[爆豪side]
(どう考えても状況は最悪だな。……クソッ!)
雄英高校体育祭トーナメント一年の部、第五試合。
試合の舞台で爆豪は、目の前と後ろを確認してから心の中で盛大に舌打ちをした。
今、爆豪の前と後ろには、彼の幼馴染みでありこの試合の対戦相手でもある機械島巻菜が「自動鎧」の個性で作り出したドラゴンクエストに登場する機械モンスター、キラーマシンが一体ずついた。
機械島が作り出したキラーマシンは、詳しくは知らないが地球に存在しないはずの金属で作られているらしく、純粋な物理攻撃以外はどんな個性でもほとんど効果がないらしい。しかもその上、対戦相手の巻菜はキラーマシンの一体の中に姿を隠しており、爆豪は彼女に対する攻撃手段を持たない状況に追い込まれていた。
(結局またマキの必勝パターンかよ。こうなる前に勝負をつけようとしたが……クソッ!)
爆豪は試合が始まると同時に、巻菜がキラーマシンを作り出す前に速攻で自分の「爆破」の個性による攻撃を叩き込み、勝負をつけようとした。しかし巻菜はそんな彼の行動を読み切り逆にそれを利用して、今の二体のキラーマシンを作り出すという状況を作り、その事を改めて確認した爆豪はもう一度心の中で舌打ちをする。
「お、おい? 爆豪の奴、もう打つ手がないんじゃねぇか?」
「マジかよ? それじゃあ爆豪の奴、『俺が一位になる』とか大口叩いておきながらいいとこなしで一回戦敗退して、その上幼馴染みにズボンとパンツを脱がされた黒歴史を抱えて生きていくのかよ?」
(……!? あのクソアホとクソ玉、後で絶対殺す!)
観客席から聞こえてきた同じA組のクラスメイトの上鳴電気と峰田実の声が聞こえてきた爆豪は思わず怒鳴りそうになったが、戦闘中にそんな隙を見せたら自分の幼馴染みは確実にその隙をついてくることを彼は知っていた。爆豪は後で必ずクラスメイト二人を処刑することを誓いながら目の前と後ろのキラーマシンに意識を集中する。
「おら! さっさとこいや、マキィッ!」
「言われなくても行きますよ」
こちらが圧倒的に不利だと理解しつつも爆豪が挑発をすると、巻菜が作り出したキラーマシン二体が同時に彼に襲いかかる。一撃でも食らえばそれで意識を失うであろう二体のキラーマシンの攻撃を、爆豪は爆破の個性を使い推進力を得た高速移動で次々と避けていき、その途中で彼はあることに気づく。
(……ん? あのキラーマシンの動き、よく見れば……そういうことかよ!)
巻菜が操るキラーマシンの動きから爆豪は僅かな勝機を見つけ、口元に笑みを浮かべる。
「食らい……やがれぇ!」
爆豪は大声を上げると両手を勢い良く舞台に叩きつけて爆破の個性を発動させる。個性による爆発により舞台の一部が破壊されて大量の砂埃が発生し、爆発の煙と共に巻菜の視界を奪う。
「これは煙幕? 勝己、何処ですか?」
(誰が返事をするかよ、ボケがっ!)
爆豪は心の中で巻菜に言うと、二体のキラーマシンの一体へと走っていく。
(こんな小細工は何回も使えねぇ……! チャンスはこの一回のみ! 食らえや!)
「……?」
爆豪がキラーマシンの胴体に爆破の個性を使った打撃をいれるが、キラーマシンの胴体にはへこみどころか焦げ跡すらなく、攻撃を受けたキラーマシンは爆豪に反撃をするべく右手に持った剣を振り下ろそうとする。
「………かかった!」
しかし爆豪はむしろキラーマシンの反撃を待っていたとばかりに獰猛な笑みを浮かべると、横へ飛んでキラーマシンを剣を避ける。そして……。
「……………くっ!?」
キラーマシンの剣はもう一体のキラーマシンの体を切り裂き、その中に入っていた巻菜が突然の衝撃に苦痛の声を上げる。
「やっぱりな! マキ! お前、自分の入っていないキラーマシンには俺が近づいたらオートで攻撃をするように命令をインプットしていやがったな!」
自分の作戦が成功したことに自慢気な笑みを浮かべる爆豪の言う通り、巻菜は自分の入っていないキラーマシンに彼が近づいたら自動で攻撃をする命令を与えていた。攻撃を避けているうちにその事に気づいた爆豪は、その命令を逆手に取って、無人のキラーマシンの攻撃を巻菜が乗っているキラーマシンへと誘導したのである。
矛盾という言葉は、最強の矛と最硬の盾をぶつけたら双方ともに砕けたという中国の昔話から生まれたとされている。爆豪はその昔話をこの試合で再現したのだ。
「これでようやく爆破が通じるぜ!」
同じくキラーマシンの攻撃を受けて、巻菜が乗るキラーマシンの体にはヒビや隙間が生じており、今なら内部に爆破の爆炎や衝撃を伝えることも可能。博打とも言うべき無謀な作戦を成功させて自ら掴み取った勝機を逃すまいと爆豪は自らの最大の技を放つ。
「成仏しろやマキィッ!
跳躍中に両手から爆発を連続発生させ、その反動で錐揉み回転しながら相手に突撃し、その勢いを乗せたまま特大火力の爆発を相手に叩き込む「爆破」の個性を最大限に利用した爆豪の大技。その威力はキラーマシンを吹き飛ばすほどなのだが、キラーマシンの中に巻菜の姿はなかった。
「いねぇ!? ……上かっ!」
無人のキラーマシンを見て爆豪が上空を見上げると、そこには彼の予想通り、キラーマシンの剣を持った巻菜の姿があった。
「クソが! 今ので死んどけよ! 今度こ……そ……?」
爆豪は自分の大技で巻菜を仕留められなかったことに舌打ちをして、続けて攻撃を仕掛けようとしたのだが、その動きが急に止まる。空にいる巻菜はいつもの無表情ではなく、何か面白いものを見つけたという笑みを浮かべており、その笑顔は物心がついた頃からの付き合いである爆豪でも初めて見るものであった。
「見事な作戦と技でした、勝己。……今初めてちょっとだけ、貴方に興味が出てきましたよ」
巻菜は笑顔のままそう言うと、手に持ったキラーマシンの剣を振り下ろして爆豪を地面に叩きつける。
(クソ、が……! ここまでやって『ちょっとだけ』って、何だよ……それ……?)
巻菜が振り下ろしたキラーマシンの剣をその身に受けた爆豪は、自分でも分からない複雑な気分のまま意識を失った。