今から一ヶ月程前、俺は自宅の自室で一枚の書類を見ていた。
その書類はヒーロー
「さて、どんな戦闘服にしようかな……。ヒーローとしてカッコいいデザインにしたいけど、実戦で使う以上はやっぱり使いやすさと個性を完全に使うための機能が第一だよな。……となると」
そこまで一人呟いた俺は、自室の隅に置かれているものへ視線を向けた。
そこにあったのはドラゴンクエストの異世界で俺が命を預けてきた武器と防具。
長年の相棒であるはかいのつるぎと、その横にあるやたらと物々しくて不気味な大盾をしばらく見た後、俺は戦闘服のデザインを想像してそれを書類に書き込むのだった。そうして出来上がった俺の戦闘服は……。
「黒岸……。あんたの戦闘服って地味……て、いうかシンプルだね……」
『『………』』
と、クラスメイトの拳藤から言われ、他のクラスメイト達も彼女の言葉に頷いて同意するという微妙な評価を受けていた。
俺の戦闘服は一言で言えば、ダイビングなどで着る全身一体型のスーツ、いわゆるドライスーツと、それに加えて顔の下半分を隠すマスクを着用したもの。
今いるグラウンドにはオールマイトやそれぞれが考えた戦闘服を着たクラスメイト達がおり、彼らの戦闘服と比べれば確かにシンプルであるが、それでも地味はちょっと酷くないか、拳藤?
「別にいいだろ? これが俺の個性に最適な戦闘服なんだよ」
「個性って言えば……黒岸、あんたの個性って何なの?」
俺が拳藤の言葉に答えると、それを聞いた彼女が思い出したように質問をしてきた。
「この間の身体能力テスト……あんた、メチャクチャ凄かったじゃない? だから私はてっきり黒岸の個性は身体増強系だと思っていたんだけど……」
拳藤の言う通り、B組は数日前に個性も使用した身体能力テストをやっていて、その時俺はバイキルトとピオリムの呪文を使い、ほとんどの種目で一位を取っていたのだ。拳藤はそれを見て俺の個性が身体増強系だと勘違いしたのだろう。
「でもさっきオールマイト先生が黒岸に傷を治してもらったって言っていたでしょ? これってどういうこと?」
見れば拳藤だけでなく、俺達の会話を聞いていたクラスメイト達にオールマイトまでこちらを見ていて、別に隠すことでもないので俺は拳藤の質問に答えることにした。
「俺の個性は『魔法戦士』。戦士のように頑丈で健康な肉体を持って、魔法みたいな現象(みたいな、じゃなくて魔法そのものだけど)を起こして操る個性だ。ただし魔法を使うにはドラゴンクエストの呪文を唱える必要があるんだ」
「えっ!? 黒岸ってドラクエの魔法使えるの!?」
『『……………!?』』
俺が答えると拳藤だけでなく、話を聞いていた全員が程度の差はあるが驚いた顔となった。
「拳藤ってドラゴンクエスト知っているんだ?」
「それくらい知ってるわよ、クリアだってしたし。それじゃあ、この前の身体能力テストは……」
「バイキルトとピオリムで強化」
「っ!? ……他の魔法も使えるの?」
「全部じゃないけど一通りは使えるぞ」
『『………!?』』
次の瞬間、拳藤だけでなく他のクラスメイト達まで俺のところへやって来て「ドラクエの魔法を見せてくれ」と言ってきた。ついでに言うなら、本来止めるべき立場のオールマイトまでも期待するような表情を浮かべていたので、仕方なく俺は威力を最小限にしたメラ、ヒャド、ギラ、バギ、イオと基本的な攻撃魔法を披露してクラスメイト達に喜ばれたのだった。