(1)邂逅 ヒーローの卵 運命のチルドレン
どたん。
鮮やかな背負い投げが決まる。
「勝負あり! チームユウエイの勝ち」
目付きの悪いジャージ姿の高校生が、相対する者を倒したのだ。
「あんたばかぁ!? あいつの個性くらい把握しなさいよね!」
赤い防刃・防弾スーツ姿の少女が、青いスーツ姿の少年を罵っている。茶色のロングヘアが揺れた。
「そんなこと言われても、わかんないよ!」
黒髪で、幼さの残る顔立ちの少年は、強気な瞳に気圧されている。
「ほんっとにバカシンジ。どうせ、個性を消す個性ってところでしょ。違うの? 雄英のセンパイ?」
パチパチパチ。
手を叩いたのは脇に控えていた派手な髪の毛の主だ。
「すごいなーアスカちゃん! 大正解」
「おい、お前なに勝手に教えて」
「だって相手は中学生だぜ? これくらいハンデでいいじゃんよ」
ことの発端は、数分前にさかのぼる。
公営遊技場エヴァ。第三新東京グループが運営するこの施設は、個性を持つ超人社会で、個性犯罪の抑制を目的として政府が試験的に作った遊興施設である。ジオフロントに作られているため、ほとんどの個性を自由に使うことが可能だ。水を操ったり、炎を出したり、全力疾走したり。日常で使うと危険視される個性を、我慢しなくてもいい。
そんな施設を、相澤たち二人が訪れていたとき、喧嘩を売られたのだ。
あんたたち雄英の生徒でしょ? だったら勝負しなさいよ! と。
見るからに中学生の二人組を、相手にするつもりはなかったのだが。
「もとはといえば、相澤が合理的だから、勝負受けたんだろ?」
相澤たちは施設で検討されている目玉企画が実現可能かどうか、見極めるために派遣されてきたのだ。
すなわち、個性を用いたバトル。
どうせなら、想定の通り見ず知らずの相手と手合わせしたほうがいいと、相澤が判断。
現在に至る。
碇シンジはようやく体を起こした。
「ったく、もっと鍛えなさいよね」
「ほんっとにアスカちゃん厳しいなー! ヒーロー目指してんのか?」
「さあ。あんたたちが勝ったら教えてあげる。次はあたしよ! どっちが相手?」
「俺がそのままいく」
相澤が一歩前に出る。
「強気なのもいいが、ヒーロー科の人間に簡単に勝てると思うな」
「あんたこそ、個性を見破られてなお勝てるなんて思い上がらないことね」
試験運転中のゴングが鳴る。
ギンっと相澤の眼が見開かれた。
が。
「とおりゃー!!」
飛び蹴り。
かわすも今度は回し蹴り。
「ぐはっ」
視線が外れる。
「な、め、る、なぁ!!」
軽々と体を持ち上げられ、床に叩きつけられる。
「ぐ…………」
「勝負あり! チームネルフの勝ち」
判定システムが無機質に告げる。
「おっどろいたなあ、パワータイプの個性か。にしても最初は相澤の個性が効いてたから、対人格闘のセンス、身体能力! ブラボーだぜ! じゃあ次は、俺か」
「じゃあ選手交替。バカシンジ、次は勝ちなさいよ」
「まじかよ! アスカちゃん! そりゃないぜ!」
「そうだよアスカ、僕には無理だよ!」
「無理じゃない、やるの!」
どんっと突き飛ばされ、シンジはまたもバトルフィールドに出る。
「じゃ、はじめるかー!」
スタートと同時に、衝撃波がシンジを襲う。
相澤も、アスカも、耳をふさいだ。
しかし。
「ありゃ、きいてない?」
瞬間的にシンジが距離をとったようだが、ダメージを受けた様子はない。
「なら、もういっちょ……」
視界から姿が消えた。
ぴたり。
手刀が首筋に当てられている。
「僕が刃物を持っていたら、もう死んでます」
「………………」
「降参、してくれませんか? 僕、アスカに怒られるの嫌で」
「…………わーったよ! 負けた負けた! ったく末オソロシイ中学生だぜ。すっげーいい経験でき、相澤?」
「おまえら、何者だ。ただの中学生じゃないな」
普通に考えて、両者の対人格闘スキルは常軌を逸している。
アスカはまだ武道を習っていると聞けば納得できるかもしれない。
けれどももうひとりは。
まるで普段からナイフを用いた戦闘訓練を行っているような動き。
気弱な性格からは想像できない背景。
アスカは顔をしかめ、シンジは苦笑する。
「答えろ。雄英ヒーロー科でも探りにきたのか」
必要に応じて、保護、あるいは確保する必要がある。
「…………僕らは」
殺気。
二本の指が相澤の目に迫る。
目潰しをかわすと、二人の姿はなかった。
「ひゅー。個性、瞬間移動ってとこかな、瞬きひとつでみえなくなった」
「…………なにをのんきな」
「まああいつらがヒーロー志望ならそれでよし。ヴィランになるってんなら、そんときは捕まえるまでだろ」
「まあそうだが」
「また会うだろ、縁があれば」
もしかしたらもうあるかもしれませんが、書きたかったんです
ヴィジランテ、本誌未読
シンエヴァは見てきました