異世界帰りのヒーロー、アバンナイト   作:兵庫人

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アレを使うか

 魔法の披露が終わった後、予定通りヒーロー基礎学の戦闘訓練が開始された。

 

 戦闘訓練の内容はB組の生徒が抽選で決めた基本二人一組となり、これも抽選で決めた組み合わせで戦い合うというもの。基本二人一組と言ったのは、B組の生徒は二十一人いるため一組だけ三人となるからだ。

 

 戦いの舞台となるのはグラウンドに用意された五階建ての廃ビル。核爆弾を強奪した二人のヴィランが廃ビルに立てこもり、そこに二人のヒーローが核爆弾とヴィランの確保に来たという設定で、二組の生徒はヒーロー側かヴィラン側のどちらかになってこの廃ビルで戦い合う。

 

 ヒーロー側の勝利条件はヴィラン側二人を捕縛テープで拘束するか、核爆弾のハリボテに接触すること。

 

 ヴィラン側の勝利条件はヒーロー側二人を捕縛テープで拘束するか、制限時間まで核爆弾のハリボテを守り切ること。

 

 この条件で戦闘訓練は開始され、最初の試合で早速俺の出番となった。俺のペアは拳藤でこの試合ではヒーロー側、対するヴィラン側は物間と黒色支配のペアである。

 

 試合が始めると俺はすぐに透明化の魔法レムオルを使って拳藤と一緒に透明となり、一階から順番に核爆弾が置かれている部屋を探すことにした。核爆弾は四階の一番大きな部屋に置かれており、それまで物間と黒色の姿や妨害の痕跡すら見つけられなかった俺と拳藤は、その事に疑問を抱きながらもとりあえず核爆弾と接触しようとしたのだが、そこで物間と黒色の反撃が始まった。

 

 黒色の個性は、影を始めとする黒色のものであれば何にでも溶け込める「黒」。

 

 そして物間の個性は、触れた相手の個性を五分間だけ自分も使えるようになる「コピー」。

 

 黒色は自分の、物間はコピーした黒色の個性を使って核爆弾を置いてある部屋の影に潜んでいたのだ。そして俺達が部屋に入ってきた瞬間、影から出てきた物間は俺の体に触れて個性をコピーしたというわけだ。

 

 完全にしてやられた。黒色の個性はともかく、物間の個性は俺もモシャスが使える以上、予想できてもよかった筈なのに……!

 

 しかしマズいことになったな。俺がドラゴンクエストの異世界で覚えた魔法は、魔法の儀式で個性因子そのものに書き加えたもので、それを物間がコピーしたということは……。

 

「ベギラマァッ!」

 

「まさかこれほどとは……! これが伝説の世界に伝わる禁じられた知識か……!」

 

 物間も魔法が使えるということで、彼は俺達に向けて左の掌から魔法の熱線、ベギラマを放ってきた。そしてそれを見て黒色が目を輝かせながら驚愕の表情で呟く。

 

「はははぁっ! 凄い! 君の個性は凄い個性だよ、親友! まさかドラクエの魔法が使えるようになるなんて! こんな凄い個性は今まで見たことがない! やっぱり君は僕の親友だよ!」

 

 魔法が、強力な力が使えた事実にテンションがおかしくなった物間が大声でこちらへ話しかけてくる。

 

 ……どうでもいいけど物間の言う「親友」って、俺が知ってる「親友」と意味が違うんじゃないか?

 

「きゃあっ!? ちょっ! 黒岸、これどうするの?」

 

 物間が放つ魔法を避けながら拳藤が俺に聞いてくる。

 

 興奮しているせいか物間の魔法は狙いが甘い。しかしだからこそ危険でもある。

 

 もしここで物間がベギラゴンやイオナズンを使ったら俺はともかく拳藤や黒色が危険だし、この廃ビルが崩れて物間自身も巻き込まれるかもしれない。

 

「……仕方がない。アレを使うか」

 

「へぇ? 魔法以外にもまだ何かあるのかい?」

 

 俺が一気に勝負をつけようとすると、それに気づいた物間が興味深そうにこちらを見てくる。

 

「物間。魔法が使えるようになっただけで俺に勝てると思うなよ? ……こい!」

 

『『………!?』』

 

 俺が呼ぶと俺の頭上、何もなかった空間に「それ」は現れた。

 

 それは、はかいのつるぎと一緒にドラゴンクエストの異世界から持ち帰ってきた、物々しくて不気味な大盾。

 

 突然現れた大盾に、物間だけでなく拳藤と黒色も驚いた顔となった。

 

「拳藤」

 

「えっ!? な、何?」

 

「何で俺の戦闘服がシンプルなのか教えてやる。ゴテゴテした戦闘服だったらあれを装備できないからだよ。……鎧化(アムド)!」

 

 拳藤にそれだけ言ってから俺が呪文を口にすると、頭上にある大盾が変形して俺の体に巻き付いてきた。そして次の瞬間、俺の姿は銀色に輝く全身鎧を装着した騎士のような姿にと変わっていた。

 

「変身完了! アバンナイト、ここに見参!」

 

 全身鎧の騎士に変身した俺はせっかくだからた大声で名乗りを上げた。すると……。

 

「『う、うおおおおっ!?』」

 

 と、この場所と俺達の試合を見ているモニタールームから興奮した歓声が上がったのだった。

 

 

 

 

※今回の話で「物間が魔法を使うのはおかしくないか?」というコメントをいただいたので、ここで説明文を書かせてもらいます。

 

 ダイの大冒険では魔法とは「儀式で契約した後に呪文で呼び出す力」とあって、作者はこれを「個性因子そのものに書き加えた情報を呪文というキーワードで再現したもの」と考えています。

 そこから「物間は魔法の情報ごと黒岸の超健康体質の個性因子をコピーしたので魔法を使えるようになった」という設定を考え、今回の話で魔法を使わせました。

 しかし魔法の情報を再現するためのMPや技術は物間自身のものなので、今回物間が使ったベギラマは外見だけのもので実際はギラ程度の威力しかありません。

 これは勇者の親友の大魔導師と、賢者のお姫様との攻撃魔法の威力が全く違うのと同じ理屈です。

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