今、あの手の男は脳無という三人の大男を「オールマイトと戦わせるために特別に用意したヴィラン」と言った。
それはつまり脳無にはオールマイトと正面から戦っても勝算があるくらいの戦力があるということ。しかも恐らくあの脳無の一人一人が。
その話が本当ならこれ以上無い脅威だ。その上、マキナが大分数を減らしてくれたが他のヴィラン達も残っているし、黒い霧のヴィランがあの黒い霧で増援を呼んでくる可能性も考えれば、この戦いは決して油断出来ない。そこまで考えて俺は横にいるマキナに目を向ける。
「おい。マキナ……で、いいんだよな」
「はい。機械島巻菜。それが私の名前です」
俺がマキナに声をかけると、キラーマシンの中から思ったより可愛い女の子が聞こえてきた。
「機械島巻菜、ね。お互い言いたいことはあると思うけど、『今』は味方だ。ここは協力して戦うぞ」
「ええ。私も同じ事を考えていました」
俺がマキナに共闘を願い出ると彼女はあっさりとそれを受け入れてくれて、俺達がいざ戦おうとするとそこに黒い影が空から降ってきて呆れた声を出した。
「戦うぞ、じゃないだろうが」
空から降ってきた黒い影は相澤先生で、俺とマキナをそれぞれ一瞥するとあからさまなため息を吐いた。
「はぁ……。機械島はともかく、大人しそうだった黒岸までこんな勝手な事をするとはな……。まあいい。とにかく雑魚の掃討ご苦労。後は俺がするから二人は13号の所へ避難……と言いたいが、あれらに背中を向ける方が危険だな。二人は俺からあまり離れるな」
俺とマキナを庇うように立つ相澤先生。それを見て手の男が楽しそうに笑う。
「へぇ……。イレイザーヘッドも参戦か。まあ、これで三対三になってバランスがいいかな。後は……黒霧」
「了解しました」
手の男の言葉に黒い霧のヴィランは頷くと一瞬で姿を消し、次に現れたのは13号先生と緑谷達がいる場所だった。
「しまった!」
「さあ、ゲームスタートだ」
『『………!』』
黒い霧のヴィランが緑谷達の所へ行ってしまい、俺達が思わずそちらへ向かおうとした時、手の男の命令を受けた三体の脳無が俺達に襲いかかってきた。それに向けて俺は魔法を放つ。
「マヌーサ」
『『……? ……!』』
俺の放った魔法により三体の脳無は幻覚に惑わされてそれぞれ見当違いの方向へ攻撃をし、その光景に手の男だけでなく相澤先生も驚いた表情となる。
「黒岸、お前か?」
「はい。それと今から先生を強化します。……バイキルト。ピオリム。スカラ」
「はぁ? 今度はドラクエの呪文かよ? ドラクエ好きすぎだろ」
俺が唱える呪文に手の男は呆れたような声で言うが、相澤先生はそれに構う事なく強化された自分の体を確認した後、俺に向けて小声で話しかけてきた。
「ありがとうな、黒岸。……それとお前、・・・・は使えるか?」
「え? 相澤先生?」
「俺もドラクエはスリーからファイブまでクリアしたことがあるんでな」
そう言って小さく笑う相澤先生に俺は小さく頷いて呪文を唱える。
「分かりました。……レムオル」
相澤先生が俺に使えるかと聞いてきた呪文は、味方を一定時間透明にする呪文レムオル。
俺がレムオルを唱えた瞬間、相澤先生の姿が消えて、虚空からどこか楽しそうな相澤先生の声が聞こえてきた。
「待たせたな、ヴィラン。早速始めよう」