(それでどうするんだ、相棒? 今の緑谷はちょっと厄介だぜ?)
俺が初めて使う黒鞭を何とか攻撃に組み込もうとしている緑谷の姿に感心していると、はかいのつるぎが話しかけてきた。
はかいのつるぎの言う通り、超パワーと超スピードで攻撃してくる上に攻撃と同時に黒鞭で拘束をしてくる今の緑谷は中々厄介ではある。しかしそれは接近戦に限った場合の話で、接近戦で厄介だったら接近戦以外で戦えばいいだけの話だ。
「トベルーラ」
「そんなっ!?」
俺が呪文を唱えて上空へと飛ぶと、緑谷は目を見開き顔色を青くした。だがそれは仕方がないだろう。何しろ黒鞭のお陰でようやく勝算がほんの僅かだが見え始めたというのに、俺が接近戦から空中戦に移ったせいでせっかくの勝算が消えてしまったのだから。
だが緑谷、悪いけど俺はここで攻めの手を緩める気はないからな? トーナメントもこれで終わりなのだから、最後は派手にいかせてもらう。
俺は頭上に魔力を集めて光の玉を作り出すと、舞台にいるミッドナイト先生と緑谷に声をかけた。
「ミッドナイト先生! 危ないから舞台の外に出てください! 緑谷も外に出てもいいぞ? その場合は場外になるけどな」
「……!」
ミッドナイト先生が舞台の外に出て、緑谷が焦った表情となりながらも舞台に残ったのを確認した俺は呪文を唱えた。
「
俺が呪文を唱えるのと同時に光の玉は舞台に向かって落ちて行き、その直後に大爆発が起こる。
(おい、相棒!? イオナズンは流石にやりすぎなんじゃねぇか? 緑谷の奴、死んだぞ!?)
はかいのつるぎの講義の声が聞こえてくるが俺はそれに首を横に振った。
安心しろ、威力は抑えているよ。イオナズンって言っても、範囲が広いイオラ程度だ。
(いや、それにしてもやりすぎなんじゃ……何っ!?)
はかいのつるぎの言葉の途中で、俺の左足に黒いエネルギーの帯が絡み付いた。そしてその帯の先には、ボロボロになりながらもしっかりとこちらを見据えて向かってくる緑谷の姿があった。
緑谷の奴、イオナズンが爆発する瞬間にフルカウルの超パワーでジャンプしたみたいだな。しかも上手くイオナズンの爆風を利用しているだけじゃなく、黒鞭を伸ばして俺の左足を捕まえているし、やるじゃないか?
(やるじゃないか、じゃねぇだろ。相棒、お前最初からこれを狙っていやがったな? ったく! 敵に塩を送りやがってよぉ! そんな所、お前の師匠に似ているぞ?)
はかいのつるぎの呆れた声が聞こえてくるが、先生に似ているってのは俺にとってはこれ以上ない褒め言葉だ。……そして、そろそろ終わりにしよう。
こちらに向かってくる緑谷はフルカウルの力の全てを右拳に集めて渾身の一撃を繰り出そうとしており、俺もそれを迎え討つべく自らが編み出した技の構えを取る。
「SMASH!!」
「斬竜双撃!」
俺と緑谷の技はほぼ同時に繰り出され、次の瞬間、戦いの決着が着いた。
「……リカバリーガール? 一体どうしたんですか?」
トーナメントの決勝戦が終わり、俺が控え室に戻ろうとすると、そこにリカバリーガールが俺を待ち構えていた。
「黒岸君、優勝おめでとう。よく頑張ったね」
通路で待っていたリカバリーガールが俺に労いの言葉をかけてくれる。リカバリーガールの言う通り決勝戦で勝ったのは俺で、その事を褒めてくれるのは嬉しいのだが、なんだかリカバリーガールの様子がおかしいのが気になる。
「……すまないが黒岸くんや。今から私と一緒に付いてきてくれないかい?」
「え? いやでも、俺、これから表彰式が……リカバリーガール?」
リカバリーガールの言葉に俺がどう答えたらいいか分からないでいると、突然リカバリーガールが俺に向けて頭を下げてきた。
「そこをなんとか着いてきてくれないかね? ……実はあるヒーローがヴィランに命に関わる重症を負わされたって報せがきて、黒岸君のあの回復能力が必要になるかもしれないんだよ」
ヒーローが命に関わる重症!? しかもリカバリーガールが一生徒の俺に頼るだなんて、どれだけ切羽詰まっているんだよ?
リカバリーガールの言葉を聞いた瞬間、俺の中で躊躇いと悩みが消えた。確かに表彰式は大切だが、それでもヒーロー……人の命の方がもっと大切だ。
「分かりました。行きます。それでそのヒーローは誰なんですか?」
「助かるよ……。そのヒーローの名前は『インゲニウム』。一年A組にいる飯田天哉の実のお兄さんさ」