四月。雄英高校入学式。
新たな新入生が入学してくるこの日、一人の新入生の女学生が雄英高校にやって来た。
その女学生は長く伸ばした艶のある銀髪をツインテールにしており、瞳はルビーのように紅く、顔立ちはまるで芸術品の人形のように整っていた。背丈は同年代の女性に比べたらやや小柄だが、体型の方は同年代の女性より発育がいいモデル体型なのが制服の上からでも分かる。
こうして遠くから見るだけならば非常に美しい容姿をしている彼女なのだが、その性格と言動は非常に過激極まりなく、地元では「絶対に敵対してはならない女子」、「予測不能なホーミングミサイル」、「静岡県辺りの最終兵器」等と言った非常に物騒な二つ名をいくつも持っていた。
彼女の名前は機械島巻菜。
こことは別のドラゴンクエストの異世界で意思を宿していたキラーマシンだった前世を持つ、所謂「転生者」である。
「あっ、まきちゃん」
「出久ですか。おはようございます」
校門をくぐった所で巻菜は後ろから幼馴染みである緑谷出久に声をかけられて、後ろを振り返ってその姿を確認すると挨拶をする。その時の彼女は人形のような無表情であったが、幼馴染みで慣れている出久は気にすることなく巻菜に話しかける。
「うん、おはよう。そういえばまきちゃんってA組だったよね? 僕もA組だから一緒に行かない?」
「構いませんよ。それでは行きましょう」
「あっ? ちょ、ちょっと待って、まきちゃん」
巻菜は出久の言葉に頷くとそのままA組に向かって行き、その後ろを出久が慌ててついて行く。
「………?」
事前に雄英高校の地図を覚えていた巻菜は迷う事なく校舎の中を進んで行くのだが、自分の教室である一年A組の教室の手前まで来た所で彼女は突然足を止めた。
「まきちゃん? どうしたの?」
「出久。アレ、何だと思いますか?」
急に足を止めた巻菜に出久が声をかけると、彼女は廊下の隅を指差して、その先には布の塊のようなものが転がっていた。
「……え? 本当に何アレ? 寝袋、かな?」
巻菜に聞かれた出久が布の塊のようなものを見て言えば、確かにそれは人が中に入って眠る寝袋のように見えた。巻菜と出久が布の塊のようなものに近づくと、出久の言った通りそれは寝袋で、中には無精髭を伸ばした不健康そうな男が入っていた。
「………ん? 何だお前ら? 新入生か?」
「………」
寝袋の男は眠たそうに目を開いて巻菜と出久に声をかけるが、それに対して巻菜は無言で寝袋の男をしばらく観察した後に自分のスマートフォンを取り出した。
「……? おい。校内での携帯電話の使用は禁止だぞ」
寝袋の男は巻菜に注意するが、彼女はそれを無視してスマートフォンを操作する。
「…………もしもし警察ですか? 雄英高校の校舎に不審者が侵入しています」
「おい、ちょっと待て!?」
巻菜が連絡した先はまさかの警察。寝袋の男は驚いた顔となって上半身を起こして巻菜に声をかける。
「誰が不審者だ、誰が? 俺は相澤と言って、この雄英高校の教師だ」
「えっ!? 先生!」
「嘘ですね」
『『……!?』』
寝袋の男、相澤の言葉を聞いて今度は出久が驚いた顔をするが、その直後に巻菜が即答。一秒の間も置かずに相澤の言葉を嘘だと言う彼女に、相澤だけでなく出久も驚きで絶句する。
「一体どこの世界に自分の勤め先の学校の廊下で、しかも寝袋持参で寝る教師がいるのですか? それにその無精髭を伸ばした不健康そうな顔は明らかに不審者そのものです」
「顔は関係ないだろう、顔は? 廊下で寝ていたのはこの方が合理的だからで……」
「そんな話が信じられると思いますか? 警察にはもっと上手い嘘をつく事をお勧めします」
「いや、だから……!」
相澤は何とか自分が雄英高校の教師だと説明しようとするが巻菜はそれを認めようとしなかった。そんな二人の会話を聞いている緑谷は、巻菜と相澤のどちらが正しいのか分からなかったが、一つだけ分かることがあった。
(ああ、早速まきちゃんがやっちゃった……。これからもこんな調子で何かをするんだろうな……)