異世界帰りのヒーロー、アバンナイト   作:兵庫人

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大人しく降参しろ

 やっぱり変身シーンは見た目のインパクトが大きいな。

 

 全身鎧姿に変身した俺に驚きの表情を浮かべながらも興奮した歓声を上げる拳藤、物間、黒色を見て俺は内心で自慢げな笑みを浮かべた。

 

 何しろこの鎧に変形した大盾、「鎧の魔盾」は長年の相棒であるはかいのつるぎと同じくらい命を預けてきた第二の相棒と言える自慢の防具なのだから。

 

 俺が鎧の魔盾を手に入れたのは、あのドラゴンクエストの異世界で先生から離れて一人武者修行の旅をしている時だった。

 

 武者修行の旅の途中でランカークスという小さな村に立ち寄った俺は、その近くにある森で一人の魔族の男と知り合った。その時は知らなかったがその魔族の男は魔界一の刀匠で、はかいのつるぎの呪いを受け付けない俺に興味を持ったらしく、俺は彼に誘われて一年程寝食を共にした。

 

 魔族の男と暮らした一年間は家事や雑用、偶に強力なモンスターの撃退をするという毎日で、その間に俺は彼から戦士としての心構えを教えられた。そして俺が再び武者修行の旅に出る時に魔族の男から与えられたのがこの鎧の魔盾だ。

 

 鎧の魔盾は、はかいのつるぎを使う俺の為に作られた専用の防具で、使ってすぐに手に馴染み大きく役に立った。呪文や炎、吹雪を無効化して一人で戦う俺の身を守ってくれるだけでなく、盾の内側にはかいのつるぎを収める為の専用スペースもあり、切っ先が斧の刀身で通常の鞘では収められないはかいのつるぎの持ち運びもずっと楽になったのだ。

 

 あと全身鎧に変形した姿は初代ドラゴンクエストの勇者の鎧に似ていて、そこも俺は気に入っていた。

 

 そんな訳で鎧の魔盾の変形に拳藤達が驚いている事に気を良くした俺は上機嫌で物間を見て彼を指差した。

 

 

「物間、そして黒色。大人しく降参しろ。この姿になった俺には呪文は通用しないぞ」

 

「……!? は、ははっ! 変身だなんて驚いたね。それも君の個性なのかい、親友? でも呪文が通じないとは限らないじゃないか? ……イオラ!」

 

 物間は俺の言葉に引きつった笑みを浮かべるとこちらに向けて爆裂の呪文を放ってきた。だけど……。

 

「無駄だ!」

 

『『………!?』』

 

 俺は左腕にある一回り小さくなった盾で物間が放った魔法の砲弾を全て弾き飛ばし、それを見た物間だけでなく拳藤と黒色まで絶句する。

 

「な、何よそれ……? 黒岸、まるで勇者みたいじゃない?」

 

「禁じられた知識だけでなく、神秘の防具を呼び出し身に纏うとは……! 黒岸、お前こそまさに魔界からやって来た孤高の騎士よ!」

 

 うん。後半の黒色の言葉はよく分からないけど、前半の拳藤の言葉は聞いてて悪い気がしないな。

 

「さて、次は俺の(ターン)だ。……ここには核爆弾もあるから穏便な手段でやらせてもらう。……こい、相棒」

 

『『………!?』』

 

 そう言って俺は何もない空間からはかいのつるぎを呼び出し、再び驚いた顔となる物間達を無視してはかいのつるぎを前にかざし意識を集中する。

 

「くらえ……! 『呪しき波動』!」

 

 俺の言葉と同時にはかいのつるぎから黒い波動のようなものが放たれて物間と黒色を襲う。

 

 呪しき波動。

 

 魔法を弾き返す鎧の魔盾の特性を利用して本来は使用者を襲う呪いの力を敵へと放つ、製作者である魔族の男が考えてくれたはかいのつるぎと鎧の魔盾両方が揃っていないと使用できない機能だ。

 

「……!? これは……体が動かない……?」

 

「み、見事だ。黒岸……」

 

 呪しき波動により体の自由を奪われた物間と黒色は揃って地面に倒れ、この瞬間、俺と拳藤の勝利が確定したのだった。

 

 

 

 

 

「……私、何もしていないんだけど?」

 

 後ろから戸惑ったような寂しそうな拳藤の声が聞こえてきた気がするが……ごめん、拳藤。

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