異世界帰りのヒーロー、アバンナイト   作:兵庫人

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二重で間違えているぞ

「それじゃあ緑谷は俺と訓練……する前に、まず個性の使い方をマスターしようか」

 

 訓練を再開した俺が緑谷にそう言うと、声をかけられた緑谷が面白いくらい驚いた顔となる。

 

「ええっ!? ぼ、僕の個性の使い方って?」

 

「入試試験とUSJの時に見て思ったんだけど、緑谷の個性は多分身体能力を強化する増強系。だけどそれをあまり使い慣れていないんじゃないか?」

 

 緑谷が個性を使うのを見た時、俺はドラゴンクエストの異世界で魔法使いの弟弟子が覚えたての呪文の使い方に慣れてなくて余計に魔法力を消費する場面を思い出した。そこから緑谷が自分の個性を使いきれていないんじゃないかと思って言ってみれば、どうやら正解だったようで緑谷は更に驚いた顔となる。

 

「………!? ど、どうしてそれを?」

 

「まあ、何となくそう思っただけだ」

 

「ちょっとそれってどういうことだ? 個性ってのは大体四歳くらいに出て、いやでも使い慣れるもんだろ?」

 

 俺と緑谷の会話を聞いていた鉄哲が横からそう言ってくるが、俺はそれに首を横に振って頭の中のある知識を思い出す。俺は異世界から帰ってきて弱体化した体を鍛え直す時、個性やトレーニング関係の本を色々と読み、その中に興味深い知識があったのを覚えていた。

 

「個性には使用者の肉体がある程度成長するか、何か能力が一定以上にならないと発現しない例がごく僅かだけどある。……緑谷、もしかしてお前、雄英高校に受験する一年か二年くらい前にいきなりトレーニングして、今の体を無理矢理作ったんじゃないか?」

 

「っ!?」

 

 俺が推測を口にすると緑谷は息をのんで驚き、それが俺の推測が正しいという何よりの証拠となった。

 

「多分、緑谷の個性は体が出来上がるのを待っていたんじゃないか? 個性を使った緑谷の超パワーは確かに凄かった。でも四歳くらいの子供がいきなりそんな超パワーを使ったら体は間違いなく壊れてしまう。だから緑谷の脳は体が出来上がるまで個性にリミッターをかけて、トレーニングでギリギリ超パワーに耐えられるようなった今、ようやく個性の使用が解禁されたと思うんだが?」

 

「え……ええっと……。多分それで合っていると思います」

 

 俺がそこまで言うと緑谷は何故か強張った表情となって頷き、それを聞いていた鉄哲達四人は納得したように頷き、マキナは興味深そうに緑谷を見ながら呟いた。

 

「なるほど……。今まで無個性だった出久がいきなり個性に目覚めたのはそういうことだったのですね。……こんな事だったら幼少時に私がしていたトレーニング、出久も誘うべきだったのでしょうか?」

 

「ヒィ!? ど、どうぞお構いなくぅ!」

 

 首を傾げながらマキナが言うと、緑谷は顔を真っ青にして後ずさる。マキナの幼少時のトレーニング……一体何をしていたんだ?

 

「まぁ、そんなわけで緑谷は訓練より先に自分の個性に慣れてもらう方が先だと思ったんだ。俺はバイキルト、スカラ、ピオリムと自分や他人の身体能力を強化できる魔法が使えるからいくらか助言ができる。ちなみに緑谷は今までどのようなイメージで個性を使っていたんだ?」

 

 個性の発動は自身のイメージの影響が大きい。緑谷がどんなイメージで個性を使っていたかを聞けば助言もしやすいだろう。

 

「う、うん。今までは体の一部に力を集中させて、レンジに入れた卵が破裂しないって感じのイメージで個性を使っていたんだ」

 

「………何?」

 

 緑谷の口から出た個性を使う際のイメージを聞いた俺は思わず固まった。

 

 体の一部に力を集中? レンジに入れた卵が破裂しないイメージ? それって……。

 

「緑谷。お前、個性の使い方、二重で間違えているぞ」

 

「えっ!? 間違っているの? しかも二重で?」

 

 白眼をむいて驚く緑谷に俺は頷きながら、先生の教えを思い出した。

 

『いいですか、ケント君? バイキルトにスカラ、ピオリムといった自分や他人を強化する魔法は戦闘を有利にするベリーベリー便利な魔法ですが、魔法使いでこれを修得しても使える人は本当に少ないんです。何故ならこういった強化魔法は体全体を強化しないと行動の反動を処理しきれず、逆に動かした部分を壊してしまうのですけど、運動があまり得意ではない魔法使いの人達は体全体を強化するイメージが難しいからなんです。幸いケント君は魔法だけなく剣も得意だから大丈夫だと思いますが、強化魔法を使う時は体の一部分だけでなく、全体を強化することを忘れないでください』

 

 つまり緑谷はあの時先生が言った強化魔法の失敗例を見事なまで実行していたということだ。

 

「いいか? 身体能力の強化は体全体を強化するのが鉄則だ。それと電子レンジに卵って、どうやっても最後には破裂するイメージだからやめた方がいいぞ? 力の強弱に関するイメージだったら水道の蛇口とかガスコンロの火とかの方が簡単じゃないか?」

 

「………!?」

 

 俺が助言をすると緑谷は今気づいたといった表情となる。

 

 どうやら緑谷は完全な個性の使い方の初心者のようで、これでよくあの入試を合格出来たものだと感心する。……しかし逆に言えば、自分の個性に慣れさえすればここから一気に化ける可能性もあるってことか。

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