『ちょっ……!? 何じゃありゃあっ!? 機械島がキラーマシンに変身するのは知っているけど、黒岸が全身鎧を着た戦士……まるで初代ドラクエの主人公に変身したのはどういうことだ?』
俺が鎧の魔盾を全身鎧に変形させて装着すると、実況席にいるプレゼントマイク先生の驚きの放送が聞こえてきた。
『だから生徒の個性くらい把握しておけと……。まあいい、観客も分かっていないみたいだし、二人の個性を紹介しておけ。……ほらよ』
『サンキュー、イレイザー!』
同じく実況席にいる相澤先生が俺とマキナの情報が記されている紙をプレゼントマイク先生に渡すと、それを読んだプレゼントマイク先生が俺とマキナの個性を説明する。
『機械島巻菜! 個性「自動鎧」!
自動で動く鎧を創造してそれを操る! だけど何故か作る鎧は全てドラクエのキラーマシン!
黒岸健人! 個性「魔法戦士」!
戦士のような健康で強靭な肉体を持って戦士の装備を呼び出し、更には魔法のような事も出来る! ただし魔法を使うにはドラクエの呪文を唱える必要がある!』
『そういうことだ。あの鎧や剣は黒岸の個性で呼び出したもので、恐らく最初に機械島がミッドナイト先生に渡したのは、それの使用を許可する書類だろう』
『……ん? ちょっと待てよイレイザー? あのドラクエ装備が個性で呼び出したものだったら、機械島のキラーマシンと同じで、いちいち許可を取る必要無くね?』
俺とマキナの個性を説明したプレゼントマイク先生だったが、相澤先生の言葉に疑問を口にする。
『機械島のキラーマシンや八百万の武器は「個性で作り出されたもの」でつまり個性の延長だ。しかし黒岸の装備はすでに別の場所にあるものを「個性で呼び出したもの」で個性の延長にするかサポートアイテム扱いにするか線引きが難しいんだ。無論、機械島と黒岸の二人が同意してるなら個性扱いでもいいんだが、この場合は横から余計なことを言われないために書類を用意したんだろう』
相澤先生が言ったことは全て事実で、今の説明によって観客のほとんどが納得したように頷いているのが見えた。
ありがとうございます、相澤先生。お陰でマキナとの戦いに集中できそうです。
俺は心の中で相澤先生に礼を言うと、目の前にいるマキナのキラーマシンを見た。
お互いに戦闘体勢を整えた黒岸とマキナの二人。最初に行動を開始したのはマキナだった。
マキナの乗るキラーマシンは左腕のクロスボウの狙いを黒岸に向けるとためらうことなく装填されていた矢を放ち、黒岸は左腕の盾で矢を舞台に叩き落とすとすぐさまキラーマシンに向かって突撃をする。
しかしそれはマキナも最初から想定していたようで、キラーマシンは剣を持つ右腕と上半身を高速で回転させ、人間では不可能な軌跡の剣撃で黒岸を向かえようとする。
黒岸が左腕の盾で攻撃を防ぎ右手のはかいのつるぎで反撃するのに対し、マキナのキラーマシンは全ての攻撃を装甲で受け止め防御を捨てた攻撃を繰り出す。はかいのつるぎがキラーマシンの装甲に、キラーマシンの剣が鎧の魔盾にぶつかり合う度に火花と激しい音が起こり、試合を見ていた観客達全員を圧倒する。
そしてそれは「この世界」のマキナの幼馴染みである爆豪も同様であった。
(マキの奴とドラクエ野郎、あんなに強かったのかよ……!? しかも二人ともまだ本気を出してるように見えねぇ……いや、あれは『本調子』じゃねぇのか?)
爆豪が見ている前で繰り広げられている黒岸とマキナのキラーマシンの攻防は、回数を重ねるごとに激しさと動きの「キレ」が増していき、爆豪にはその姿が長い間実戦をしていなかった熟練の戦士達が少しずつ感覚を取り戻していくように見えた。
(だいぶ『取り戻せた』な)
マキナが乗るキラーマシンと戦いながら俺は心の中で呟いた。
ドラゴンクエストの異世界から帰ってきた俺は、若返った体を一から鍛え直してきたが、それでも長い間実戦から離れたことで戦闘の勘が鈍ることからは避けられなかった。
しかしこの最近のマキナとの訓練、そして今こうして彼女の乗るキラーマシンと戦うことで俺は、戦闘の勘を少しずつ取り戻せているのを感じていた。……最も、それはマキナも同様みたいだが。
とにかく、今なら「あの技」も確実に決められるはずだ。
体の動きの「キレ」を取り戻したと感じた俺は、左肩を前にした半身の構えを取り、左腕の盾と右手のはかいのつるぎを胸と腹の前に持っていく。
「マキナ……この技、覚えているか?」
「……その構えは?」
俺の構えを見てマキナが乗るキラーマシンが動きを止めた瞬間、俺はキラーマシンに向かって突撃をして、ドラゴンクエストの異世界で編み代した自分だけのオリジナル技を繰り出した。
まず左腕の盾を高速で横薙ぎに振るいキラーマシンの剣を弾き、それによって体勢が崩れたキラーマシンの胴体に向けて渾身の力を込めたはかいのつるぎを叩き込む!
「斬竜双撃!」
今繰り出したのは俺が先生から一人前と認められた後、一人で世界中を周り武者修行の旅をしていた時、とある山奥で出会った強力なドラゴン族のモンスターとの戦闘で編み出した技だ。
斬竜双撃はまず海波斬の速度で振るった左腕の盾で相手の攻撃と体勢を崩し、その直後に右手のはかいのつるぎによる大地斬を叩き込むという二段構えの攻撃で、これによって当時出会ったドラゴン族のモンスターを退治したことから俺はこの技に今の名前をつけたのだった。
斬竜双撃によってマキナのキラーマシンは胴体の装甲の大部分を砕かれて舞台に倒れた。並大抵の相手だったらこの一撃で終わるのだが、相手が相手だけに距離を取って様子を見ていると、案の定マキナは俺がキラーマシンの装甲を砕いて開けた穴から出てきた。
「ええ、もちろん覚えていますよ。斬竜双撃、懐かしい技です。そしてケント。貴方が昔の強さを着実に取り戻しつつあるのは非常に喜ばしい…!」
キラーマシンの中から姿を現したマキナは額から血を流していたが、それに構うことなくまるで恋をする乙女のような、花のような笑みを浮かべていたが、俺にはその笑みがただ恐ろしく見えた。
全く相変わらずの戦闘狂っぷりだな。だからコイツは苦手なんだ。