異世界帰りのヒーロー、アバンナイト   作:兵庫人

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惜しかったな

 物間は勝った俺が言うのも何だけど善戦したと思う。そう思ったのは俺だけじゃなく観客達も同様だったようで、気絶して運ばれていく物間に向かって観客達が拍手を送ってくれた。

 

「あの物間って少年の個性、中々面白いな」

 

「ああ、対戦相手の子が最初からコピーさせてくれたこともあるが、同じ個性を使った戦いは見応えがあった」

 

「強力な個性を持つヴィランを相手にしても、個性のコピーさえできれば戦力になるな」

 

 観客席からプロヒーロー達の物間に対する評価が聞こえてくる。

 

 確かに物間は相手に触れることができれば、その相手の個性が強力であれば強力であるほど強くなれる。その為の問題点がどうやって相手の攻撃を避けて相手に触れるかなんだが……いい機会だから今度、物間にもアバン流刀殺法と牙殺法を教えてみるか?

 

 そして第一回戦の試合はこれで全て終わり、第二回戦最初の試合は緑谷と鉄哲の試合だった。

 

 緑谷と鉄哲は一緒に訓練をしているうちにお互いを認め合ういい友人同士となっているが、友人同士だからこそ最初から手加減無しの戦いを繰り広げた。

 

 緑谷はフルカウル状態となって高速移動で翻弄しながら攻撃をするという戦法をとり、対する鉄哲は全身を鋼鉄にして防御を固めカウンターを狙う戦法。フルカウル状態の緑谷のスピードとパワーは凄まじいが、それを鉄哲は鋼の防御力と気合いで防ぎ、いよいよ反撃をしようとしたその時……。

 

「岩砕掌!」

 

「………!?」

 

 土壇場で緑谷が岩砕掌を放ち、ここにきて予想外の一撃を受けた鉄哲は場外に飛ばされて気絶する。

 

 鉄哲が負けたのは残念だったけど、緑谷が岩砕掌を覚えたか……。これは緑谷の奴、一気に成長するかもな。

 

 岩砕掌や大地斬といったアバン流の「大地」の技は、動きの無駄を無くすことで相手に自分の攻撃力の全てを与えて破壊する力の技。それを緑谷が覚えたなら入学試験やUSJの時のように、個性の超パワーの反動で自分の体を壊す危険も下がるだろうし、個性の5%だけを使って身体能力を上げるフルカウルの出力も上がるはずだ。

 

 緑谷の成長が楽しみになってきて、先生が勇者の家庭教師として世界中を旅していた気持ちが少しだけ分かった気がした。

 

 次の試合は轟と塩崎の試合。

 

 轟は瀬呂との試合で見せた大規模な氷結攻撃を放ち、塩崎は髪のツルを使った地裂衝と海斬衝で轟の氷や冷気を切り裂き反撃をしようとする。

 

 しかし試合が進んでいくと冷気で塩崎のツルが凍りついて、更には彼女自身の動きも鈍くなった。そしてその隙をついた轟が塩崎に接近すると彼女の体を凍らせて試合は終了した。

 

 塩崎は惜しかったな。正直な話、塩崎の技量は轟に決して負けてないと思うが、個性の相性が悪すぎた。

 

 個性の相性次第では個人の力量の差もひっくり返すことができる。俺はそのことをこの試合と次の試合でよく知ることになった。

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