異世界帰りのヒーロー、アバンナイト   作:兵庫人

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そんな時代、未だ到来してねぇよ

 トーナメントもいよいよ決勝ということで、観客席にいる観客達だけでなく中継をテレビで見ている視聴者達も舞台に注目をする。そんな時に実況席にいるプレゼントマイク先生の放送が聞こえてきた。

 

『さあ、トーナメントもこれで最後だ! それじゃあ早速選手を紹介するぜ!

 まずは見た目は超地味でオーラ0! だけど内に秘めた実力は本物! ハイパワー&ハイスピードで敵を抹殺! 一年A組ヒーロー科、緑谷出久!』

 

 プレゼントマイク先生に紹介されながら舞台に上がる緑谷の表情は緊張しているが必要以上に気負ってはおらず、入学試験の時に見えた頼りなさは大分無くなっていた。

 

 緑谷の奴、結構良い顔つきになってきたな。どうやらこの体育祭で精神的に成長(レベルアップ)したみたいだな。

 

 ……しかし緑谷が出てきたってことは、次は当然俺の出番だよな? ……行きたくないなぁ。

 

「どうしたんだよ、相棒? まさか今更ビビってんじゃねぇだろうな?」

 

 俺が内心で舞台に出るのを嫌がっていると、はかいのつるぎが俺を急かしてきた。

 

 一体誰のせいで俺がこんな思いをしていると思っているんだよ? ああ、もう! 行けばいいんだろ!? 行けば!

 

『次は第一種目、第二種目共に予想外の方法で一位で突破! 本戦もこちらの予想を超える実力を見せつけてきた、この大会の台風の目! 一年B組、黒岸健人……って、アレ!?』

 

 俺がヤケクソ気味に舞台に出ると、プレゼントマイク先生が疑問符を口に出して観客席からもざわめきが生まれた。だけどそれは仕方がないと俺は納得すると、自分の隣に視線を向ける。

 

 

 そこには「ドラゴンクエスト3に登場する女戦士」の姿があった。

 

 

 外見の年齢と背の高さは俺と同じくらいで、外国人のモデルかと思うくらい整った顔立ちと腰にまで届く金髪。

 

 年齢とは不釣り合いなくらい豊かに育って歩く度に揺れる乳肉と尻肉、鋼のように鍛えぬかれた筋肉と、女性の魅力と戦士の逞しさを併せ持ち、更には全身に無数の刀傷と入れ墨が刻まれた肉体。

 

 頭部の大部分を被う白い兜と、下着のような外見をして体の極一部しか守る機能を持たない、いわゆる「ビキニアーマー」と呼ばれる兜と同じく白い鎧。

 

 その姿はいくつか違う点はあったが、それでもドラゴンクエスト3の女戦士としか言いようがなかった。

 

『え? え? 何アレ、コスプレ? 黒岸がドラクエの呪文を使えるのは知っているけど、何でドラクエのコスプレ美少女が一緒に入場してくんの?』

 

 実況席からプレゼントマイク先生の明らかに困惑した口調の放送が聞こえてくるが、これはこの場にいる全員の気持ちだろう。そして緑谷も俺の隣にいる女戦士を見て困惑したように首を傾げる。

 

「アレ? その人って確かさっき、黒岸君の控え室にいた……一体誰?」

 

「おいおい、緑谷? 今お前何て言った? 俺に向かって誰って聞いたか?」

 

 緑谷の呟きに女戦士がからかうような笑みを浮かべて話し出した。

 

「まったく冷てぇ奴だな! お前とはUSJだけじゃなく、この最近の訓練でも何回も顔を合わせていたってのに! そんな冷てぇことを言われたら、いくらオレ様でも泣いちまうかもなぁ?」

 

「え? USJや訓練で……!?」

 

 女戦士の言葉に緑谷は更に混乱した様子になり、俺は思わずため息を吐いた。

 

 コイツ、分かってて緑谷をからかってやがるな。

 

「それくらいにしてやれよ」

 

「はっ! 分かってるって! ちょっとからかっただけだっつーの。……おい、緑谷。これなら分かるだろ?」

 

 俺が横目で睨んで言うと女戦士は肩をすくめて返事をした後、緑谷に向けて自分の左腕を差し出した。すると女戦士の左腕は人間の腕から「切先が斧の形をした剣の刀身」にと変形して、それを見た緑谷が驚きで目を見開く。

 

「そ、それは! 君、もしかして……はかいのつるぎなの!?」

 

「その通り! 良くできました!」

 

 緑谷の言葉に女戦士は左腕を剣から人間の腕に戻すと盛大に拍手をしてみせた。

 

 緑谷が言った通り、この女戦士は俺が長年愛用してきたはかいのつるぎが人間の姿になったものだ。何でも喋るようになったついでに変身もできるようになったらしく、その理由はやはり本人(?)にも分からないらしい。

 

 ……正直な話、はかいのつるぎがいきなりドラゴンクエスト3の女戦士に変身した時は俺も本気で驚いた。驚きのあまり半分くらい放心状態となり、はかいのつるぎの「次はせっかくの決勝戦だからオレ様も一緒に出場するぜ!」という無茶な提案に思わず頷いてしまったくらいだ。

 

「えええっ!? 本当にはかいのつるぎなの!? な、何でいきなり人間の女の子に変身しているの!?」

 

 至極最もな緑谷の疑問に、はかいのつるぎは呆れたような表情となって肩をすくめる。

 

「おいおい? 何を驚いているんだよ、緑谷? 戦艦やら戦車やらの兵器が女になって自分の乗り手と仲間になったりエロい関係になるのが当たり前のこの時代じゃ、剣がドラクエの女戦士になるなんて珍しいことじゃないだろ?」

 

「そんな時代、未だ到来してねぇよ」

 

 はかいのつるぎの言葉に俺は思わず突っ込みをいれた。そんな時代、スマホの中にしかやってきてないからな。

 

 

 

 

 

「おいおいマジかよ!? あの美人でエロい女の子、本当に黒岸の剣なのかよ!?」

 

「黒岸がゲームみたいなキャラなのは知っていたけどよ、まさか剣が女になるなんて、まるでゲームかアニメの世界じゃん。……ちょっと羨ましいかも」

 

「ちょっとどころじゃねぇよ……! 剣が女の子に変身しただぁ? しかも変身したら超美人で、八百万のヤオヨロッパイ並みのおっぱいを持ったドラクエ女戦士でしただぁ? ……………ふっっっざけんな、黒岸ぃ! ちっくしょう! 許っ羨!!」

 

 ……気のせいか、何処かで血の涙を流した男の叫び声が聞こえた気がした。

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