異世界帰りのヒーロー、アバンナイト   作:兵庫人

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むしろここからが本番だ

 第二回戦の第三試合はマキナと八百万の試合で、マキナが姿を表すと男子生徒のほとんどが彼女と目を合わすまいと視線をそらす。

 

 マキナの奴、爆豪との試合ですでに男子生徒達から天敵扱いされてないか?

 

 マキナと八百万は、二人とも個性で作り出したものを使って戦うタイプだ。違う点があるとすればマキナがキラーマシンのみしか作れないのに対して、八百万はどんな物でも作れるという点で、八百万が何を作るかで勝負の内容は大きく変わるだろう。

 

 ドラゴンクエストの異世界でマキナと何度と戦ってその力を知っていた俺は、試合が始まる前まで八百万には悪いと思うが、マキナが特に苦戦することなく勝利すると思っていた。しかしその予想は試合が始まってすぐに裏切られることとなった。

 

「いきますわよ、機械島さん!」

 

「………!?」

 

 試合が始まるとすぐにマキナはキラーマシンを、八百万は銃らしきものを作り出す。そして八百万が銃でマキナが中に入っているキラーマシンを攻撃すると、キラーマシンが痙攣をして明らかにダメージを受けている様子を見せた。

 

 マキナがあそこまでダメージを受けているってことは……電撃による攻撃か?

 

「電圧と電流を強化した特別製のテイザー銃ですわ!」

 

 俺の疑問に答えてくれたかのように八百万が作り出した銃について説明してくれた。

 

 テイザー銃って確か、導線付きの電極を飛ばして離れた相手を痺れさせる銃の形をしたスタンガンだったっけ? やっぱりあの攻撃は電撃……よくマキナの弱点に気付いたな。

 

 ドラゴンクエストの異世界で戦ったキラーマシンだった頃のマキナは、ゲームのキラーマシンと同様に直接攻撃以外の熱や冷気、魔法による攻撃が通じなかった。しかし一つだけ例外があり、それが電気による攻撃だ。

 

 どうやらキラーマシンの機体に使われている金属は銅以上に電導率が高いらしく、ドラゴンクエストの異世界でその事に気づいた俺は、何度も戦いを挑んでくるマキナ対策として、先生と共に魔王と戦った大魔道士の協力を得て一つの魔法を修得した。その魔法とは空から雷を降らせる、本来勇者にしか使えないとされている攻撃魔法ライデイン。

 

 ライデインはマキナとの戦いで最後まで通用していたが、その弱点は生まれ変わった今でも有効のようだ。

 

「そうか……! まきちゃんが作り出すキラーマシンは金属の塊。金属である以上は電気が通じる可能性は充分にある。こんな単純なことに今まで気づかなかったなんて……!」

 

「(デクと同じ意見なのはムカつくが、言われてみればそうだ。マキのキラーマシンにこんな分かりやすい弱点がありやがったのか)」

 

 聞き覚えのある声が聞こえてきたのでA組の観客席の方を見ると、緑谷がノートを書きながら、そして爆豪が悔しそうに歯ぎしりをしながらマキナと八百万の試合を見ていた。するとそこにどこか軽そうな感じのする金髪の男子生徒が口を開いた。

 

「機械島って、電気が苦手ってマジかよ? だったら俺でも機械島にもしかしたら勝て「ああっ!? 寝言は死んでからぬかせや、クソアホ!」何キレてんだよ、爆豪!?」

 

 金髪の男子生徒の言葉を爆豪の怒声が遮る。

 

 俺も爆豪の意見に賛成だ。確かにマキナは電撃が弱点だが、それだけで勝負がつくなら俺はドラゴンクエストの異世界で彼女に手を焼かされることはなかった。

 

 ……むしろここからが本番だ。

 

「ふ、ふふふ……! あっははははははははははははっ!」

 

 突然試合会場から狂ったような笑い声が聞こえてきた。笑い声の発生源はキラーマシンの中で、戦っている八百万だけでなく観客達もがキラーマシンから聞こえてくるマキナの笑い声に驚きを隠せないでいた。

 

「え? え? これ、まきちゃんの声……?」

 

「マキの奴が笑った、だと……!?」

 

 マキナの幼馴染みである緑谷と爆豪は、どうやらマキナの笑い声を聞くのが初めてだったらしく、信じられないといった表情をしていた。だが俺はこのマキナの笑い声を何度も聞いたことがあった。

 

 始まったか……。マキナの奴、やっぱり前世と同じなのは弱点だけじゃなく「アレ」もかよ。

 

 俺がうんざりしているとキラーマシンからマキナに声が聞こえてきた。

 

「ダメージを負う感覚、痛み……! それも弱点である電撃による痛み! 戦いで痛みを負うの久しぶりです! ええ、いい! いいですよ、八百万さん! やっぱり戦いとはお互いが痛みを感じてからが本番ですよね!」

 

「ええ……!?」

 

 普段の姿からは想像できないハイテンションで話すマキナに八百万は戸惑っているようだったが、その気持ちはよく理解できる。

 

 ドラゴンクエストの異世界で初めて会った時のマキナは何の感情も持たない機械だったが、何度も俺と戦っているうちに闘争心が目覚め、気がつけばより激しい戦いを追い求める戦闘狂のような性格になっていたのだ。そしてその性格がさっきの八百万の電撃によって火がついてしまったわけだ。

 

 今のマキナは、ドラゴンクエストでも屈指の凶暴性を持つバーサーカーがストレスの溜まった小型室内犬に見えるほどの、スーパーデンジャラスバーサーカーだ。

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