「はっ! まさかこんなにも早くお前と戦うなんてな、マキ?」
「……」
試合の舞台の上で爆豪がヒーロー候補生にあるまじき獰猛な笑みを浮かべていうが、対するマキナは無表情のままだった。
「テメェはガキの頃から俺に色々やってくれたが、その借りを今ここでまとめて返してやるぜ。覚悟するんだな?」
「……」
爆豪の両手から火花のような小さな爆炎が彼の感情を表すように出ては消えていく。しかしそれでもマキナは無表情のままで、そんな目の前にいる自分を無視しているような彼女の態度に爆豪が怒鳴る。
「おい、マキ! 人がせっかく話しているのに無視すんなや! 何か言い返してみろよ!」
「……相変わらずですね、勝己は」
爆豪の言葉にマキナは無表情のまま、どこか呆れたような口調で話し始める。
「いつも自分が一番じゃないと、注目されていないと気がすまない幼稚な性格。幼稚園の頃から全く変わっていない。勝己、貴方は成長という言葉を知らないのですか?」
「そんなもん知ってるわ、クソが! 誰が幼稚園児で成長してないだと? 滅茶苦茶成長してるだろうが見て分からねぇのか!?」
マキナの言葉に爆豪が親指で自分を指して怒鳴り、それを見てマキナが首を傾げる。
「……つまり勝己は成長をしていると? そこまで言うのだったら確認してもいいですか?」
「はっ! 好きにしやが「では失礼して」……れ?」
爆豪が腕を組んで胸を張りマキナの言葉に答えようとすると、いつの間に彼のすぐ近くまで移動していたマキナが彼のジャージのズボンを掴んでそれから……。
ズボッ!
と、いう音が聞こえそうな勢いでジャージのズボンを下に下ろした。……下着ごと。
『『……………』』
時が、止まった。
突然のマキナの奇行に爆豪は無言。俺を初めとする生徒達も無言。教師達も無言。観客達も無言。
時が止まった会場内で唯一動いているマキナは爆豪の前でしゃがみ込み、爆豪の股間にあるアレのサイズを観察する。
腕を組んだ状態で下半身を露出させて固まる爆豪と、その前でしゃがみ込むマキナ。
外から見るとこれ以上ないヤバい絵面である。
「……ふむ。小学生の時と比べると少し大きくなっていますが、やはりあまり成長していませんね」
「……!? 成長ってそういう意味じゃねぇだろうが!」
マキナの言葉でようやく我に返った爆豪が慌ててジャージのズボンと下着を履き直して彼女から距離を取る。
うん。これは爆豪の言っていることが全面的に正しいな。……というか。
「爆豪の奴、強いな。あんな事されたら普通泣くぞ? というか俺だったら泣く」
『『………』』
俺の呟きにB組のクラスメイトの男子全員がズボンを強く掴みながら青い顔で頷いてくれた。A組の男子も同様で、ただ一人緑谷だけが、
「まきちゃん、やっちゃったか……。何かするとは思っていたけど……」
と、遠い目で空を見上げながら呟いていた。……本当にマキナは今まで何をしてきたんだ?
そんな事を俺が考えていると、舞台ではマキナが何故爆豪が怒っているか本気で分からないといった様子で首を傾げていた。
「? 何を怒っているのですか? 私は貴方が成長したか確認してもいいと言ったから確認しただけですが?」
「〜〜〜!? もう許さねぇ、お前はやっぱり絶対殺す! 徹底的に叩きのめして、クソみたいな過去も全てぶっ飛ばしてやる! 泣いて謝っても手加減してやらねぇからな!」
爆豪は顔を真っ赤にして憤怒の表情で怒声をあげるが、マキナはそれに全く恐れた様子を見せなかった。
「話が長いのですよ。私が気に入らないならさっさとかかってきたらどうです? この短小包『ストォーーープッ! 機械島巻菜! それ以上言うのはNG! これ、全国放送だから! というかその言葉は男の子限定のザラキだから言わないであげてぇ!?』」
マキナの言葉を実況席のプレゼントマイク先生の叫びが打ち消す。プレゼントマイク先生、本当にありがとうございます!
「……………殺す!」
マキナの言葉に爆豪は憤怒を通り越して鬼のような表情で言うのだが……目元をよく見れば、ちょっぴり涙目であった。
ちなみにこの出来事は「全国放送で下半身露出事件」という名前で雄英高校で長く言い伝えられることになるのだが、それはまた別の話。