【完結】ユイ君…本当にこれで良いのかね?   作:5の名のつくもの

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今回はサブストーリーです。




ユイ君…そこにいるのか?【サブ】

~冬月家~

 

「あれ?先生、どうかしたんですか?」

 

「ああ、シンジ君か。まぁ、少し老婆心をたぎらせてしまってね」

 

学校から帰って来て自分の部屋で寛いでいたシンジは何となくリビングに来てみると、そこには冬月が段ボールから衣類を取り出していた。男性用の衣類なら何も疑問に思うことは無いのだが、それは女性用であった。シンジはある程度の予想がついていたが、一応の念のためで聞いておいた。

 

「なに、私とてレイ君を引き取った身だ。彼女に何かできないかと思ったのだよ。そこで、レイ君に服をプレゼントすることにした。安直な考えだと思ってくれ」 

 

「なるほど。別に安直とは思わないですよ、先生の純粋な善意ですから」

 

冬月は建前の地位としてはNERV副司令となっている。しかしながら、それはあくまでもNERV内の話だ。彼が家に帰ってプライベートに移行すれば、ただの好々爺である。彼にとってシンジやレイは孫に等しいので、2人にはとてもよくしていた。今回のその一環だと冬月は言い放った。シンジはともかく、色々と難しいレイに対してはどうするのか?冬月は冒険をせず、無難な手段をとることにした。具体的には、服を買い与えることにしたのだ。

 

その服は悪目立ちしない、それでいて地味すぎない。程よくオシャレである。上下ともに複数着を買っていたようであり、組み合わせは自由自在となっている。「誰がカスタムするのか?」という問題は一旦置いておこう。そして、これらの服を選んだ冬月の眼力は見事だ。人形のように美麗な顔立ちをしているレイの美点を消さず、むしろ美を引き立てるような服選びは敬服に値する。

 

「ま、私のような年老いた爺ができる、本当に数少ないことだよ。そうだな…私から渡してもあれだ。すまんが、君からレイ君に渡してくれないかな。こんな爺よりも、シンジ君の方がはるかに向いている。うん、その方がいい」 

 

「本当にいいんですか?わざわざ先生が買ったのに…」

 

「構わないよ。私より君が渡した方が、彼女は喜ぶに決まっている。彼女が心から笑えるのなら、それに越したことはない。ほら、早く渡してきなさい」

 

「ありがとうございます」

 

シンジは冬月にお礼を述べて、レイのいる部屋へ向かっていった。リビングで再び一人となった冬月はため息を吐いた。別にお金のことやシンジとレイの関係は、彼にとって何ら問題ではない。自分が服を選んだ結果を考えてだ。結果を鑑みて、ため息を吐かざるを得なかったのだ。周囲1mに誰かしらの人がいても聞こえないような、か細く小さな声で冬月はつぶやいた。

 

「私も碇と同じか。ユイ君を引きずっているとはな。私もまだ未熟だ」

 

~レイの部屋~

 

「私に…服をくれるの?」

 

「そう。買ってくれたのは冬月先生だけど、僕からのプレゼント」

 

レイは急にシンジが部屋に来たかと思えば、服をプレゼントしてくれた。それを受け取ったレイは、ポカンとして驚き顔を直せなかった。彼女は誰からも物をプレゼントをされたことが一度も無かったので、こういうことに慣れていなかったのである。まだ相手がゲンドウであればいつものポーカーフェイスだっただろう。しかし、その相手はシンジだった。最愛の少年だったからこそ、己の感情を制御しきれずフリーズしてしまった。

 

「どうかな?着てくれるかな?」

 

「うん…でも。碇君にお願いがあるの」

 

「何?綾波のお願いなら、なんでも聞くけど」

 

ニヤリとレイは笑った。喜びを表すような笑いではなくて、何か悪いことを思いついた顔である。あのレイのことだから、法に触れてしまう悪事ではない。いや、悪事と言うのかは人によるかもしれない。

 

さて、肝心の思いついたこととは?

 

「まず…碇君がこれを着て」

 

「ん?」

 

「着て…これ(上下セット)。あと、これも」

 

綾波はシンジが渡した服(上下)を持っており、それをシンジの方に向けていた。また空いていた手で何かを持っていた。それらは一括して使用するものである。シンジはレイからのお願いは大したことではないと考えていたが、まさかのお願いに面食らった。断りたい気分と無下に断っては悪い気分がひしめき合っている。

 

「碇君に着てほしい。あと、これもつけてほしい。絶対に似合うから」

 

「それってさ…カツラだよね?しかも、女性のやつだよね?」

 

「そう」

 

すんなりとレイは認めた。レイが空いた手で持っていたのは女性型のカツラであり、これを付けてほしいとしている。何を思ってのお願いなのか。レイはしきりに「似合うから」と言っている。それが服を着てカツラをつけることの正当な理由になるのかは、ひたすら疑問に尽きる。

 

まぁ、レイにとっては…そういうことだったのだろう。

 

「碇君」

 

「はぁ…わかったよ」

 

~リビング~

 

「やけに騒がしかったが」

 

冬月はシンジとレイが使う部屋の方からガタガタと物音がしていたので、事故が起きてないかと不安だった。2人のどちらかがリビングにまで来ることは無かったので、事故は無いと思われる。普通にバタバタしていただけか。

 

そう思っていたら、その2人が来た。慌てた素振りは見えない。大丈夫そうだ。

 

「どうだね?レイ君と…ユイ君?ユイ君なのか?」

 

「えっと…僕です。先生」

 

「あ、え。うん。そうなんだが…うむ。よく似ているな!」

 

冬月の前に現れたのはレイとユイ(シンジ)だった。この事態を簡潔に言い表すなら、シンジがレイ用の服を着て且つ、カツラを装着して完全な女装をしている。エゲツナイほどに完成度が高いだけでなく、その姿は碇ユイそのものだった。もちろん、身長や体つきなどの面で異なるのだが。

 

「うん!似ている!」

 

「せ、先生まで…」

 

テンションが上がった冬月は目にも留まらぬ速さで動いて、カメラを取り出した。そして、シンジが制止する前にパシャリ!とカメラから音を鳴らした。そして、そのままレイに確認を求めた。「どうだね?我ながらよく撮れていると思う」、「はい、素晴らしい腕前です。これは永久保存にしましょう」とシンジにワザと聞こえるような声量で話した。それを聞いていたシンジは何も言えなかった。敵は2人であるから、自分が勝てるわけがない。大人しく、流れに身を任せるが吉。

 

「碇君…動かないでね」

 

「悪いが、老人の寿命を延ばすためだと思ってくれよ」

 

その後、女装シンジの撮影会が延々と行われたのは冬月家の機密事項である。

 

そして写真はレイと冬月の手で永久保存とされたのであった。

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