ヒーロー科の教室はざわめいている。
「例のやつどうした?」
「俺はパスした」
「だよなー」
わら半紙に印刷された、希望調査表は先日回収された。
恐らく職員室で集計されているだろうが、雄英中等部生のボランティアに立候補したという話はどこからも聞かない。
「っていうか、中学のときの先生からめちゃめちゃ聞かれた」
「あーわかる! 担任とか進路指導とか。一応エスカレーター進学はできないみたいだよって言っといたけどさー」
そこかしこで交わされている会話はどこも似たようなものだった。
「っかぁー! メディアの報道がわりぃんだよなあ、誤解されるような名前にしやがってよお」
山田ひざしは同意を求めるように、相澤に話しかける。
彼もまた、どこかから問い合わせを受けたのかもしれない。
──着々と進む雄英中等部設置の準備。簡略化して『雄英中等部』とは言っているが、正式名称はクソ長い。
『第三新東京グループ国立雄英高校産学連携計画委員会立雄英高校ヒーロー科付属中学校』。
国内には、国立の大学附属の高校や中学がある。ところによって、大学への進学はエスカレーターであったりなかったりする。
雄英中等部という名前がひとり歩きして、中等部に入学すれば高校に入れるのでは、という問い合わせが一定数入っていた。
学校だけではなく、在学生も、出身中学や塾や親戚等から問い合わせされている。
「……こんな誤解されるような名前にするのは、合理的じゃない」
相澤は本音を吐露する、
「まったくだ。時間がなかったのか知らねえが、速報が流れちまったらな」
雄英中等部の設置構想は、情報がどこかから漏れたのか、あるTV局がニュース速報としてテロップを表示。他局のニュース番組でも取り上げられ、後追いで新聞や雑誌、その他メディアが続いた。
雄英と第三新東京グループの合同記者会見は、その後追われるように行われ、長すぎる正式名称に、各メディアは『雄英中等部』と略して報道した。
──まるで、なにか目をそらしたいかのように。
雄英に注目させて、他をかすませたいかのような。
大きいとはいえ、卒業生でもない、一民間企業との合同プロジェクトに相澤は疑問を持つ。
「……ボランティア、隣のクラスも誰も申し込んでねーみたいだぞ」
ひそめられた声に、相澤は目を細める。
陽気で人当たりもいい友人だ。それなりの情報網は持っている。恐らく嘘ではないだろう。
「ボランティアが集まらなかったら、どうするつもりなんかねえ」
──その答えは、放課後に呼び出された相澤たちが知ることになった。