かたなリバース   作:白山羊クーエン

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BTTFは見ていない

 

 

 

 モンキー・D・ルフィが走り出す二時間前、スパイラルガーディアンへの道を歩んだ二人の人物は、しかし少女のわがままによって二手に分かれることになった。

「……イリカ、あまり一人になるのは歓迎しない」

「うるさいなぁ、いいじゃない。イリカってばいくつなのよぉ」

 ヒゼンは黙る。身体的な年齢を言えばいいのか、それとも精神的なことを言えばいいのか。

 身体の面で言えばイリカ・レベッカは確かに16歳で、精神の面で言えば彼女は4歳の赤ん坊でしかない。それもしかし、不幸中の幸いなのかとある事象によって4年前よりは格段に発達しているのだが、青年にとって心配の種であるのは変わりがなかった。

「イリカ、でもね」

「ヒゼンも少しはイリカ離れの練習をするべきなのよっ」

「…………」

 腰に手を当てて唇を尖らせる少女の真っ赤になった顔を見てヒゼンは溜息を吐く。最早平行線は変わらない、ならば折れて交わる役割は彼しかいない。

 すぐ戻ると告げてヒゼンは掻き消えた。それを数秒待ち青年が帰ってこないことを確認したイリカは空を見上げる。真っ赤な青空、とても澄んでいて気分が悪い。

「あーあ、これからどうしようかなぁ」

 先ほど青年を去らせたわがままを忘れたイリカはゆっくりと歩いていく。歩行は淀みなく、澱みしかない。妖精の島に嫌われた少女はそのまま長い坂道を上り始めた。思考と並行して行われる歩行、それがゆっくりなのは当然であり、また子どもである少女がこのなだらかで長い山道を登りきることが不可能なのもまた当然だ。すぐに疲れ、または飽いて止まるのは必然。しかしそれ以上に、

「んー?」

 その坂は彼女を拒絶するように傾斜を高くしていく。普段どおりで十分なのにも関わらず、それ以上の苦痛を与えるかのように。既に地平線とほぼ直角になるまでに角度を変えた大地はある種絶景だろう。

 しかし、哀しいかな。

 

 少女は何の問題もないように足をつけて佇んでいた。

 歩みは止まった。しかし拒絶は意味を成さない。

 

 嗤った。少女の目的が生まれてしまった。

 壁を歩く、歩く、歩く。視界にないスパイラルガーディアンが鳴動し、坂は既に直角を越えて天井のようになっている。それでも少女の進行は変わらない。が、その表情は変化を見せていた。不満顔である。

「前が見えない景色が見えない、一寸先は闇のよう……なんてつまらないんだろう」

 ついに足が止まった。蹲り、ひざを抱える。腰を落として両足をぱたぱたと振り上げた。

「まるで人生ねー、最後には自分に全て返ってくることを教えてくれているのかも。進んだはずなのにその道はカーブを描いて、いつの間にか逆戻り。進化と遡行、相反する要素を体現するかのよう」

 顔を伏せ、足を止めた。その現実にスパイラルガーディアンは再び鳴動する。外敵を排したことを喜んでいる。

 

 

 ――ホントウニ、ナンデセカイハコンナニモミニクイ。

 

 

 それが間違いだったことを、知ることになる。 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 しかしどうかね、この島の穏やかさといったらないよ。グランドラインに数多ある島の中でもトップクラスに穏やかだ。露店もおいしいし。

「どうせ吐くんだから食わなきゃいいのに」

「うっさいよ軍曹、私は味覚を楽しんでいるのっ。これは口の中及び食道を越えるまでの嗜好なんだよっ」

 味と食感と喉越しと。これで詩を一つ作れる気がする。妖精焼きそばはどこがどう妖精でどこら辺が普通のものと違うのか欠片もわからないがおいしいのでいいのだろう。うん、だってぶっちゃけこれがゲテモノでも変わらない、どうせ吐くのだ。

「なんか達観してきたなぁ、おばあちゃんみたいで嫌だなぁ」

「ご冗談を、既におば――――なんでもありません」

「最後まで言い切りなよ途中で切って顔逸らさないでよ! まるで私が本当におばあちゃんみたいじゃないかっ!?」

 周りにはたくさんの人がいるのに、これで私がなんか可哀想な視線を受ける破目になったらどうしてくれる! もしくは悲しそうに目を逸らされたら――

「あ、逸らさないでぇ!?」

 言った傍からぁ!?

「もうわかっているんですよ、中佐が若作りなんだと」

 こいつ、こないだいいこと言ったはずなのにまるで態度が変わりやがらない。それがありがたいことなのかそうでないのかわからない。いやありがたいんだけど、でも癪だよね。

 

 現在フェアリーウォーク唯一の都市ピスタリオンにて休憩中です。お供はハリーのみ、私としても気楽なのでいいことである。

 とはいえこいつの自分保護者です的な振る舞いには一言申したいところだ。上司は私、中佐な私、艦長イズ私。彼は軍曹で部下で掃除人なのである。その証拠に彼の腰には今も雑巾が見えている!

「おい雑巾」

「張り倒すぞ」

「ごめんなさ――ぶろぉ!?」

「謝るなら早くしてくださいよ手が動いちゃったじゃないですか」

 こいつ、やっぱり苦手で嫌いだ。

「苦手といえば、中佐は苦手な食べ物ないんですか?」

「独白に切りこむだなんてさすが剣士、死ねばいいのに。苦手はそうだね、食べ物じゃないけどよくお弁当に入ってる緑の奴。なんて言うか知ってる?」

 私は知らないのだが、ここは答えを求めて知ったかぶってやろうと思う。これは断じて嘘ではないのだ。

「バランですか?」

「お、よく知ってたね。褒めてあげようえらいえらい」

「ああ、すいませんバレンでした。で、何が偉いんです?」

「…………」

 こいつのにやにやした顔をめちゃくちゃにしてやりたいと思った私を誰が責められようか。

「それで、何で苦手なんです?」

「……ほら、剣山みたいじゃないか」

「その理由だと他にもやばそうなものがありそうですけど」

 イグザクトリィ。ちなみに他に苦手なものは櫛とかです。だから私はいつも手櫛で髪を梳いているのだ。

 

「それにしても、ここは人口どれくらいなんだ?」

「そんなに多くないはずですよ。やっぱりここが一番栄えていますからね、逆に言えばここ以外は閑散としているかと」

 なんだか次第に人が多くなってきている気がする。時刻がやがてお昼時だということだからか。しかしこう、人混みってなるとちょおっとまずいよね。

「ハリー、吐いていい?」

「いいですよ。ただし頭上に吐いて、落ちてきたものは飲み込んでください」

「そこは“私専用”で妥協させて」

「……まぁいいか」

 このエチケット袋があれば人に迷惑をかけることはそうない、はずだ。鬼畜な要求の軍曹は後でしっかり絞めておくとして今は余裕のあるうちに戻しておこう。

「さむわんわんわん、さむわんわんわん……」

「恐ろしいほどに奇妙な音を出すな」

「やだなぁ軍曹まだだよう、少しでも気分を軽くしようと歌をだね」

「へぇ、聞いたことないですね」

「だろう? これは昔弟に――」

 

 ……………………………………弟?

 

「……中佐、弟いたんですか?」

 ハリーが真面目な表情で問うてくる。私だっていきなり零れた衝撃の事実をうまく呑みこめていないのに、なんだって君がそんな顔をするんだよ……

「…………そうそう、弟がいたんだよ。確か――ナユタって言ったかなぁ」

 そうだ、確か死んだ妹の描いた絵には血で見えない二つの名前のほかに、はっきりと“ナユタ”と書かれていた。その名を今は借り受けているわけだけども、そうか。私は弟に歌を教えてもらったんだった。

 

 でも、なんだろうこの違和感。確かに弟に教えてもらったはずだけど、でも、それはそんな名前じゃなかったような――

 

 

「そ、んな…………」

 

 

 ふと、喧騒に置いていかれそうな小さな声が響いた。ハリーから目を外し、声のほうに振り向く。真っ黒なスーツ、濡れたカラスの羽のような黒髪、額には大きな刀傷がある童顔。軽く見上げるほどの長身の青年は、幽霊でも見たかのような呆然とした表情で私を見つめていた。

「君は……?」

「あ…………」

 首を傾げる私にはっとして、青年は首を振った。目を閉じた彼は諦めのような悲しそうな顔を隠せなかったようだ。流石にそんな顔をされると、正義の海軍たるもの見逃しておけないのです。

「どうかしたのかな?」

「――いえ、ただあなたが知り合いに似ていただけです」

 あなた、と私を呼ぶ。彼は私が外見よりも大人なことをわかっているようだった。それは嬉しくもあり、自分の外見が年齢不相応だという自覚があるんだという悲しい現実をも教えてくれた。

「…………」

「そんなへこんでいないで対応してくださいよ中佐」

「……海軍、か。そうだな、格好を見ればすぐわかるのに、俺も大概馬鹿だ」

 青年は納得したのか呆れたのか、礼をして踵を返した。その後姿が妙に物悲しそうでなんだか心が痛む。心臓が痛いわけじゃないのが現実の厳しさってやつかな。

 

「君、いいかな!」

 だから呼び止めた。その雰囲気は、空気は、やっぱり人として放っておけないのだ。

 青年は足だけを止めて、振り返らなかった。彼と私の間には不思議と人が通らない。動き続ける背景たちはモノクロになり、色があるのが私達だけのようだった。

「私達はしばらくここにいるから何かあったら頼りなさいっ! 子どもなんだからっ、お姉さんには頼るものよっ!」

 青年が――少年が少しだけ震えた気がした。やがてゆっくりと振り返る。泣きそうな顔をしていた。

 心が痛かった。

「――ありがとう、ございます。できるだけ早く、ここからいなくなってください」

 きっと、もう会うことはないと思った。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 可能な限り早く、ここを出て行かなければならない。ヒゼンはイリカのわがまますら放り出して懸命に足を動かした。

 身体能力は決して高くない、むしろ最底辺に位置する彼は、それでも持ちうる最速でスパイラルガーディアンを上っていく。上に向かう道は彼にとって苦ではない。

 だからこそ常識を遥かに超えた速度で頂上に上り詰めた彼は、そこで楽しそうに遊んでいた少女を視界に捉える。案の定と言うべきか、少女の服には新たな色彩が入っていた。

「…………」

 ヒゼンの傍を虚ろな瞳で過ぎていく三人の男。もう手遅れである。

「あ、ヒゼンおっそい! 待ってたんだからぁ!」

 花が咲いたような笑顔で走り寄ってくるイリカの頭を撫でたヒゼンは、ねだり物を求めるイリカを無視して告げる。

「――イリカ、もうここを出よう」

「…………」

「ここにはリタ姉はいないから、次の島に行こう。きっと次の島にはいるはずだから」

「ヒゼン、変」

 そんなことは青年にもわかっている。しかしだからといって態度を変えられるほどの余裕など持ち合わせてはいなかった。両肩に手を置き、目線を合わせる。純粋悪の瞳が青年の顔をまっすぐに見つめた。

「ヒゼン、変よ。おかしいわ。おかしいおかしいおかしいおかしいおかしい……」

 

「――だから、詩を歌おう」

 

「――――」

 その提案は少女には予想外のもので、故に少女は呼吸を止めた。イリカを説得するようにヒゼンは続ける。

「詩を、この島の天辺で詩を歌おう。歌い終わったらこの島を出る。いいかな?」

「――ヒゼン、やっぱり変。歌っていいなんて一度も言ったことなかったのに」

「この島を早く出たくなったんだ。でも俺のわがままで君を連れて行けない。だから歌うんだ。歌い終わればそれで君も納得するだろう?」

 

 

 

 ***

 

 

 

 真摯な願いが届いたなんて都合のいい夢物語を信じるつもりはない。しかし結果的にイリカは了承し、ヒゼンはそれを神に感謝した。

 そして同時に神を恨む。イリカが歌うまでの時間を、きっと彼らは許してはくれない。歌い始めるまでの時間は疎らで、最短で一時間。規則性はないのできっと彼ら次第だろう。彼ら――麦わらのルフィとその仲間。Dの意志。

「…………」

 彼らがこの島に来たこと、あの女性海軍がこの島に来たこと。それが同時期であったことは、全てが偶然とは思えない。きっとそう決められていたのだろうと思う。

 そして、これから始まる惨劇を見て見ぬ振りができないことも知っている。

「でも俺は、イリカを守るって決めたから。どんな罪を背負っても、どんな報いを受けてもいい。それだけは絶対に譲れないんだ……………………俺は間違ってるかな、リタ姉」

 きっと、頬をぶたれるなぁ。

 螺旋と麓の中間で木に背を預けたヒゼンは笑った。今ならぶたれても嬉しいと、おかしな考えをし続けた。

 

 

 

「――時間だ」

 遠くから聞こえる物音は段々と大きくなっていく。ヒゼンはゆっくりと山道の真ん中に立ち、待った。やがて土煙とともに走り寄ってくる一人の人物。それはヒゼンを認め両足で急ブレーキ、立ち止まった。

「お前」

「もう二度と会いたくないって言わなかったか? 麦わらのルフィ」

「さぁ、忘れた」

「それで、お前この先に何の用だ?」

 びりびりとした威圧感が襲ってくる。麦わら帽子を押さえこちらを睥睨する彼は間違いなく海賊だ。ヒゼンが殺したあの海賊に勝るとも劣らない覇気、正直逃げ出したいくらいだった。

「お前、あのおっさんたちにナニカしたか?」

 おっさん、とは先ほどすれ違った彼らだろうか。おそらくはイリカが遊んだ相手、それが彼の逆鱗だったのだろうか。

「してないって言ったら、またはしたよって言ったら、お前はどうするんだ? 麦わら」

「してないならそこをどけ。したんならぶっ飛ばす」

 肩を回すルフィにヒゼンは冷や汗を隠せない。もともと小心者だ、彼のような時代の寵児を押し止められるほど強くはないのだ。ヒゼンは両手で宥めるかのような仕草をした後、軽薄な笑みを浮かべて言った。

「確かに俺はやってないが、まぁやったとも言える。でも待つといい、君一人じゃあここから先には行けないよ。お仲間を待ったほうがいい」

「なんでだ?」

「ここから先は迷路、君一人じゃ行けないんだよ」

「だから、なんでだ?」

 右腕を引き絞り、ゴムの特性ゆえに腕が伸張する。ヒゼンが顔を強張らせる間もなくそれは解き放たれた。

 伸縮を利用した一撃はヒゼンを容易く吹き飛ばし彼は地を滑る。しかしその勢いのままに飛び跳ねて体勢を整えると危なげなく着地した。傷はない。

「…………」

「おっさんをどうにかしたお前の言うことを、なんで俺が聞かなくちゃいけねぇんだ?」

 ヒゼンにはわからない。モンキー・D・ルフィがどうしてここまで動いているのかということがわからない。

 しかしそれは彼にとって関係のないことであり、ルフィが動いているという事実だけが重要だった。汚れを払い、また薄く笑った。

「君はどうしてそんなに怒っているんだ? そのおっさんとやらは君にとって重要な人物だったのか?」

「別に。さっき会っただけだ」

「ならどうして? どうしてさっき会ったばかりの見知らぬ存在のためにそこまでの感情を励起させているんだ。海賊の君は、そんな些細な出会いにも日々感謝しているというのか?」

 ルフィは指を鳴らし、首を鳴らした。特に変化はない。ヒゼンの言葉にも何の反応もない。それならそれでいいとヒゼンは思った。

 

「この島はいい島だ。食いもんはうめぇし、あったけぇし、気持ちがいい」

「そうだな、ここはいい島だ」

 実に都合のいい島だ。

「だからお前はぶっ飛ばすぞ」

「……よくよく考えれば、君と話をして終わり、なんて都合のいいことは有り得なかった。島自体は良くても、君はよくなかった」

 首を振り、ヒゼンは溜息を吐いた。彼に戦闘の意志はない、彼の目的は時間だけだ。だからこそこの状況は歓迎で、今ならまだ引き伸ばせると感じていた。

 その為には相手の注意――ひいては興味を引かなければならない。ならばここは、現状を教えると共に昔話でも語ろうか。

 

「――そういえば麦わら。おかしいと思わなかったのか?」

「何がだ」

「自分が普通に走っていた、ということさ」

 ルフィはその事実を反芻し、なお首を傾げた。それはどこがおかしいのかということではなく、おかしかった大地がどうして普通になってしまったのかという原因に対する反応だった。ヒゼンは島の反発についての知識を話し、改めて口を開いた。

「島が悪だと判断したものは弾まない、という常識で考えるなら、君も島に害悪だと判断されたことになるけど、そうじゃない。もう島にそんな力は残っていないんだ。なんせ、島の動力源であり象徴でもある螺旋の大山スパイラルガーディアンが死んだからね」

 ルフィは沈黙した。今度こそわけがわからないようだった。自分の説明が難しかったのかと少し沈んだヒゼンは彼にもわかるように噛み砕いて話す。

「つまり、弾むために必要だった螺旋の大山はもう死んだんだ。だからもう二度と誰も弾まない」

「……要はもう不思議島じゃなくて、それはお前が原因だってことか?」

 七割五分正解だ。イリカの所業はヒゼンの責任でもあるが、あくまで実行犯はイリカである。

 

「――君は俺の事を知らないだろうから自己紹介しておくよ、モンキー・D・ルフィ。俺はヒゼン・ソーマ、昔の名前は相馬肥前。懸賞金二億ベリーで“導き”って言われてる」

 昔の名前を語ったのは、ルフィで三人目である。最初の人はイリカ、次はイリカの姉だった人。

 尤も、イリカは順番は気にしないと言って気にも留めず、姉はそっかと儚く笑った後、嬉しいことを言ってくれた。

 相馬肥前の大切な思い出。

「懸賞金があるのはとある海賊を殺したから。実質俺はそいつだけしか殺してないし海賊でもないんだけど、そいつが二億の賞金首だったからそのまま挿げ替えったって感じかな。額の傷はその時のものだ」

 ただ一人、村を襲った海賊ではない者を殺した。村の中での出来事ではないし、村が破滅した後の話だ。自分で決めて殺したが、最初から殺そうと思ったわけじゃない。ただ一つの目的のために殺すしかなかった。

 それだけのことだが、それだけでいいのである。

「そしてモンキー・D・ルフィ、悪魔の実超人系ゴムゴムの実を食ったゴム人間。東の海のフウシャ村で育ち、海賊赤髪のシャンクスに憧れて海賊になる。二つ名の麦わらは彼の物で、いつか返しに来いと言われている、だっけか」

「お前、何でそんなこと知ってるんだ……」

 ルフィは若干驚いた表情で尋ねた。それに内心で笑みを浮かべたヒゼンは両手を広げ、大仰に言い放つ。

 

「――俺は未来から来たんだ」

 

 

 

 直に海賊狩りのゾロがやってくるだろう。せめてその時までは、彼をここに足止めしておきたい。願うなら一味を全員、自分の手の届く範囲で動きを止めて。

 そして願うなら、あの人が既に島を出てくれていれば言うことはない。

 

 

 

 彼らの冒険をここで止めることになろうとも、イリカがいてくれればそれでいい。

 

 

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