異世界帰りのヒーロー、アバンナイト   作:兵庫人

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アバン……ストラッシュ!

 一年A組担任、相澤消太。ヒーロー名「イレイザーヘッド」。

 

 視界にいる相手の個性を無効化する「抹消」の個性と、炭素繊維を織り込んだ特殊な束縛布を用いた奇襲を得意とするヒーロー。

 

 そんな相澤先生を筋力を倍加させるバイキルト、敏捷を増加させるピオリム、身体を耐久度を向上させるスカラで強化した上に、レムオルで「透明化」という奇襲においてこれ以上ないアドバンテージを与えた場合どうなるのだろうか?

 

 答えは一方的な蹂躙だ。

 

「クソッ! 個性が使えねぇ!? 次は俺か! 一体何処から……ぐわっ!?」

 

「ちょっ!? それは反則だろ! レムオルは戦闘では使えないはず……ぶへぇっ!」

 

「いや、確かトルネコが主役のあのゲームでは……ごほぉっ!?」

 

 透明人間と化した相澤先生は次々とヴィランを時には投げ飛ばし、時には強化された拳や蹴りで吹き飛ばすという無双ぶりを発揮していたが、何も知らない人間が見ればヴィランが勝手に吹き飛んでいっているようにしか見えないだろう。

 

 ……ちなみにこの透明人間と化した相澤先生の無双を後で聞いたA組の女生徒の一人が「私の存在価値がぁ!」と叫んでガチへこみをして、俺がそれについて女生徒に謝罪したのだが、それはまた別の話。

 

「はぁ!? 何だよそれは?」

 

 透明人間と化した相澤先生によって数分で脳無を除くヴィランが全て倒されたのを見て手の男が首元を掻き毟りながら苛立った声で話し出す。

 

「イレイザーヘッドをドラクエの呪文で強化した上にレムオルで透明にしただぁ!? 何だよ、それ? チートじゃないか? ……おい! 脳無! いつまでも遊んでないでさっさと全員殺してしまえ!」

 

『『………!』』

 

 手の男が怒鳴るとそれを聞いた三体の脳無が相変わらず見当違いの方向へ攻撃しながらもこちらへ近づいてくる。

 

「っ! させるか!」

 

 何処からか相澤先生の声が聞こえてきたら脳無の一体の動きが止まる。恐らくは相澤先生が捕縛布で拘束してくれたのだろうが、残り二体の脳無がこちらへ向かってきていた。

 

 こうなった以上仕方がない。相澤先生は動くなと言っていたが敵が来るのなら戦うしかない。

 

「マキナ、一体は任せた。俺はもう一体と戦う」

 

「了解」

 

 マキナは短く答えて脳無の一体に向かうと、俺はもう一体の脳無にとはかいのつるぎを振るった。

 

 脳無が本当に人間なのかは分からないが、それでもいきなり斬り殺すわけにはいかない。だがそれでも殺す気でくるなら骨の一本や二本は覚悟してもらう。

 

「……何っ!?」

 

 俺は脳無の足を狙ってはかいのつるぎを振るったのだが、はかいのつるぎの刃は脳無の足に食い込んだ所で動きを止めてしまった。

 

 何だこの感触は? まるで分厚いゴムの塊を切ったような感触。これが脳無の個性なのか?

 

「ははは! 無駄無駄! 脳無はオールマイト用のヴィランだって言っただろ? ソイツらは全員『ショック吸収』と『高速再生』の個性を持ってるから並の攻撃じゃ倒せないぜ」

 

 俺の驚いた顔を見て手の男が愉快そうに笑う。

 

 なるほど。確かに対オールマイト用という言葉に嘘はないようだな。だけどそんな死ににくい個性を持っている相手なら俺も多少本気で技を出しても大丈夫ってことだ。

 

 相澤先生にかけた魔法の強化が解ける前にここは一気に決着を……っ?

 

 俺がそこまで考えている時に脳無が俺に向かって拳を振るおうとしていた。それは俺から見たら十分回避可能で、実際俺は攻撃を回避してすぐに反撃に移ろうとしていたのだが、その前に脳無に向かって高速で突撃してくる男がいた。

 

「危ない、黒岸君! ……SMASH!

 

 突撃してきたのは緑谷で、彼は常人を遥かに超えたスピードで右拳を脳無へと放った。……しかし。

 

「嘘? 効いていない」

 

「緑谷、下がれ!」

 

 やはりというか緑谷の拳も脳無には効いておらず、俺は緑谷の体を掴むと彼ごと大きく後ろへ跳んで脳無との距離を取った。

 

「緑谷、お前なんて無茶を」

 

「だ、だって……黒岸君が危ないと思って……」

 

 俺の言葉に返事をする緑谷の体は恐怖で震えている上、見ればさっきの高速移動と攻撃の余波で入試試験のように右腕と両足の骨が折れていた。恐くても、知り合って間もない俺の危機を自分が傷ついても助けようとする彼の言葉を聞いた瞬間、俺は……。

 

 

「…………………………ダイ?」

 

 

 大魔王を倒してドラゴンクエストの異世界を救った弟弟子のことを思い出した。

 

「ダ……? 今なんて?」

 

 緑谷が聞いてくるが俺はそれに答えず一つの事を決意して実行することにした。

 

「……緑谷。俺の名はアバンナイト。平和を守る未来のヒーロー(勇者)の一人だ。……お前と同じな。お前はヒーローに相応しい勇気を見せてくれた。だから今度は俺が見せてやる。……ヒーロー(勇者)の一撃を」

 

 そこまで言って俺は、はかいのつるぎを逆手に持ち直して「ある技」の構えをとると、脳無と戦っている相澤先生とマキナに向かって叫んだ。

 

「相澤先生! マキナ! 急いで脳無から離れろ!」

 

『『……!』』

 

 俺の言葉を聞いて相澤先生の気配とマキナが脳無から離れた。

 

 ……先生、それと弟弟子。彼は、緑谷出久はきっと将来、貴方達のように多くの人々を守る正義のヒーロー(勇者)になると思います。

 

 だから緑谷には見せるべきだと思ったんです。人々を守る為に悪を倒す勇者の一撃を。

 

 異世界にいる大恩ある先生と自慢の弟弟子に向かって心の中で言ったその時、先生と弟弟子がそれぞれ人懐っこい笑みと元気あふれる笑みを浮かべ、ピースサインをしてくれたような気がした。

 

 

「アバン……ストラッシュ!」

 

 

 俺がはかいのつるぎを振るった瞬間、剣から閃光が放たれて三体の脳無を飲み込んだ。

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