「ま、まあまあ……。エンデヴァーさん、もうそのくらいにしたらどうですかな?」
「ん? 貴様は確か……ジェントル・ジャスティスだったか?」
「ほう!?」
見るに見かねたジェントルがミルコとマキナに説教をしているエンデヴァーに話しかける。するとそれによって初めてジェントルに気づいたエンデヴァーが彼の名前を呼び、No.2ヒーローに名前を知られていることにジェントルが嬉しそうな表情となる。
「これは光栄だね。まさかエンデヴァーさんに名前を知られているとは」
「ああ。貴様は自分の活躍をネットで公表する変わり種としてある意味有名だからな。……しかしネットでヒーロー活動を公表するのは止めたほうがいいと思うぞ? 確かにヒーローは人気商売でもあるから自分の宣伝をする意味はあると思うが、規制の入った情報を流してしまう危険もあるからな」
「ホウ!?」
「ジェントル!?」
エンデヴァーの冷静な指摘にジェントルは嬉しそうな顔から一転、顔色を真っ青にすると胸に手を当てて膝をつき、ラブラバさんが慌ててジェントルの元に駆け寄る。
どうしよう? エンデヴァーの言葉が正論すぎてジェントルのフォローができないのだが?
「あれ? そこにいるのはアバンナイト君じゃないか?」
「アバンナイト君。君も来ていたのか?」
俺がジェントルをどう慰めようか考えたいると、後ろから聞き覚えのある声が俺をヒーロー名で呼んできた。後ろを振り返るとそこには、先日ベホマで傷を治療したヒーローのインゲニウムとその弟の飯田の姿があり、二人が俺のヒーロー名を知っているのは病院で俺が教えたからだ。
「この間はお世話になったね。お陰で助かったよ」
「ん? それはどういうことだ、インゲニウム? この少年がどうかしたのか?」
「えっ。ああ、それはですね……」
インゲニウムの言葉にエンデヴァーが聞くと、インゲニウムは重傷を負って俺に治療された時のことを話した。するとそれを聞いたエンデヴァーとミルコが興味深そうに俺を見てきた。
「ほう……。どんな重症も治せるとは凄い個性だな。……ふむ。ジェントル・ジャスティスよ」
「ほう?」
「ここにいる我々は『ヒーロー殺し』を追跡するために協力体勢をとっている。そこに貴様も入る気はないか?」
エンデヴァーは未だに膝をついて落ち込んでいたジェントルに協力を申し込んできたが、これって間違いなく俺のベホマのことも考えた申し出だよね?
ジェントルもそのことが分かっているようで、少し考えてから口を開いた。
「……正直、アバンナイト君にばかり頼るのは不甲斐ないが、ここは協力し合う方がいいだろう。……すまないね、アバンナイト君」
「いいえ。気にしないでください」
エンデヴァーの協力要請を受けてからこちらに謝ってくるジェントルに俺はそう言うと、マキナと飯田と轟に話しかけた。
「そんな訳でこちらもよろしく頼む。マキナ、飯田、轟」
「いや、待て」
俺が声をかけると轟がどこか責めるような目で俺を見てきた。
「ヒーローコスチュームを着ている時は本名じゃなくてヒーロー名で呼び合うべきだ。……お前、案外常識がないんだな?」
……………………!?
轟に非常識だと言われた瞬間、俺は何故かこれ以上ない屈辱を感じた。理由は分からないが、これ程の屈辱はそうはないと思う。
言ってみれば物間に「人を挑発するようなことは言ってはいけないよ?」とか言われたり、鉄哲に「少し落ち着いた方がいいぜ?」とか言われたりするような、そんな屈辱だ!
しかし轟が言っているのも事実なので、大人な俺は全力で抗議したいのを抑えて彼に謝ることにした。
「そ、そうだな……。それはすまなかった。じゃあ、俺はなんて呼んだらいいんだ?」
「ああ、俺のヒーロー名は『氷炎
……。
………。
……………。
いきなりだけど轟って、ドラゴンクエストの異世界で一緒に先生の教えを受けた兄弟子と声がそっくりなんだよな……。
そんな兄弟子そっくりの声で「俺はフレイザードだ」と言われたら、俺はどうしたらいいんだ? 笑えばいいのか?