「今日は皆にクラスのクラス委員長を決めてもらう」
「『学校っぽいイベントきたー!』」
朝のホームルームでB組担任のブラドキング先生がそう言うと、大勢のクラスメイト達が大声を上げた。それと同時に隣からも全く同じ叫び声が聞こえてきたので、隣のA組でも担任がクラス委員長を決めるように言ったのだろう。
普通のクラスではクラス委員長なんて面倒な役職、自分以外の他の人間に押し付けあったりするものだが、生憎ここは将来のヒーローを目指す雄英高校ヒーロー科のクラス。B組のクラスメイトの大半がクラスのリーダー的存在であるクラス委員長をやりたがって、自分がいかに相応しいかアピールしていた。
しかし俺はどうしようかな? ドラゴンクエストの異世界で魔王軍と戦った時、複数の兵士を率いて戦う場面がいくつかあったけど、あれは実にしんどかった記憶がある。だけど将来の経験を得る為にここは立候補してみるべきか?
「あー……。それと黒岸」
「? はい」
俺がクラス委員長に立候補するべきか考えていると、ブラドキング先生が気まずそうな表情で俺に話しかけてきた。
「すまないがお前には保健委員になってほしいのだが」
「保健委員ですか?」
「そうだ」
俺が聞き返すとブラドキング先生は一つ頷いてから俺に保健委員になるように言った理由を説明してくれた。
「この雄英高校は一年から三年にかけてヒーロー科の実戦訓練やサポート科の実験等で他の高校と比べて生徒が大きな怪我をする割合が大きい。そしてそれを治療するのがリカバリーガール先生だけではいざという時に手が足りなくなるのでは、という声が以前から上がっていた。その時にリカバリーガール先生が個性でオールマイト先生を治療したというお前を推薦したという訳だ」
そう言えばリカバリーガール、俺がオールマイトの傷を治した時に後継にならないか、と言っていたけどあれって本気だったのかな?
「それと黒岸。ドラゴンクエストのベホマが使えるということは他の回復魔法、毒を消すキアリーとかも使えるのか?」
「はい。キアリクやシャナクも使えますよ」
ぶっちゃけ、麻痺を治すキアリクはともかく、この現代社会に呪いを解除するシャナクの出番があるか分からないが、それでも使えることを言うとブラドキング先生は満足気に頷いた。
「だったらなおさら保健委員にぴったりだな。保健委員になると他のクラスに出張してもらうこともあるが、その時抜けた授業の単位等を融通してもいいと学校側も言ってくれている。それで引き受けてくれるか?」
「……まあ、それだったらいいです」
保健委員として出張するということは他のクラスの訓練を見ることができていくらかの経験となるだろう。それに抜けた授業の単位を融通してくれるなら断る理由はないと思う。
そこまで考えて俺が保健委員となることを了承するとブラドキング先生は僅かに安心した表情となった。
「そうか。そう言ってくれると助かる。……それですまないが三日後、早速出張してくれないか?」
三日後!? いくら何でも早すぎないか?
「……ちなみにどのクラスにですか?」
「隣の一年A組だ。A組は三日後のヒーロー基礎学で大掛かりな訓練をするからそれについて行ってほしい」
一年A組か……。
ブラドキング先生からA組の訓練について行くように言われた俺は、ふと入試試験で出会ったあのぼさぼさ頭の受験生、緑谷のことを思い出した。
そう言えば緑谷の奴、試験に受かったのか? B組にはいなかったけどA組にいるのかな?