かたなリバース   作:白山羊クーエン

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麦カタわら

 

 

 

 グランドラインに入ってから随分時間が経った。麦わら帽子を被ったドクロが描かれている海賊旗が風にゆれ、その下ではこのドクロに夢をかけた者たちがそれぞれに過ごしている。

 サウザンドサニー号、太陽を模したライオンが微笑む。その庇護下にいる八人の海賊は、ただ一人の異物に対してそこまでの関心を抱いていなかった。

 

「サンジ君、喉渇いちゃった」

「任せてナミさんっ、すぐに極上のロイヤルミルクティーを!」

「なぁフランキー、ビームは出ないのかー?」

「出ねぇよ、現在鋭意開発中だ」

「…………」

「ロビン、何の本読んでるんだ?」

「ふふ、異国の歴史書よ。あなたが興味ありそうな医学の話はまだね」

「そっかー」

「…………」

 その中で、しかし普段と様子の違う者がいた。三本の剣を差し、腹巻を巻いた緑の髪の男、ロロノア・ゾロである。

「珍しいな、ゾロ。お前が修行も昼寝もしないなんて」

 何かを調合しているウソップが訊ねると、ゾロは苦虫を噛み潰したような表情で呻いた。

「流石にこの状況で普段どおりにいられるほどお気楽じゃねぇよ」

 ウソップは首を傾げる。グランドラインでは珍しい、長らく長閑な暖かい気候が続いている休息の時間に何を言っているのか、彼にはわからない。

 そんなウソップにあからさまに溜息を吐き、ゾロはある一点を見つめた。そこにはみかんの木々の傍でウッドチェアに寝転がるナミが見える。しかし彼は彼女を見ていたわけではない。

「あ、黒足君、私にもお願い」

「お任せあれっ!」

 もう一人、椅子に寝転がり便乗する女性。それにくるくると回転しながら頷くコック。ゾロは頭痛がしてきた。

「なんで、あいつが乗っているんだ……」

 

「なんでって、ルフィが認めたからだろ」

 寝不足で頭が回らないのかとウソップは本気で心配になるが、むしろゾロにとっては彼のほうが重症にしか見えなかった。海賊船に捕虜でもない海軍軍人が乗っているという矛盾の解消方法を彼は知らない。

「うん、おいしい」

 そんな当の本人は差し出されたミルクティーに舌鼓を打ってコックの瞳をハートに変える。

「全く以ってタイプじゃないけど、君の腕はほんもぶふぉあっ!」

 そして吐き、コックの顔を汚した。流石のプレイボーイも硬直である。

「は、吐いたぁー! 医者ぁー!?」

「医者はあなたでしょ?」

 そしていつもどおりにトナカイの医者は混乱し、黒髪の考古学者は冷静に突っ込む。

「ルフィのやろう……っ」

 顔を手で覆い、ゾロは呻いた。異物を異物と見なさない脅威の浄化機能、どうして自分以外が普通でいられるかほとほと疑問だった。

 

「ねぇみかんさん、黒足君はいつもこうなの?」

「そうだけど、それより何事もなく会話するのはどうかと思うわ」

 みかんさん、と呼ばれたナミは吐しゃ物を無視して話しかける様に疑問と不安を覚える。というか、堂々と軍服でくつろがないでほしい。

 ルフィが乗船を許可したとして、流石に海軍がすぐ傍にいるという雰囲気を醸し出してほしくはない。個人的にはそれを抜きにすれば好感が持てる人物だと評しているナミである。

 ちなみに彼女に対する呼称が最初泥棒猫であったことは言うまでもない。当然変えさせた。

「ぬぐ、いやまぁ慣れるものなんだよ」

 あっはっは、と口元を拭って高笑いする彼女に対し、乗船について何も言わなかったニコ・ロビンは本を捲りながら思う。

「人として恥ずかしいわ」

「病気なのかなぁ」

 医者としての習性か、チョッパーは心配そうに見守る。それに気づかない海軍の彼女はルフィを見やり、尋ねた。

「麦わら、迷惑かい?」

「いんや」

「あっそ。じゃあもっと頑張るよ」

 何も好き好んで海賊と共にいるわけじゃあない。海軍本部中佐カタ・ナユタ、現在任務中である。

 

 

 

 * * *

 

 

「うぇろあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

「中佐あああああああああっ!」

 麦わら海賊団との邂逅を終え艦に戻ってきたカタは、艦長室に着くや否やそれまで硬直していた真剣な表情を一気に豹変させた。過去最大級の勢いはまるで洪水か、どこぞのマーライオンの如く衰えを知らない激流は、最近開発された彼女専用エチケット袋を破裂させるだけに留まらず周囲を呑み込んでいく。絶叫するハリーはしかしその惨劇に恐怖したわけでも困ったわけでもない、ただただ怒り狂っただけである。

 体中の全ての水分もかくやと言わんばかりの量を吐き出すと共にその吐しゃ物で喉を傷つけた彼女はその痛みにもがいていた。血は出ていないのか、赤くは染まっていない。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「ち、中佐、てめぇ……っ!」

「はりー……みす、みずをくれ…………」

 まるで砂人間に吸い尽くされたかのようにしわくちゃになるカタは液体を求めて青年に手を伸ばした。まるで老婆である。しかしその窮地に青年は笑みを深める。思わずぞっとするような悪魔の笑みだった。

 

「周りにあるじゃないですか、中佐ぁ」

「は、はりー、許して……」

 それは悪魔の所業、先ほど吐き出したそれを飲めという残虐さ。流石の彼女も床を舐めることはできてもゲロを飲むという行為には耐えられない。泣き出しそうな表情だが涙は一切出ない。もしかしたら既に泣いているのかもしれないが、そんな無駄な水分は存在しなかった。

「はりぃぃいい……っ」

「ち、わかりましたよ」

 上官を殺す気はないのか、ハリーはポットを放り投げた。渾身の力で受け止めたカタは象のようにバキュームする。空になった頃にはすっかり元の姿に戻っていた。異常である。

 

「いやぁ、死んだ死んだ」

「そのままでよかったのに」

「でも君は私を助けた、つまりは本心は違うってことだねっ」

 ツンデレさんなんだねっ、とのたまう。ハリーは水をやったことを後悔した。

 しかしとにかくもまずはこのゲロ海の掃除である。この量は雑巾では不可能だ、故に彼は新兵器を使う。カタがエチケット袋を作るなら、彼もまた掃除道具を作るのである。

「駄犬、餌の時間だ」

 犬型掃除機ドッグ-er0である。ミニチュア・ブルテリアを模した鋼鉄の一品はその吸引力で全てのものを呑み込む。そう、たとえ――

 

 たとえ重要な資料であっても。

 

「私の報告書!?」

「全て呑み込んでしまえ、ゲロとともに!」

 普段より発狂している気がするが、それもおそらくは日ごろの蓄積ゆえであったのだろう。彼女のその後を考えれば彼の行為は無駄でしかないのだが、刹那の欲に従った彼を責めることはできないだろう。報告書が消えたのは決してわざとではないのだ。

 全てを掃除し終えた後、そこには真っ白になっているカタと晴れやかな表情のハリーがいた。

 

 

 

 

そんなわけで、さて麦わらの一味との今後について考える会が発足、中将に似ているので憂さ晴らしをしましょうという結論に至る。

「人として最低の部類ですね、中佐」

「でも海軍としては優しい部類だと思うな」

 海賊に対し強攻策に出ず地道に嫌がらせをするという選択、確かにハリーはそれを疑問に思っていた。いや、懸賞金総額が6億を超える海賊団だ、慎重になるのもわかるが。

「どうしてすぐ打って出ないんです?」

「総額は高いけど人数が少ないから、かな」

「人数、ですか?」

 うん、と頷き、カタは背もたれに寄りかかって船室を見上げた。

「人数が少ないってことはね、それだけ仲間内の繋がりが強固になっているってことなんだ。たとえば総勢100以上なら自然と個々の繋がりも薄れていく。その二つの違いは、仲間を失った時に起きるよ。少人数のほうがその分心の隙間が大きくなってしまう。それが有利になることもあるけれど、きっとあの一味はそれ以上に感情を爆発させるはずだ。それこそ――」

 大損害。こちらが全滅するほどには、ね。

「……中佐の考えはわかりました。中将のお孫さんですからその可能性は高いでしょう。これに関してはもう何も言いません」

 ハリーは一息吐き、その話題を終了した。彼の視界の中にいるカタは変わらず天井を見つめている。不思議と彼女が吐きそうには見えなかった。

 

 その後、私的な手紙を書き終えたカタはハリーにそれを頼み、数日後、それは正しくモンキー・D・ガープへと送られる。それに対する彼の返事は、『好きにしろ』ということだった。

 

「お許しが出たね、ストーキングしていた甲斐があったよ」

 手紙を机に置き頷いたカタはにやりと笑い、瞬間に顔を真っ青にして戻した。幸いなことにエチケット袋が間に合ったのでハリーに仕事はない。

「中将が許可するのは目に見えていましたが、全く似たもの同士ですね」

「……ちょっと待て、それは誰と誰が?」

「中佐と中将ですよ、お互いに苦手なのは同属嫌悪なんじゃないですか?」

「私と中将じゃ何から何まで違うよ! やめてよまるで長年の疑問が解けたみたいな顔しないでよっ!」

 悪戯好きというか、おもしろそうなことに対して理性が働かない辺りは実にそっくりだとハリーは思う。むしろ血縁なんじゃないかとすら思えてきた。

 余談だが、カタ・ナユタに家族はなく、後見人としてガープの名が記されていた時期もあったらしい。

「まぁ影響とかじゃなくて絶対に素だと思うけど」

「何か言った?」

「いえ、言いましたよ?」

「そう…………ってどっちだよっ!」

「どっちでもいいじゃないですか、それよりどうする気なんです?」

 正直に言って、ハリーとしてはこうしてストーキングしている時点で結構な嫌がらせだと思うが、それではこの上司は納得すまい。もっと自分がやっているという感覚が得られる方法をとるはずだ。この辺りもガープそっくりである。

 案の定腕組して唸るカタ、そして彼女がこのポーズで考え事をした場合、まず間違いなく良案が出てこないことを彼は知っていた。

 

「よしハリー、彼らの後ろで毎日宴会をやろう!」

「ほら出たよ、なんで馬鹿中佐だよ」

 もはや長台詞すら言いたくないハリー、即切りされたカタは唇を尖らせながらも再び唸り始めた。おそらく宴会→酒→うぇろあああ! のコンボに気づいたようである。

「参ったな、じゃあ彼らに向かって腐りかけの食料を投げ込む」

「誰かさんのせいでうちには腐りかけるほど食料が余りません」

「砲撃する」

「吐いた唾を呑み込むな」

「そんな汚いことをするかっ!」

「物のたとえだよっ、ことわざだよ馬鹿中佐!」

「汚物を放り込む」

「………………採用」

「おおう……ってあれ? 何かがおかしい」

 急に黙り込むハリーと不思議そうな表情で止まるカタ。半分冗談を言い続けていた彼女は採用され急に黙り込まれたことに拍子抜けを覚えるとともに、自分こそが上官なのにどうして決定権が部下にあるのかという謎がその思考を占めていた。

「ねぇ軍曹、私中佐で君軍曹なんだけど。偉いの私なんだけど」

「うん、これなら一石二鳥だな」

「ハリー? もしもーし? 聞こえてますかー? “雑巾”のハリー・キサヤさーん……ぷろぉ!?」

 うんうん頷いて笑みを深める部下とここぞとばかりに煽る上官、そして上官は殴られる。何もなかったかのような彼は極上の笑顔で物言わぬ上官に作戦を話し出した。とはいえ一言で済むので話すというよりは告げる、そして同時に突き落とすとも変換できた。

 

「中佐があっちに移ればいいんです」

 

 言うや否や艦長用の電電虫で曹長を呼びつける。やってきたラマラはふらふらのカタを見て間の抜けた顔を披露した。

「で、なんでしょうかハリー副官殿、というか中佐どうしてぼろぼろなんです?」

「来たか、ち○こ曹長」

「ふざけんな馬鹿野郎っ、俺はラマラだ!」

「ふむ、では唾が臭い曹長」

「ラマじゃねぇよ! ラマラだよ!」

「失礼した、ではラマラ曹長」

 はぁ、と息を吐き出すラマラ。

 ちなみに彼の認識上ではハリーは完全にカタに毒されている。というより一月以上副官が務まった人物は稀なので、その時点でカタとハリーはセット扱いであった。

 そんなことは露知らず、立て続けにストレスを発散させたハリーは今後の展開と先ほどの侘びとしてラマラにあることを告げた。それを聞いたラマラの口が曲がる。答えは明白だった。

 二人はがっしりと固い握手を交わし、同時に一点を見た。その先にいるのは事態を呑み込めない中佐で艦長である。

「え、何、何なの?」

「説明もなく失礼しました中佐、今しますよ」

「大丈夫です、後のことはお任せください」

「いや二人とも不気味な微笑みで近づかないでよ。そ、曹長、君も普通にしてなよっ」

 アルカイックスマイルの二人に詰め寄られるカタは泣き出しそうである。傍から見るとえらい光景だが、あいにくここは海の真っ只中の一室である。助けは来ない。

 

「中佐、毎日吐くでしょう? それをあっちでやってもらいたいんですよ」

「そうすればあの船は汚れ、臭くなります。更にあっちの食料も減り、ストレスと空腹で一気に弱弱しくなるはずですよ」

 食料庫にもダメージを与える精神攻撃、実益だけを見れば確かに有用である。しかしカタは迫る圧力が恐ろしくて頷けない。

「で、でも海賊が私を乗せてくれるわけが――」

「大丈夫でしょう、中将の命令と言えば麦わらは納得しそうですし、手を出さないってことは伝えてあるんだし」

 そうだそうだ、とガヤ担当のラマラ。ハリーは一気に距離を詰め、机に両手を打ちつけた。

「物は試し、やりましょう」

「は、はひ……」

 涙目の女性、それに更なる嗜虐心を煽られたハリーは既に決定された計画の実用性を彼女が絶叫するまで話し続けた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 という流れでやってきた麦わら海賊団、海賊が周りにいるという雰囲気が一名以外微塵もないので割と心地よかったりする。料理は美味しいし。

「でも不思議ね。ルフィのお爺さんはどうしてこんな命令を出したのかしら?」

 ナミが新聞を置き呟く。海軍将校をたった一人で敵艦に放り出す任務とは何なのだろうか。

「って嫌がらせだっけ」

「そうそう。私嘘つけないから信用していいよ」

「まずその言葉を信じなきゃいけないけど……」

「大丈夫だ、嘘じゃねぇから」

 眉間にしわを寄せナミ、そこにいつの間にかやってきたルフィが口を開いた。

「どうして?」

「勘」

 自信満々に言ってのける船長にナミは深く息を吐いた。動物的直感は信頼しているし、言っても無駄だとわかっているからだろう。そんな彼女に親近感が湧いてくるカタ。

「ねぇみかんさん、お酒飲もうよ」

「まだ昼間でしょ。それにまだ無理よ」

 まだそこまで信用していない、暗にそう告げていた。そっか、と彼女があっさり引いたのもそれを理解しているからである。元より海軍と海賊、相容れることはないのだ。

「ちぇー、ちぇー。固いこと言いなさんなって、私の奢りだよ?」

「あなたが食べてるもの全てがうちの備蓄だってこと忘れてない?」

「麦わらよりは食べてないよ、私」

「そしたら今すぐ海に放り出しているわ」

 簡潔に告げるナミに唇を尖らせ、カタは船長であるルフィを見た。彼の口がもごもごと動いている、肉だった。

「おいしい?」

「あひゃりまへだ!」

 当たり前だ、と言ったのだろう。しかしその当たり前がいつまで続くか見物である。

 

 カタは立ち上がり、ルフィの正面に立つ。彼女のほうが小さいので少し見上げる形だが、それでも妨害は容易だ。

「ふ、その至福がいつまでも続くと思うな」

「ひゃんわと?」

「うぇろあああああっ!」

「ぎゃあああああああ!? 俺の肉っ!?」

 カタが吐き出した吐しゃ物がルフィの口に捕獲されている肉を襲う。虹色の胃液は肉とルフィを襲い、逃げ遅れたルフィはその被害をもろに受ける。悲惨だった。

「お前っ、なんてことするんだ!」

「うぷ……どうだ、私の自己犠牲アタック…………」

 口元を拭うも顔色は真っ青、今にも倒れそうなカタは強がりを維持しながら不適に笑う。顎が外れんばかりに怒り狂うルフィを冷ややかに見つめながら、しかし彼女は一つの達成感と適度な敗北感を覚えていた。

 その敗北感が足を襲い、揺れも同調してカタは膝を着く。涙が輝いていた。

「私は……汚物か…………っ」

 ハリーの言葉を思い出す。彼が採用した案は『汚物を放り込む』というもので、実際に送り込まれたのは自分自身という屈辱。そしてそのとおりにぶちまける己の不甲斐なさ。

「貝になりたい……」

 もう生きていたくないほどに気分が沈んでくるも、その間敵船の船長は不快感に苛まれていた。

「くそ、もう食えねぇ」

 ゲロまみれの食べかけの肉を捨てる。瞬間、後頭部に高速の蹴りが直撃した。

「てめぇルフィ、食いもん捨てるたぁいい度胸だ! 晩飯いらねぇんだなっ!」

「ぶろっ!? さ、サンジ待ってくれ!?」

「言い訳無用っ!」

 そして始まるコックと船長の死闘。見事に仲間割れを誘発したカタだが、

「貝に、なろう……」

 奈落に落ちたテンションのままそこに横たわっていた。ちなみにゲロはまだ掃除されていない。

 

「人として恥ずかしいわ」

 ロビンは我関せずを決め込みつつも呟き、チョッパーは何故だろう、鼻に棒を挿してドジョウ掬いをしていた。

「なぁゾロ、これでもまだ警戒するのか?」

 ウソップが見下ろす地獄絵図、それを眺めたゾロは大きく肺の空気を吐き出し横たわった。

「寝る」

「おう、俺はその間究極の脅し兵器を開発するぜ」

 おもちゃのゴキブリを詰め込んでいるウソップを尻目にゾロはいびきをかく。穏やかな日々だった。

「ち、負けちゃいられねぇ。俺も究極のビーム兵器、いや究極のマシンフランキー将軍をだな……」

 大工魂をなぜか刺激されたフランキーはぶつぶつ呟きながら船室に消えていった。彼は既に全ての事象を放棄している。

「はっ、貝は生きている。なら死んだも同然の私がなることは不可能! やっぱり私は螺子になろう……」

 どこまでだって捩れてやる。意味不明な決意を胸にカタは沈む。

 そのまま昼寝した。

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 そして、この一連の騒動で得をした二人の人物は肩の荷が下りたことを心底喜んでいた。

「まさかゲロを見ない日が、掃除しない日がやってくるなんて……」

「くうふふ、今は俺が艦長だ。野郎共っ、今日は大食漢がいねぇっ、好きに食え!」

「うおおおおおおおおおおっ!」

 訂正、数多の人物が得をしていた。

「でも、中佐がいないと癒されない……」

「うおおおおおおおおおお……っ」

「病だな」

 更に訂正、やはり得したのは一人だけだった。

 

 

 

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