ネオンジェネシス ヒーロー社会   作:香枝ゆき

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(2)説教 暗躍の組織人 沈黙のチルドレン

 

「あなたが優秀なのは分かっているけれど、先走りが過ぎるわね」

 無機質な部屋で、アスカは白衣をまとった女性から冷たく言葉を投げかけられていた。

 壁にかけられているスクリーンには、ジオフロントで行われた模擬戦闘を記録した映像が先ほどまで流されていた。

「しかもチームネルフだなんて。──ウチは超法規的組織よ。その存在を無暗に悟らせるのはよくないわ、あなたらしくない」

 アスカは反論せず、ただ黙っていた。

「──あなたも同罪よ、碇シンジ君。アスカの手綱くらい握っていなさい。模擬戦闘が避けられなくても、チームの名前くらいはどうにかできたでしょうに」

 水を向けられて、シンジはぴゃっと身を固くした。

「す、すみません、リツコさん──」

「しかも、個性まで使って」

 じろりとにらまれて、シンジは縮み上がった。

「まあまあ、そのへんにしといてあげて」

 助け舟が入る。

「チャオ!」

 部屋の空気をものともせず、黒髪のロングヘアーをなびかせて女性は部屋に入室した。

「ミサト……」

 A4の書類の束をひらひらと振る姿に、リツコは毒気を抜かれている。

「立ち入り禁止のプレート、かけておいたはずだけど」

「火急の要件ってやつよ」

 緊急性など微塵も感じられない明るさで、ミサトはその場の主導権をいとも簡単に握ってみせた。

「確かに二人の行動は褒められたものじゃあないわ。でも、あの雄英の関係者と接触ができたし、それなりの情報もとれたしね」

 ぱさりと机に置かれた書類を、リツコは一瞥する。

 個性や学歴、その他経歴が簡単にまとめられた個人情報の塊だった。

「──個性『抹消』について言ってるの? 実際に発動した場面のサンプルデータがとれたのはありがたいけれど、ATフィールドの下位互換という結論は覆らないわ。個性発動が眼球に依っている以上、エヴァへの搭載もできないしね」

 流し読みをしていたリツコの目が、止まった。

「──さ、もう行きなさい。でも次はないわよ。今度なにかやらかしたら、碇指令に話がいくからね」

「は、はい! ミサトさん、ありがとうございました……!」

 シンジはばたばたとアスカを促し、二人は部屋を出ていった。

「……個性の活用はできないけれど、立場の活用ならできるわ」

 ミサトは指揮官としての顔をのぞかせていた。

 相澤消太、ならびに山田ひざし。雄英高校ヒーロー科在籍。

 ヒーローを目指す子供たちの憧れの的となっている名門中の名門。

 一学年の定員は40人で、学校全体でも最大で120人。

 養成課程は厳しいものの、それらを乗り越えた卒業生の実力は折り紙付きで、まさしく金の卵だ。

 ヒーロー科は教育機関ながら、有事の際はヒーロー活動を行って災害対応・治安維持活動が期待されるなど、超常社会を支えるインフラとしての側面も持っている。

 そこに通う現役の生徒と接触をしたがる個人・機関は相当数いるものの、雄英高校は生徒のプライバシーを守ることでも有名だ。

 唯一の例外が、業界への個性アピールを兼ねている雄英体育祭。

 生徒は基本は指定ジャージで競技に参加。大会中はTVを中心に生放送され解説や実況が入る。どこまで勝ち残るかにもよるが、成績上位者はほぼ確実に個性と本名と顔がバレる。

 しかし情報の拡散は限定的だ。公式のチャンネル以外の転載やまとめサイトへの掲載は、光の速さで削除要請が入る。

 生徒の実名、個性、ヒーローコスチューム・平時の姿問わず容貌が分かる写真・動画データ。その他プライバシーを侵害すると判断された情報はネット社会にも関わらずほとんど転がり落ちていない。

 雄英高校の情報は、公式が発表しているもの以外はアクセスが難しい代物だった。

「ネルフの諜報部も優秀だけど、さすがに高校への張り付きは現実的じゃないのよね、セキュリティも厳しいし。だけどあの二人なら。目的を果たせることができる」

 ミサトはスクリーンに映像を映し出した。

 ドキュメントデータ。

 一ページ目には『国立雄英高校付属中学設置基本構想』と書かれている。

「……まさか」

「ええ」

 ミサトはにやりとする。

「雄英に付属中学を試験的に設置する。そこに一期生として、アスカとシンジ君を送り込む。そして必ず、ATフィールドを実用化させる」

 リツコはスクリーンの操作権を握る。

 画面を動かしてドキュメントの内容を把握すると、息をついた。

「……あの子たちにできるといいけど」

 不確定要素はある。が。

 ミサトの案に、反対する理由はなかった。






大変ご無沙汰しております。4年振りの更新となっています。

おしりを決めずに書いたどころかほんとになにも残さずに書いたらしい昔の自分をなぐりたい気持ちです。
プロットもキャラクター設定も本当に一文字も残していませんでした。

寝かせておいた間、連載が終了し、当初の構想と違う部分がどうしても出てきてしまいます。

頭とおしりとおおざっぱな設定は本日まとめましたので、こんな感じで書いていきたいというふわふわとした構想はできました。
気長にお待ちいただけますと幸いです。

2025.08.27
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