試合が始まってすぐに右手を差し出した俺を、物間だけでなく審判役のミッドナイト先生や観客達全員が驚いた顔で見ていた。
「親友? 一体どういうつもりだい?」
「どういうつもりも何も、戦いの最中に俺の個性をコピーするつもりだったんだろ? それを今やれって言っているんだよ」
正直な話、物間は俺の個性をコピーして魔法を使う以外、マトモな戦闘手段がない。だから物間は試合が始まるギリギリまでどうやって俺に触れて個性をコピーするか考えていたはずなのに、いきなり俺から個性をコピーしろと言われたら驚くだろう。
「……それは、僕が親友の個性をコピーしても充分勝てると思ったからかい? 随分と余裕だね? まあ、実際はその通りなんだけどさ」
俺の言葉に物間は、プライドが傷ついたのか僅かにぎこちない笑みを浮かべる。確かに俺の今の言葉はそう受け止められても仕方がないが、俺は首を横に振って否定すると自分の本心を口にすることにした。
「違う。俺はお前が気に入っていて、その力を見てみたいと思ったから個性をコピーしろと言ったんだ。……物間。正直お前はA組のように敵と見なした相手には異常なまでに噛み付く、ちょっと心が病んでいるところがある。そしてお前の個性はお前一人だけだと無個性と同じ全くの無力だ」
「……! いや、それをここで言うかい?」
物間が僅かに傷ついた顔で言うが、俺はそれに構わず言葉を続ける。
「でも、味方と見なした相手は何だかんだ言って気にかけているし、一人では無力なお前の個性は仲間が一人でもいれば一気に出来ることが広がる可能性がある」
『勇者ってのは一人で何でも出来る反面、一人じゃ何も出来ないものさ。そんな足りないところを支え合うのが
物間を見ているとドラゴンクエストの異世界で出会った世界最高の大魔道士と、どこにでもいる武器屋の息子から始まって最後には世界を救った勇者の一番の支えとなった弟弟子の事を思い出す。
「俺は自分の個性を受け入れてコンプレックスを抱きながらも進もうとしているお前を気に入っているし、その力を伸ばしていけばこの超人社会で一つの『最強』になれるんじゃないかと思っている。それを確認したいから最初から俺の個性をコピーして本気で来てほしい」
「………」
俺が自分の本心を口に出すと、それを聞いた物間が驚いた顔となって俺を見る。
いや、何か言ってくれないか? せっかく人が本音を口にしたのにそんな反応じゃ、どうしたらいいか分からないんだけど?
「まぁ、俺にも打算が無いわけじゃ無いぞ? 物間が俺の魔法を使ってくれたら、周りのプロヒーローにアピールし易くなるってのもあるし?」
「……ははっ。うん。そう言うことにしといてあげるよ」
俺が物間に個性をコピーさせる一応の建前を言うと、それを物間は自分の右手を出して俺の右手を握ってきた。
「そう言うことなら遠慮なくコピーさせてもらうよ。だけど負ける気はないからね、『親友』?」
ここでようやく俺は物間が本当の意味で「親友」と言ってくれた気がした。
「ああ、俺も負けてやるつもりはない」