異世界帰りのヒーロー、アバンナイト   作:兵庫人

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嫌な予感的中

 インゲニウムの怪我をベホマで治した日の翌日。病院の精密検査を受けたインゲニウムは、身体に異常は見られないという結果が出て、無事にヒーロー活動を再開できるそうだ。

 

 何故それを俺が知っているかというと、その日にインゲニウム本人と弟の飯田を初めとする飯田家の家族全員が俺の家までやって来て、お礼の言葉を言うのと同時に報告してくれたからだ。飯田は涙を流しながら何度も俺にお礼の言葉を言い、インゲニウムも「このお礼は必ずさせてもらう。是非君がヒーローになる為の協力をさせてほしい」と言ってくれたのだが……このやり取り、前にもあったような?

 

 インゲニウムが回復したことはめでたい事だし、あのドラゴンクエストの異世界で学んだ事が人の役に立ったの嬉しいのだが、体育祭が終わってからは色々と大変だった。

 

 まずリカバリーガールとインゲニウムが運ばれた病院から「やっぱり私の後継にならないかい?」、「ヒーローになったら病院の医療スタッフになってほしい」というメールが来た。特に病院からは雇用体制の資料までも送られて来ていて……俺まだ学生だぞ? 色々と気が早すぎないか?

 

 そして表彰式には出れなかったが体育祭で優勝した事で、家族や親戚からの電話やメールが絶え間無く来るし、外に出れば色々な人からも声をかけられて買い物にもろくに行けなかった。

 

 正直学校で訓練をしたり授業をしている方がずっと気が楽で、生まれて初めて学校に早く行きたいと思った。

 

 

 

「それはまた贅沢な悩みだね、親友?」

 

 学校の授業が終わり、放課後の自主訓練中に俺が愚痴を言うと、それを聞いた物間が苦笑を浮かべた。

 

「僕も周りから声をかけられたけど、あれも将来プロヒーローになった時の人気に繋がると思ったら、むしろありがたいんじゃないかな?」

 

「確かにそうだが……それにしても限度があるって」

 

「まあ、黒岸の場合はそうかもね。今日聞いた黒岸の指名数は凄かったし」

 

 物間の言葉に俺が思わずため息を吐きそうになると、話を聞いていた拳藤が会話に加わってきた。彼女が言う指名数とは、簡単に言うとプロヒーローの下で実際に活動する体験学習でプロヒーローの方から来て欲しいと誘われた数の事で、俺の指名数は他のクラスメイト達と大差をつけて五千以上……つまり五千人以上のプロヒーローから誘われていたのだった。

 

「まあな……。あれだけの数から誰か一人だけ体験学習先を選ぶのも大変だよ。はぁ……」

 

「ははっ。やっぱり贅沢な悩みだね。……ん?」

 

「はぁ……」

 

 俺が体験学習の事で今度こそため息を吐くと、物間が笑った後で、少し離れた場所でため息を吐くマキナに気付いた。

 

「どうしたんだい、機械島? 君がため息だなんて珍しいね?」

 

「そうですか? ……実はヒーロー名が中々決まらなくて、正直困っています」

 

 物間に話しかけられたマキナが自分の悩みを口にする。

 

 相変わらず無表情なマキナだが、物間の言う通り珍しくため息を吐いているところをみると、それなりに悩んでいるのだろう。

 

 今日の授業でA組とB組は、体験学習の話をされた時にヒーローと活動する時のコードネーム、自らのヒーロー名を考えた。俺の場合はすでに「アバンナイト」というヒーロー名を決めていたし、他のクラスメイト達もそれほど悩むことなく自らのヒーローを決めたのだが、先生の話によると中々ヒーロー名を決められず、自分の名前をそのままヒーロー名にする生徒もいるらしい。

 

「でも意外だな。マキナだったら自分のなりたいヒーロー像とかがはっきりしていて、ヒーロー名もすぐ決まると思っていたんだけど?」

 

「いえ、ヒーロー名の候補は色々と考えていたのですけど、その全てがミッドナイト先生に却下されてしまいました」

 

 俺の言葉にマキナはそう返事をすると、何故自分のヒーロー名の候補が却下されたのか分からないとばかりに首を傾げてみせた。

 

 ……何だろう? ちょっと嫌な予感がしてきた。

 

「……ちなみにどんなヒーロー名を考えたんだ?」

 

「はい。まずはシンプルに『殺戮機械』。それを却下された後は『戦闘機械』、『虐殺機械』、『(ヴィラン)抹殺機』、『少女型殺戮機械』、『抹殺少女』、『挽肉製造機(ミンチメーカー)』、『処刑人』、『(デス)』、『斬撲射殺』、『デストロイヤー』等と色々考えたのですが全て却下されて……。特に一番自信があった『殺戮機械製造少女』も却下された時は少し落ち込みました……」

 

 嫌な予感的中。

 

 というかマジか? 本当にマキナの奴、今言ったのを自分のヒーロー名にしようとしていたのか?

 

『『……………』』

 

 そう思ったのは俺だけではなく、その場にいる全員が訓練を止めてマキナを指差し、彼女と同じA組の緑谷を見た。

 

「………」

 

 俺達がマキナを見ながら緑谷に視線を向けると、緑谷は疲れきった表情となって小さく頷くのだった。

 

 緑谷の奴……というかA組と先生方、本当に苦労しているんだな。

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