―以上が、アスカがシンジに語ったことである。シンジは相槌を打って黙って聞いていたが、段々表情に影を落としていった。
「……そっか」
明らかに負のオーラを纏って落ち込む様を見せるシンジ。彼はきっと今……自責の念に駆られているのだろう。それが表情からダイレクトに伝わってくる。でも……それでも……
「そんなに自分を責めないでよ。シンジが責められるなら、アタシも同罪。アタシを助けるために、シンジはヒトの域を超えたんだから」
「アスカ……」
「まだ、間に合うわ。アタシたちにも、まだ出来ることはあるはずよ。……過去のことを考えててもしょうがないわ。変えられない……でも、未来は変えられる。……一緒に、戦いましょう」
アスカは右手を出し、液晶パネルに触れさせた。シンジはアスカの言葉にはっとした表情を浮かべた後、無意識に左手をパネルに触れさせた。
近くにいるのに、遠い。そこに一抹の寂しさを感じながらも、二人は微笑んだ。
「そうだね……アスカ。もう一度、頑張ってみるよ」
「そうね……一緒に」
かなり長期間話し込んでしまい、ミサトからストップがかかってしまった。アスカは別れ際に、シンジに忠告を一つ残した。
「シンジ……碇司令はアンタをまた利用しようとするはず。もし、仮にNERVに連れ去られたとしても……向こうのエヴァには乗らないで」
「分かった……ありがとう、アスカ」
「……アタシも頑張るから、負けんじゃないわよ。バカシンジ」
アスカはそう言い残すと、シンジの傍を離れて初号機の中に戻った。―アスカにしか出来ない戦いのために。
アスカが集めた情報の中に、気になる情報が一件存在した。―初号機への、ダイレクトエントリーの実験。その実験の結果、失われた一人の女性。―碇ユイ、旧姓綾波ユイ。碇ゲンドウは、人類補完計画でその失われた彼女を取り戻そうとしているのではないだろうか。
アスカはそれを確かめるため、初号機のコア、その奥深くへと潜ってゆく。そこは、何もない深淵の闇。
(何か、呼吸の必要がないのに息が苦しいような……)
アスカが奥へ奥へと進んでゆくにつれて、何か圧迫感が強くなっている。本来居るべきではない存在である自分が侵入したことで、防御反応のようなものが働いているのかもしれない。
「それでも……アタシは進むしかないのよッ!」
裂帛の気迫と共に、アスカは深く深く、コアの深淵へと潜ってゆく。
……やがて、突如として光が見えた。
「!」
アスカは勢いを緩めることなくその光の中に飛び込む。
―その先に待っていたのは、草原の真ん中に立つ一本の木。その木漏れ日の下で、座り込む一人の女性が居た。
「……まさか、ここに来る人間が居るなんてね」
「―碇、ユイ」