「まずは……『ピオリム』」
俺は走りながら速度を上昇させる魔法をかけて更に走るスピードを上げた。
この実技演習試験はスピードが命だ。他の受験生よりも速くヴィラン役のロボットを発見して倒す。そうして多くのポイントを得ることがこの試験に合格する条件だ。
その為、身体速度と反応速度を上昇させるこの魔法ピオリムは、まさにこの試験にうってつけと言えた。
ドラゴンクエストの異世界にいる間に俺は攻撃・回復・補助と全ての魔法を習得している。
魔法を使うためにはその魔法と契約をする儀式を行う必要があり、儀式が成功すれば後は呪文で魔法を呼び出せるようになる。しかし人によっては相性が悪い魔法があり、何回儀式を行っても成功せずその魔法が使えない場合もある。
その点俺は全ての魔法と相性が良く、それを知った先生が「いや〜、ケント君は魔法の才能がベリーベリーありますね〜。これなら勇者と賢者、どちらも狙うことができますよ」と笑顔で褒めてくれたのは俺の密かな自慢だ。
そして魔法と契約をする儀式だが、どうやら俺の個性に大きな影響を与えていたようだった。
異世界から帰ってきた(?)ばかりの頃、俺が異世界で覚えた魔法を試しに使っていたらそれを親に見られて、親は俺を病院に連れて行って詳しい検査をした。するとその病院の医者は俺の個性に変化が現れていると言ってきた。
これは俺の考えなのだが、異世界で俺が行った魔法と契約をする儀式は個性そのもの、「個性因子」と呼ばれるものに魔法という新たな情報を書き加えるものだったのではないだろうか?
とにかく魔法が使えることが分かったことがきっかけで、俺の個性は「超健康体質」とは別の名前で呼ばれるようになった。
新しい俺の個性の名前は「魔法戦士」。
戦士のような強靭な肉体を持ち、魔法のような様々な超常現象(というか本当に魔法)を操れる、という意味の名前だ。
俺はあのドラゴンクエストの異世界で鍛え、生まれ変わったこの「魔法戦士」の個性で、必ず多くの人々の助けとなるヒーローとなる。だからまずはこの入学試験に必ず合格してみせる。
俺が走りながら決意を新たにしていると、早速物陰からヴィラン役のロボットが一体現れた。
「標的捕捉! ブッ殺「遅い!」……!?」
ヴィラン役のロボットがこちらを捕捉する頃には、俺はすでにロボットを右手に持つはかいのつるぎで斬り捨て、次の目標を探して走っていた。
ヴィラン役のロボットと言うからキラーマシーンみたいなのを想像していたが、予想以上に弱くて遅かった。これならアバン流刀殺法や攻撃呪文を使わなくても、はかいのつるぎとピオリムだけでなんとかなるだろう。
そしてここで一気に多くのポイントを集めれば、先の筆記試験の結果が悪くてもカバーをすることが出来るかもしれない。
そう考えた俺は今の戦闘音を聞きつけ、次々と物陰から出てきたヴィラン役のロボットの群れに飛び込んで行った。