マキナと八百万の試合が終わり、次は俺と拳藤の試合だ。
俺からアバン流牙殺法を習っている拳藤は、俺の実力を完全ではないがある程度知っている為、最初から完全な戦闘態勢でこちらを見てきている。
「黒岸。アンタの力は知っているけど、私だって負ける気はないからね。全力で行くよ!」
「ああ、分かっている」
拳藤の言葉に頷き俺も拳を握りアバン流牙殺法の構えをとる。
拳藤は俺の弟子になるが、だからといって油断するつもりはない。それにこれは言っていないが、この試合は彼女にとっての「試験」でもある。
そう、拳藤にアバン流の「大地」の技と「海」の技に続く第三の必殺技、「空」の技を教えるかどうかの試験。
現在俺がアバン流を教えているのは拳藤と鉄哲、塩崎の三人だが、この三人には「空」の技の存在すら教えていない。教えていない最初の理由は、アバン流の全てを教えていいか見極めがついていなかったからだが、今は違う理由でそう簡単に教えられずにいた。
これは俺の考えで確証はないのだが、恐らくアバン流の「空」の技は「個性そのもの」を攻撃し得る技なんだと思う。
俺がそう思うようになった切っ掛けはUSJにヴィランの集団が襲撃してきた時、黒い霧のヴィランが放った黒い霧を空裂斬で霧散させたことだ。あの時はとっさの行動だったが、後にそれを不思議に思い「空」の技を使う際の、心の眼で相手の気配を探る状態で周りを観察してみると、何となくだが相手の気配に重なって「個性そのもの」も感じられるのが分かったのだ。
更に先日、相澤の個性の詳しい内容について質問してみたら「人体以外のプラスアルファを個性因子として、その個性因子を一時的に停止させる個性」という説明を受け、俺は個性因子には「核」のようなものがあって「空」の技ならその核に攻撃できる可能性があるのではと考えた。
個性そのものを攻撃してもし破壊する事が可能だったりしたら、それは世界総人口の八割が何らかの個性を持つこの超人社会に、俺が使う魔法以上に大きな影響が出るだろう。元々アバン流の「空」の技は正義の闘気を放つ技なので、邪な考えを持つ人間には使えないのだが、それでも教える人間は選ばないといけないと思う。
だからこその試験だ。まだ付き合いは短いが、それでも拳藤達が「空」の技を私的に使う人間ではないのは分かった。後は「空」の技の存在を知って、力ずくでも聞き出そうとしてくる敵から身を守れる力があるかどうか。
俺だってどんな敵にも負けないなんてとても言えないが、それでも拳藤が「空」の技を知るに相応しい実力を持っているかどうか、この試合で確かめてみようと思う。
……だけどそれはともかく、アバン流刀殺法を編み出した先生は本当に色々と規格外だと思う。代々学者の家系だと言っていたけど、剣以外の武器にも応用可能な魔王すら倒す武術や様々なマジックアイテムを発明するだなんて、凄いとしか言いようがない。
大魔王も、世界征服の第一歩として先生の抹殺を企むのも納得である。