[マキナside]
自らが作り出したキラーマシンの内部でマキナは、八百万のテイザー銃による電撃を受けながら楽しそうに笑っていた。
これが絶縁処理が施された
(不利な状況での戦い……まるで『あの人達』みたいじゃないですか)
マキナは心の中で呟くと過去の、前世での記憶を思い出す。
前世のマキナは、ドラゴンクエストの異世界で世界征服を企む魔王軍によって作られた意思を持つキラーマシンであった。そしてそこで彼女は魔王軍に挑む勇者の一行と何度となく戦った。
マキナは最初、勇者の一行の行動が全く理解できなかった。何故この人間達は、自分達より圧倒的に実力も戦力も上の相手に勝算が無い戦いを挑むのだろうと。
しかし勇者の一行はマキナの予想を反して何度も自分を含めた魔王軍の猛攻を跳ね除け、戦いの最中で更なる力を身につけて、最後には魔王軍の頂点に立つ大魔王を打ち倒した。そんな勇者の一行の戦いぶりを、何度倒されても復活して戦いを挑むことで間近で見ていたマキナは、次第にこう思うようになった。
凄い、と。
そして羨ましい、と。
最初は意思はあるものの感情がなかったマキナだが、何度も倒されては復活して勇者の一行と戦っているうちに、より激しい戦いへの渇望と強者への敬意を持つようになった。
最後の戦いで勇者の一行の一人で、初めて戦った魔法戦士との最後の戦いで敗れ、その後にこの世界で一人の人間として生まれ変わった幸運に感謝した。命を拾ったことではなく、勇者の一行のように一から強くなっていける存在に生まれ変わったことに。
だからマキナは幼少の頃から自分を鍛え続けた。かつて自分を倒した魔法戦士や、それの仲間である勇者の一行にも勝てるように。
だがそんな常軌を逸したトレーニングを見てマキナの周りにいる同年代の子供達は彼女達を怖がり離れていった。自分から離れない幼馴染みも二人いたが、その二人もマキナが望む激しい戦いを繰り広げる好敵手にはなり得なかった。
しかし今、マキナはこの世界に生まれ変わって初めて「苦戦」と言うべき状況に遭遇した。八百万の実力は前世で戦った相手と比べると遥かに劣るが、それでもこうして電撃という弱点を的確に突いた相手はこの世界では初めてで、それが彼女の闘争心に火を点けた。
「さあ、続けましょう戦いを! お互いの限界を超えた激しい戦いを!」
「……! 言われなくても!」
マキナの言葉に返事をした八百万はテイザー銃を操作して更なる電撃を与えようとするのだが、それより先にマキナが先の電撃によるダメージを感じさせない動きを見せる。
「甘い!」
「………っ!?」
マキナが乗るキラーマシンは右手に持つ剣を振るいテイザー銃の導線を切り裂くと八百万へと向かって走り出す。
「さあ、次は何を出しますか? また新しいテイザー銃を作り出しますか?」
「その前に……!」
迫りくるキラーマシンを前に八百万が小さな筒状のものを創造すると放り投げると、筒状のものから大量の煙が出て彼女の姿を覆い隠した。
(煙幕? さっきその前にと言っていたのはこれの事? では今のうちに新しいテイザー銃を作って……?)
(機械島さんの動きが止まりました。今のうちに……!)
煙幕の中で八百万はその場で立ち止まり、自分を探すキラーマシンを見て新しい武器を創造しようとする。しかし新しく作る武器はテイザー銃ではなく、それよりはるかに大きな大砲。
(テイザー銃ではダメージを与えられても致命傷にはならない! でしたら高火力の大砲の一撃で一気に場外へ押し出す!)
八百万の個性は大きな物を創造するのに若干の時間を要する。その為に彼女は煙幕を作り、自分が再びテイザー銃を作ると勘違いさせて大砲を作る時間を稼いだのだった。
(狙いは完璧! 機械島さんはまだ気づいていないはず! 今ですわ!)
八百万は完成した大砲の狙いをキラーマシンの背中に向けると砲弾を発射する。しかしそれと同時にマキナが乗るキラーマシンが背後を振り返り左腕のクロスボウから矢を発射した。
キラーマシンが放った矢は、八百万の砲弾を打ち砕くとそのまま彼女の隣にある大砲も破壊して、その衝撃によって八百万の体が吹き飛ばされる。
「きゃああっ!?」
「やはりその手できましたか。テイザー銃で戦闘不能にさせるのが困難だと分かれば、貴女なら場外を狙ってくると思っていました」
八百万はキラーマシンのクロスボウによって大砲を破壊された衝撃で気絶しており、マキナは気を失っている彼女に語りかける。
「もう勝負がついてしまったのは残念ですが、貴女にも興味がわいてきました。私が興味を持ったのはケントと出久、あとついでに勝己に続いて貴女で四人目です」
マキナが八百万に向けて口にしたのは、マキナの中で最大級の賛辞であった。
あとちなみに台詞の途中で観客席から「ついでって何だ! ついでって!」という幼馴染みの声が聞こえた気がしたが、マキナはそれを華麗に聞き流した。