相澤と山田は、英雄のジャージを着て運動場に立っていた。
中等部生とはジャージが違うため、目立っている。が、どこふく風だ。
「……授業の公欠、よくとおったよな」
山田がいまだに信じられないという顔をする。
一度も顔を見たことがない中等部生がいる。
相澤の報告に、校長が『それはよくない』という判断を下した。
一度はあっておきたいと言う相澤の意見を肯定し、中等部生の授業を見学する時間を作り出したのだ。
なお、相澤と山田の授業の遅れが出ることを見越して、クラスは現在自習である。
雄英の設備を使う以上、雄英教職員が近くで監督している。が、姿を見せていない者もいた。
この機会に、個性を把握するという腹積もりらしい。
「え~、本日の総合的な活動の時間は、雄英で行われている、個性把握テストを模した個性把握レクリエーションを行います」
相澤達は、自分たちがかつて受けたテストを思い返していた。
足が速い、腕力が強い、などの個性持ちは与えられた力をいかんなく発揮していたが、そうではない相澤は一つも超記録を出すことなく終えた思い出しかない。
中等部生を教える教員に、中等部生たちはわくわくとした顔だ。
学生生活だけでなく、日常生活でも個性の使用は原則禁止。
それが解禁されるとなると、非日常感があるのだろう。
そんな浮足立った生徒の中に、やはり、見知った顔がある。
気弱そうな黒髪の少年。
彼を筆頭に、顔色を変えない生徒が何名かいた。
視線を感じたのか、シンジは相澤たちに反応を示した。
授業中のため目立ったことはしないものの、明らかに気付いている。
そして今は授業中だからと言い訳をするかのように、教師の方を凝視した。
一方のアスカはガン無視だった。
これは想定内なので問題ない。
あとは。
透明感の強い、感情の起伏がみられない少女が一人いた。
彼女が綾波レイだろう。
この三人は、明らかに浮いていた。
「……やっぱり、問題児はあの三人か?」
いつにない小声で、山田がつぶやく。
「可能性はある。このレクで、個性の片鱗が見えればいいんだが」
二人はテストの様子を遠目にみた。
その結果分かったことは。
綾波レイは、体調面のコンディションが悪いのか、目立った記録はない。
アスカは一、二を争うほどの好成績を出した。
自信満々のアスカはともかく。
予想外だったのは碇シンジも、それなりの記録を叩き出したことだった。
「……なんだありゃ」
個性が発動していたようには見えない。が。
「……少なくとも、ヒーロー科でやっていけそうな基礎体力は持っている」
それは誰の目にも明らかだった。
やはりジオフロントで会った二人と同一人物か。
相澤の中で、情報の確度が高まっていった。