異世界帰りのヒーロー、アバンナイト   作:兵庫人

50 / 61
緑谷の奴、考えたな

『……確かにマイクの言う通り無茶苦茶な推測だが、それだけで切り捨てるわけにもいかないな。……緑谷、後日にリカバリーガールや病院に行って詳しく個性を調べてもらえ。いいな?』

 

「は、はい!」

 

 実況席から聞こえてくる相澤先生の言葉に緑谷が返事をする。よし、これでしばらくは緑谷の個性を誤魔化せるな。

 

「準備はいいか、緑谷? それじゃあ、続きをしようか?」

 

「……うん。分かったよ、黒岸君。行くよ!」

 

 そう言うと緑谷は早速黒鞭をこちらに向かって飛ばしてきて、俺はそれを避けたりはかいのつるぎで切り払おうとするのだが、はかいのつるぎの刀身は黒鞭をすり抜けてしまう。どうやら帯状のエネルギーである黒鞭は、対象を掴むとき以外は触れることができないみたいだ。

 

 こちらからは触れることは出来ないが向こうはこちらに触れて拘束することが出来て、しかも遠くに伸ばせば移動にも利用できる黒鞭。なるほど、確かにあの革ジャンの男が自慢するだけのことはある。派手さはないが便利ないい個性だ。しかし……。

 

(緑谷の奴、黒鞭に振り回されてねぇか?)

 

 頭の中にはかいのつるぎの声が聞こえてくる。

 

 手から放たれる黒鞭の勢いは凄まじく、それを何とか制御しようとしている緑谷の姿は、はかいのつるぎの言う通り「個性に振り回されている」という表現そのものであった。そしてそれは、俺やはかいのつるぎだけでなく、緑谷自身も感じているようであった。

 

「くっ……! 黒鞭の制御が予想以上に難しい! いや、そんなことは最初から分かっていたはずだ。今日始めて使えるようになった個性をいきなり使いこなせるなんて、そんなことできるはずがないじゃないか。でもこれからどうやって戦う? 黒鞭の制御ばかりに気を取られていると今度はフルカウルが解けてしまう。黒岸君を前にフルカウルが一度でも解けたらその時点でおしまいだ。やっぱりここはフルカウルをメインに、黒鞭をサブにして戦うべき。そうなれば僕が取るべき戦い方は……」

 

(おい、緑谷の奴がまたバグったぞ?)

 

 そうだな。今日二回目のブツブツ芸だ。……気を引き締めろよ。

 

(おうよ)

 

 こちらを見ながら小声でブツブツ呟き始めた緑谷を見て、俺とはかいのつるぎは軽口を叩き合いながらも意識を緑谷に集中させる。

 

 緑谷は普段から考えて作戦を立てて戦うタイプで、戦闘の最中にああやってブツブツ呟き出した緑谷は、どんな結果になるかはともかく必ず「何か」をしてくる。俺もはかいのつるぎも、それが分かっているから緑谷に意識を集中させるのだった。

 

「……はぁっ!」

 

 考えがまとまったのか、ブツブツ呟くのを止めた緑谷はフルカウルの超スピードでこちらへ突撃してきて、黒鞭を出して漂わせている右拳を繰り出してきた。

 

 何だ? 黒鞭の制御は諦めたの……!?

 

 緑谷の拳を盾で防ごうとした瞬間、俺は突然嫌な予感を感じて、横に飛んで緑谷の拳を避けた。すると緑谷の拳は舞台の石畳を砕き、手から出ている黒鞭が独りでに伸びて石畳の破片を捕らえた。

 

 黒鞭による自動捕縛!? 緑谷の奴、黒鞭を攻撃の副次効果にしたってことか?

 

 確かに拳による攻撃を当てた瞬間に黒鞭を伸ばせば対象の捕縛は容易だし、相手に距離を取られることもなくなる。黒鞭を飛ばして離れた相手を拘束するのが難しいから、「飛ばす」という選択肢を捨てて「殴るついでに拘束する」という戦法に変えたわけか。

 

 緑谷の奴、考えたな。

 

(……ああ、確かに緑谷はよく考えたとおもうけどよぉ……。何か、どこかで見たような気がするのはオレ様だけか?)

 

 はかいのつるぎの言葉には俺も同感だ。俺も今の緑谷の戦法と似たような戦法を知っているような気がする。

 

 具体的にはどこかの戦闘好きな手品師と同じ能力な気が……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。