異世界帰りのヒーロー、アバンナイト   作:兵庫人

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正直やり辛い

 オールマイトから頼まれた怪我人……というかオールマイト本人の治療をした後は色々と大変だった。

 

 あの後、雄英高校の保険医であるプロヒーロー、リカバリーガールがオールマイトの詳しい検査をしてから「臓器が完全に再生している上に個性因子まで完全ではないが回復している」と言って、これにはオールマイトだけでなく俺も驚いた。

 

 個性因子が回復したということは、それまでオールマイトの個性因子はそれまで減退していたということ。個性を使ってヒーロー活動をしているヒーローにとって、引退を決意してもおかしくない大問題なのだが、そんな話は一度も耳にしたことがなかった。

 

 それから俺はオールマイトだけでなく雄英高校まで迎えに来てくれた眼鏡をかけた男にも礼を言われたのだが、この時の眼鏡をかけた男は泣きながら何度も礼の言葉を繰り返し、最後には「君がプロヒーローを目指すのなら、私は全力で君をサポートさせてもらう。いいや、させてほしい」とまで言ってきて、そこで俺はようやくこの眼鏡をかけた男が誰なのかを知った。

 

 あと、リカバリーガールに「将来私の後任になる気はないかい?」と言ってもらえたのは嬉しかった。だってそれは俺のベホマが、異世界で得た力がこの世界のプロヒーローに認めてもらえたということだからだ。

 

 そんな驚きの連続の日から一ヶ月近い日が経ち、俺は無事に雄英高校のヒーロー科に入学し、今日いよいよヒーローらしい授業を受けることになった。

 

 

 

「次の授業はヒーロー基礎学だよな! 俺、昨日は興奮して眠れなかったぜ!」

 

 教室でクラスメイトの男子生徒、鉄哲徹鐵が興奮した様子で叫ぶ。

 

 ちなみに俺が所属しているのは1年B組。そこにいるクラスメイト達は皆、クセは強いが仲間思いのいい奴ばかりで、俺はこのB組が気に入っている。

 

 それで教室内を見回すと、クラスメイト達は鉄哲程ではないけど興奮した顔つきをしており、その理由はよく理解できた。

 

 ヒーロー基礎学、ヒーローとしての技術を学ぶ授業というだけでも興奮するのに、その授業の担任が「あの人」なのだから。

 

 

「わーたーしーがー! 普通に! ドアから来たぁ!」

 

 

 俺がそこまで考えたところで教室のドアからヒーロー基礎学の担任、オールマイトが現れ、それによりクラスメイト達が声を上げる。

 

「オールマイトだ! スゲェ! 生で見るの初めてだ!」

 

「本当に雄英の教師やっているんだ!」

 

「雄英にきてよかった! 家族に自慢できるって!」

 

 オールマイト、No.1ヒーローの登場にクラスメイト達のテンションが天井知らずに上がっていく。そんな中でオールマイトは……。

 

「やあ! 黒岸少年! 先月は世話になったね! お陰で助かったよ!」

 

 と、右手を上げてフレンドリーに俺に話しかけてきた……って! ヲイ!

 

『『……………』』

 

「んん? 皆、どうしたのかね?」

 

 クラスメイト達が急に黙り込んだことに対しオールマイトが首を傾げていると、クラスメイトの女生徒、拳藤一佳が手を上げてから質問をする。

 

「あの、オールマイト先生? 先生と黒岸って知り合いなんですか?」

 

「ん? ああ、そうだよ。黒岸少年には先月、傷を治してもらってね。彼は私の命の恩人だよ。HAHAHA!」

 

『『……………!?』』

 

 拳藤の質問にオールマイトが笑いながら答えると、拳藤を始めとするクラスメイト達が驚きで言葉を失った。

 

 いや、何を言ってるのオールマイト!? 確かに個性因子を回復させてヒーロー生命を救ったという意味では命の恩人も間違ってはいないけど、ここで言うことじゃないだろう!?

 

「む? もうこんな時間か。時間がないから手早くいこう。今日のヒーロー基礎学だ! 入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた戦闘服(コスチューム)に着替えたらグラウンド・βに集合だ! 急げよ、有精卵共!」

 

 それだけ言うとオールマイトは教室の空気に気づかないまま先にグラウンドへ向かって行き、オールマイトが教室を出るとクラスメイト達が全員俺の方を見てきた。

 

「え、え〜と……」

 

「やあ、『親友』!」

 

 俺がなんて言おうか考えていると、そこにクラスメイトの男子生徒、物間寧人が笑顔で話しかけてきた。

 

 物間はちょっと性格に難があって入学したばかりの頃、俺達クラスメイトを品定めをするような目で見てきたのが気になるが、それでも基本は仲間思いのいい奴……だと思いたい。

 

 でも俺はいつから物間の「親友」になったんだ? 昨日までは俺のこと名前で呼んでいただろ?

 

「オールマイトの命の恩人だなんて凄いじゃないか、親友? でも水臭いな。そんな話があったら聞かせてくれてもよかったんじゃないか?」

 

「……別に言うほどのことじゃないと思っただけだよ。それより早く着替えないと授業に間に合わなくなるぞ」

 

「そうだね。それじゃあ行こうか、親友」

 

 俺がそれだけを言って更衣室に向かおうとすると、物間は俺のすぐ横についてきて、後からついてくる他のクラスメイト達の視線が背中に突き刺さってくるのを感じる。

 

 ……オールマイトに悪気がないのは分かっているが、正直やり辛い。

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