時間が経つのは早いもので、一週間という時間はあっという間に過ぎていよいよ雄英体育祭の日がやって来た。
体育祭の一年の部の実況をしているのは相澤先生とプレゼントマイク先生で、そこでプレゼントマイク先生は最初に入場してきたA組を大体的に紹介する。確かに今最も話題になっているのはヴィランの襲撃事件と鉢合わせたA組だが、それでも他のクラスはそれが面白くないようで大多数の生徒の表情が曇ったのが見てとれた。
それに加えて入試試験でトップだった爆豪が開会宣言で言った言葉も問題であった。
「せんせー。俺が一番になる」
「言うと思ったぁっ!」
「ふざけるな! 何様だお前は!」
「引っ込め!」
両手をポケットにいれて明らかにこちらを見下した態度で言った爆豪の言葉に、同じA組の誰かが悲鳴のような声を上げ、ついに不満が爆発した他のクラスの生徒達が一斉に怒声を上げる。しかし爆豪は自分に向けられたブーイングの嵐を全く気にもせず、むしろ挑発するような笑みを浮かべて、
「はっ! せいぜい俺の踏み台になってくれや」
と、言ってきた。これによりブーイングを上げていた生徒達の怒りは更に強まり、それはB組のクラスメイトも同じだった。
「ちっ! A組にも出久みたいないい奴がいるのは知っているけどよ、やっぱりA組にはムカつく奴が多いぜ!」
あからさまに舌打ちする鉄哲の言葉はまさにA組以外のクラスの生徒達の気持ちを現したものだろう。
そしてそうしているうちに司会進行役である雄英高校の教師のプロヒーロー、18禁ヒーローのミッドナイト先生が第一種目を発表する。
第一種目は障害物競走。一年全クラスで障害物のあるコースを走り、先にゴールについた上位四十二人が第二種目に進めるという簡単なルールだが、ここで参加人数が一気に絞られる。
「皆、ちょっといいかい?」
第一種目が発表されて準備時間に入ると物間がB組のクラスメイト全員に声をかけてきた。
「僕から提案なんだけど、第一種目はあえて力をセーブして上位を目指さないっていうのはどうかな?」
……どういうこと?
「はぁ? 何を言っているんだよ、物間?」
物間の言葉の意味が分からなかったのは俺だけではなかったようで、鉄哲が物間に聞く。
「第一種目があるってことはもちろん第二種目もあるってこと。次のことを考えれば第一種目で全力を出して僕達の個性とかをA組を始めとする相手に教えるのは避けたい。だから第一種目は無理せずB組全員で突破することだけを考えようってことだよ」
なるほどね。次を見据えた長期的な戦い方をしようってことか。
確かに雄英体育祭で最も注目を集めるのは第一種目、第二種目が終わった後のトーナメント。そこにより多くのB組の生徒を送り込むことができればB組の存在をアピールすることができる。
物間は心がちょっと……その、アレでA組が相手になるとそれが特に表になるが、身内のことを思いやれる奴だ。だからこの作戦も俺達B組がより多く活躍できるようにと考えてくれたのだと分かる。……だけど。
「ちょっとつまらないな」
俺がそう言うと物間を初めとするB組のクラスメイト全員がこちらを見てきた。
「親友? でもこれはB組が有利に次に進むための……」
「まあ、待ってくれ。要はB組全員で第一種目を突破して、なおかつ個性などの情報をあまり知らせなければいいんだろ? ……俺に考えがある」
こちらを説得しようとする物間を手で制して俺が自分の考え言うと、B組のクラスメイト全員が驚いた顔となる。
「え? マジ? そんなことできるの?」
「できる。それで皆はどうする?」
クラスメイトの取陰切奈の言葉に答えて俺が聞くとクラスメイト達は興味深そうな顔で頷いてくれた。
そしてその数分後。いよいよ雄英体育祭の第一種目、障害物競走が始まった。
「それでは位置について……スタート!」
『『………!』』
ミッドナイト先生の合図で一年の生徒達が一斉に走り出す。しかしB組の生徒は走ろうとせずに俺の周りに集まり、それを見た解説席にいるプレゼントマイク先生がコメントする。
『おおっと!? 他のクラスが全員必死こいて走っているのにB組だけ走らない? 余裕か! 早く行かないと追いつけなくなるぜ!』
分かっていますよ、プレゼントマイク先生。言わなくても今から行きますよ。
「それじゃあ皆、準備はいいか? ドラゴラム!」
俺がドラゴンに変身する魔法ドラゴラムを使って変身すると観客席から驚きの声が上がってきた。
「よし、いいぞ。皆、乗ってくれ」
それから俺はB組のクラスメイト達を全員背中に乗せるとトベルーラを使い、高速で空を飛んだ。
さあ、行くぞ! 狙うのは第一種目B組の上位独占だ!