない。
「あなた、後はシンジに任せましょう。でも、一つだけ、私たちがしないといけないことがありますからね。それは、シンジにはやらせません」
「そうだな。この後の世はシンジに全て任せる。だが、シンジ。最後は私とユイに任せてくれ。私が言えることではないが、シンジ。私に…父親らしいことをさせてくれ」
「うん。お願い。父さん、母さん」
ゲンドウとユイは列車を降りた。いつの間にか列車は駅に到着していたようで、開いたドアから降りて行った。まだ終着駅ではない。途中駅である。だから、ドアが締め切られて、再び列車は動き出す。古い車両なのか、けたたましいモーター音が鳴り響く。
「僕は、みんなの所に行かないと」
シンジは歩いて隣の車両に移る。車両と車両を区切る中扉を開く。
そこには、仲間が待っていた。綾波・レイ、式波・アスカ・ラングレー、渚・カヲル、真希波・マリ・イラストリアスの4人だ。みな、エヴァのパイロット。そして、全てに関わって来た仲間達である。
「どうだった?家族の再会は」
「よかったよ。父さんは、やっと母さんに会えたんだ。それだけでね」
「そう、よかったわ」
この4人は同時にマイナス宇宙に来たが、碇家の再会を邪魔しないために気を遣って、敢えて彼から離れて、待っていた。
「ゲンドウ君とユイさんが会えた。その2人に君はついて行かなくてよかったの?両親と過ごせるのに」
マリが聞いた。そんなことを聞かなくても、彼の答えは知っているというのに。
「父さんと母さんの世界。そこに僕が入り込む余地は無い。それにさ、僕は…まだ生きたいから。この、みんなとね」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。そう言う以上は、最期まで付き合ってもらうわよ」
「私もいる」
「わ、わかってるよ。わざわざ、言わなくても…」
「いや、ダメよ。男ってのは、簡単に言ったことを忘れる生き物よ。ちなみに、これは冬月先生から教わったから。先生が言うなら、確実ね」
「先生が言ったことは確実」
「うっ…冬月先生」
まさか、ここにきてアスカとレイから砲撃を受けるとは思わなかった。しかも、その砲弾は冬月先生が仕込んだと言うのだから、良い意味でタチが悪い。あの人の一言一句は重くて強いからだ。
「やれやれ、あの2人は独占欲が強いんだね。君は参戦しなくていいのかい?」
「ふふん。これは、大人の余裕ってやつよ。じっくりと、後で彼は私色に染めればいいのよ」
「なるほど…リリンの文化は興味深い」
シンジは何とか、2人を説得して、矛を収めさせた。
実際は、結論を出すのを先送りしただけだが。
さて、最後の段階に入ろう。
「そろそろかな」
「あれ?槍は?」
「あぁ、槍は父さんと母さんが使うから、安心していいよ。最後ぐらい、父親と母親らしいことをしたいって」
持参していたガイウスの槍は、シンジの手にはなかった。ユイとゲンドウが列車を降りたのと同時に、ガイウスの槍は2人の手に渡された。最後の最後ぐらい。2人は親らしいことをするのだ。
「ゲンドウ君も、最後ぐらいは父親らしい姿を見せるか」
「うん。父さんは、やっぱり。僕の父さんだから」
列車は駅に到着した。
そこは、彼らにとって、本当の終着駅だった。
「さぁ、降りよう」
「えぇ」
「行くわよ」
「シンジ君と一緒に」
「よっし!降りるっと」
5人は仲良く、みんなで駅に降りた。
そして、シンジは列車を後にする時に、列車に振り返って呟いた。
「さようなら…全てのエヴァンゲリオン」
彼が駅に降りようとしたとき、明るい、温かい光に包まれた。
続く(次最終回)
今日中に完結させます。アンケート結果を待たなくていいの?と思われるかもしれませんが、大差がついているので。
次回予告
駅に降り立った5人
そこは、あの赤い世界ではない
新世紀たる世界だった
そして、みんなで駆けだして、駅の外へ向かう
次回 新世紀エヴァンゲリオン 「NEON GENESIS EVANGELION」