一年A組とB組が体験学習の説明を受けて自分達のヒーロー名を考えた次の日。その日の最初の授業はヒーローに関する条例等を学ぶヒーロー情報学で、それを担当するミッドナイトがA組の教室に入ってくると、マキナが声をかけてきた。
「ミッドナイト先生。いきなりですみませんが、ヒーロー名の候補があるので聞いてもらえませんか?」
『『………!?』』
マキナの言葉に、昨日のヒーロー名の候補を次々と出しては却下された彼女の姿を思い出し、ミッドナイトだけでなくA組の生徒達の表情が強張る。
「ま、また考えてきたのね……。それはいいことなんだけど……授業があるから手短にね?」
「分かっています。考えてきたのは一つだけですから」
マキナはそう言うと、昨日の授業で使っていたヒーロー名を書いて発表する板を取り出してミッドナイトに見せて、その板には次のようなヒーロー名が書かれていた。
強襲装甲ヒーロー「イージス」。
「あら?」
『『………!?』』
板に書かれていたヒーロー名が、昨日に比べてずっと「マトモ」であったことにミッドナイトが意外そうな声を出し、A組の生徒達が驚きの表情を浮かべる。そしてその様子を見て好印象だと判断したマキナはヒーロー名の意味と、それをつけた理由を説明する。
「イージスとは戦いの女神が装備していた鎧の名前だそうです。私が戦闘を得意としていること。個性が『自動鎧』で〝鎧〟繋がりであること。そして戦いの女神に関係する名前だったら縁起が良いことからこの名前にしたと言っていました」
「うんうん。発音も良い上に強そうだしとても良いと思うわ。……あら?」
マキナの思った以上に常識的な説明に、ミッドナイトは思わずテンションを上げて笑顔を浮かべるのだが、次の瞬間にある違和感を覚えた。
今の言い方だとマキナ自身ではなく、誰か別の人間が彼女のヒーロー名を考えたように聞こえて、それを聞いた緑谷が何かを思い出して口を開いた。
「ああ、それって、昨日黒岸君が考えてくれたヒーロー名だよね?」
緑谷の言葉にマキナが頷く。
「はい。言いやすいですし皆にも好評なようなのでケントには感謝しています。ちなみに強襲装甲ヒーローの部分は私のオリジナルですが似合ってますか?」
「あー……。うん。似合っていると思うよ……?」
((確かに似合っているけど、それのせいでヒーローというよりモビルスーツみたいな感じが……))
マキナの言葉に緑谷が微妙な表情で答え、そんな二人の会話を聞いていたA組の生徒の多くが心の中で呟いた。そして……。
「……チッ」
マキナと緑谷の幼馴染みである爆豪だけが面白くなさそうに小さく舌打ちするのであった。
(それにしても相棒も面倒見がいいよな?)
休み時間中。体験学習に向かうプロヒーローの事務所を決めようと、俺を示してくれたプロヒーローの名前や情報が記録されたタブレットを見ていると、はかいのつるぎが話しかけてきた。
急にどうしたんだよ? というか面倒見がいいって、何のことだ?
(とぼけるなよ。昨日、マキナのヒーロー名を一緒に考えてやったことだよ。相棒がマキナと協力したり悩みを聞いてやるなんて、あの異世界では考えられなかったよな。何だ? マキナに惚れたか?)
ふざけんな。そんなはずないだろう。確かに人間になったマキナは可愛いかもしれないけど、中身はキラーマシンのままなんだぞ? そんなのに付き合ったら体と命がいくつあっても足りやしない。俺は剥き出しの地雷原にダイビングする趣味なんてないんだよ。
(……それもそうか。中身はっていうか、個性を使ったらガワもキラーマシンに逆戻りするからな……)
俺の返事に納得してくれたらしく、はかいのつるぎはそれ以上この話題をしなくなり、俺が体験学習先のプロヒーローを探すの再開するとタブレットの画面に気になるヒーロー名を見つけた。そのヒーロー名とは……。
紳士ヒーロー、ジェントル・ジャスティス。