実技演習試験にヴィラン役として出てくる四種類のロボットの三種類は、1ポイントから3ポイントと強さに応じたポイントを倒した時に加算される。そして残った一種類は正体が不明な上に倒しても加算されるポイントが0ポイントの、所謂「お邪魔キャラ」だと入試の説明時にプレゼントマイク先生が言ってた。
実技演習試験が始まってからすでに三十分以上が経ち、二十体以上のロボットを破壊したのだが、倒したのは全て倒したらポイントがもらえる三種類のロボットばかり。0ポイントのロボットは一体も見つからなかった。
「試験を邪魔されないのは助かるけど、こうも見当たらないと少し気になる……なっ!?」
俺が周囲を見回しながら呟いたその時、突然地面が大きく揺れて遠くから何かが破壊される音が聞こえてきた。音がしてきた方を見るとそこには、ビルよりも大きなロボットがビルを次々と積み木を崩すように破壊しながらこちらに近づいて来ていた。
「あれが0ポイントのお邪魔キャラ……?」
新しく現れたロボットは、明らかに俺達が今まで倒した三種類のロボットとは比べ物にならないくらい巨大で強力な存在だった。しかも倒しても加算されるポイントは0で戦う旨味が全く無い。なるほど、確かにこれは「お邪魔キャラ」だ。
「さてどうしようかな?」
他の受験生達が巨大ロボットに背を向けて逃げていく中で俺は立ち止まって呟く。
確かに大きくて強そうではあるが、異世界で見た大魔王の動く城に比べたら全然迫力がない。倒すべきか、あれを無視して更にポイントが加算されるロボットを探しに行くべきか考えていた時、俺の目にある光景が映った。
それは巨大ロボットが破壊したビルの破片に足を取られて倒れている女性の受験生の姿。そしてその女性の受験生に向かって進む巨大ロボットの姿。
「マズい! ……っ!?」
俺は女性の受験生を助けるべくあの巨大ロボットを破壊しようとしたが、それより先に行動に出た者がいた。俺の目の前で、巨大ロボットに向かって常人を遥かに超えたジャンプをしたのは、試験が始まる直前に話しかけてきた受験生、緑谷出久だった。
「SMASH!!!」
『『………!?』』
緑谷が気合いの声と共に放った右拳は一撃で巨大ロボットを破壊し、それを見た俺を含めた受験生全員は驚きのあまり声を失った。
あれが緑谷の個性か? 多分身体能力を強化する個性だと思うけど、あそこまでの破壊力は珍し……いや、待て?
そこまで考えたところで俺は、空中にいる緑谷の異変に気づく。先程巨大ロボットを一撃で破壊した緑谷の右拳なのだが、明らかに右腕ごと骨が完全に折れていて、その激痛で苦しみながら地面に落下している緑谷の姿は、とても着地どころか受け身も取れるようには見えなかった。
「っ! トベルーラ!」
このままだと危険だと判断した俺は魔法を使って空を飛び、空中で緑谷の体を抱きとめる。
「……? 君は、黒岸くん?」
「そうだ。巨大ロボット退治、お疲れ様。……ベホマ!」
俺は緑谷に返事をするとすぐに回復魔法で、折れた緑谷の右腕を回復させた。緑谷とは試験合格をかけたライバル同士だが、女性を守るために負傷した右腕を治すくらいのことはしてもいいだろう。
「え? えええっ!? 腕っ! 僕の腕が一瞬で治った!? 一体どうして!?」
ベホマの効果で完全に折れていた右腕で完治したことに緑谷は面白いくらいに驚き、それを見た俺は思わず少し笑ってしまった。