Re:ゼロから始めるパ・リーグ観戦日記   作:パンナコッタ伯爵

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祝開幕

長い間、待ち望んでいた。

湖のように澄んだ薄青の瞳に自分のーーーナツキスバルの顔が映しだされるこの日を。

 

「スバルくん?どうしたんですか?」

 

ずっと、聞きたかった。

必ず取り戻す、と決意してから毎日。朝日が登り、月が世界を照らし、幾日も幾日も…聞くことの叶わなかった鈴のような声音を。

 

「もう、どうしたんですか?…キャ!?

ス、スバルくん?レムとしてもスバルくんに抱きしめられるのは嫌では…いえ、吝かではないのですが…その、いきなりは恥ずかしいです。」

 

一瞬、戸惑いの声をあげるもスバルを抱きしめ返して頭を撫でて落ち着かせてくれる。その事実にスバルは言い知れない幸福が身体の底から湧き上がってくるのを感じる。

 

 

「もう、スバルくんは仕方ないですね。何か怖い夢でも見たんですか?

レムはここにいます。スバルくんの側にいつでも居ますよ。

…だから、安心してください。」

 

その言葉を聞き、スバルはレムがそこに本当にいるのだと実感する。

 

「大丈夫ですか?それではレムは準備を整えてきますのでスバルくんも顔を洗って、身支度を整えていてください。

それでは、失礼します。」

 

スカートの裾を持ち上げ、お辞儀をするとレムはスバルの部屋から退出する。

洗面台と向き合い、泣き腫らした目を見たスバルは我ながら情けない姿を晒してしまったものだと自嘲する。

しかし、それでも先程の反応は仕方がなかったのではないだろうか?

『暴食』の権能により、自分以外の全てから存在を消し去られてしまい、自らも醒めることのない眠りに陥ってしまった眠り姫。そんな彼女が何の前触れもなく目覚めたのだから…

 

「…だけど、なんで?」

 

レムが目を醒ましたのは確かに嬉しい。

この日をずっと、待ち望んでいたのだから。しかし、待ち望んでいたからこそ不安も生じる。

『暴食』の権能の力は本物だった。その忌まわしき力を解くためにスバルは全ての努力を重ねてきたのだから。

 

「スバルくん?準備はできましたか?」

「あ、あぁ…。悪ぃ、待たせちまったな。」

 

どのくらいの時間悩んでいたのかは分からないが、相応の時間が流れていたらしい。

悩んでいても分からない。しかし、今はレムを不安にさせたくなかった。スバルは気持ちを切り替え、笑顔で扉を開けた。そして、その目に映り込んだのは…

 

「いえ、全然待っていません。レムにはスバルくんを待つ時間もかけがえのない素晴らしいひと時ですから!」

 

大文字のBが目立ち何故か牛のツノのようなものが生えた野球帽を被り、右肩に球団ロゴが刺繍され、胸にはチーム名がアルファベットではち切れんばかりにその存在を主張する白いベーシックなユニフォームを着ている。瑞々しく白い脚が太腿まで見えるまでのミニスカートに白い靴下と水色のシューズを履いたレムだった。

 

「…えっと、どったの?レムりん、その格好?」

「もう!何を言ってるんですか!スバルくんったら何の準備も出来てないではないですか!こうなったら、レムがスバルくんのお手伝いをさせていただきます!」

「え、ちょ、まっ…イヤーーー!!!!????」

 

 

 

 

 

「もう、スバルくんは本当に手が焼けます。でも安心してください、レムはそんなスバルくんのことも大好きですから。」

「ちょっーと、色々な事態についていけてねぇんだけど、説明してくれる?」

 

レムによって、着ている服を強制的に変更させられたスバルはとりあえず事態の説明を求めた。

レムの復活により気付かなかったが、そもそもスバル達が居たのはロズワールの屋敷ではなく、日本の何処にでもありそうなありふれた家の中だった。

少しだけ普通の部屋と違う部分があるとしたら、カレンダーに野球選手が描かれており、部屋にはユニフォームを着た牛をモチーフにしたようなデザインのぬいぐるみや狸のぬいぐるみが置かれていたりする。

 

「確かに今日はなんだか様子がいつも以上に変ですね。分かりました、何でもレムに聞いてください!」

「何だか、サラっとディスられた気がするけど…まぁ、いいや。

えっと、とりあえずここはどこ?ロズワールの屋敷じゃないのは一目瞭然なんだけどさ。」

「ここはレムの家です。今日が開幕だから、スバルくんはレムの家に昨日から泊まりにきてくれていました。」

「開幕って何の…まぁ、いいや。えっと、それじゃあ姉様は?レムと2人っきりでいたら何か言ってきそうなもんだけど。」

「姉様は仙台のロズワール様のお屋敷にいます。」

「仙台!?ちょ、あれここはルグニカ王国じゃねぇのか?」

「スバルくん?まだ寝ぼけているのですか?ここは日本の大阪です。

いけません!そろそろ移動しないと新幹線の時間に間に合わなくなってしまいます!スバルくん、僭越ながら抱えさせていただきますね。」

「ちょ、レムりん?新幹線って、えっ!?日本どゆこと??

てか、…お姫様抱っこはやめてーー!!」

「ごめんなさい、本当に時間がないので駅までこのまま走って行きます。恥ずかしいかもしれませんが、開幕戦に間に合わせるためです。暫くのご辛抱を。疑問点は走りながらお応えしますから!」

 

そういって、レムは両手に荷物をぶら下げて、巨大なリュックを背負うとスバルを抱えて走り始めた。

 

「てか、荷物多くね?」

「いえ、普通です。」

 

 

 

 

 

 

場面は移り変わり新幹線にて、スバルは状況を整理していた。

「(要約すると、何故か俺は日本に帰ってきていて、どういう訳か復活したレムと一緒にいる。で、今俺らはプロ野球の開幕戦を観に埼玉に移動している。)と、うん、どうしてこうなった?」

 

「スバルくん、他に何か聞きたいことはありますか?」

「んや、とりあえず大丈夫。まったく何も理解できないってことが分かった!」

「流石、スバルくんです!簡単なことですら理解できないことに対してのその前向きな姿勢!素晴らしいです!」

「いや、それ褒めてないよね?

…で、レムが応援してるのが…。」

「はい!檻ックス・バッファローズです!」

 

右手にチームロゴが印字されたメガホンを、左手に空気入れるタイプのダンベルを持ってレムは笑顔で応える。

 

「いや、メチャクチャ可愛いから気にしないでいたけどさ、新幹線の中でこのフル装備は恥ずかしくね?」

 

レムと2人で檻ックスのユニフォームで完全武装されたスバルはレムに尋ねる。因みにスバルは膝の上に、レム曰く『ぶるくんべるちゃん人形』を抱えている。

 

「何を言ってるんですか?開幕ですよ!待ち望んだ開幕です!このくらい当たり前じゃないですか!」

 

レムは頬を膨らませて当たり前だと声高に主張する。

そんな様子が可愛らしく、周りから微笑ましいものを見るような目線が刺さっているのをスバルは我慢しようと心に決めた。

 

 

 

 

 

 

「…それにシーズンで唯一と言ってもいい、一位としての試合が観れるんです。今日くらいハシャがないとやってられないじゃないですか。」

 

「ん?どったのレムりん?」

「いえ、何でもありません。気にしないでください。あっ、バッファローズポン太郎が更新されてますよ!今日も可愛いですね!」

 

レムはスバルに身を寄せてスマホの画面を見せてきた。

その状況にスバルは確かな幸福を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、スバル!レム!来たわね!今日は宜しくお願いします。」

東京に着いたらエミリアが2人を出迎える。

 

「エミリアたん!?どったのその格好?

いや、俺らも人のことは言えねーし、眼福だし、むしろありがとうございます!」

「エミリア様、お待たせ致しました。お出迎え頂きありがとうございます。」

 

スバルはエミリアの姿を見て、顔を真っ赤にさせると突然お礼を言い出した。

ちなみにエミリアは髪をリボンで纏めて『Ryans』と大きく胸元に書かれたユニフォームを上から五個目のボタンまでを留めて下の方を結び、パックの絵が描かれたミニスカートを履いたヘソ出しの刺激的なスタイルをしている。

 

「スバル!?え?変だった?

でも、パックにこれが野球応援の基本スタイルって聞いたんだけど…。ねぇ?パック?本当にこれって正しいのよね?」

「勿論さ、リア!何も可笑しいところはないさ、ウチの子はいつも可愛いから何にも問題はないよ、ね?スバル!」

「モチのロンですよ!さっすが、パック分かってるぜ!」

「そう、それなら良いんだけど…もう!スバルったら変なこと言っちゃっわないでよ!びっくらこいちゃったじゃない!」

「びっくらこいたって、きょうび聞かねぇなぁ。」

「それから、レム!今日は宜しくね!今日は檻ックスをぎったんぎったんにしちゃうんだから!」

「いえ、例えエミリア様とは言え今日は…今年こそは、そう今年こそは檻ックスが白星を貰います!例え、強打のライアンズが相手とは言え一歩も引きません!」

 

エミリアとレムはとても仲良さげに話している。ルグニカにいた頃も仲は悪くはなかったが、こちらの世界では(レムは相変わらず敬語を使っているけれども)より距離も近く打ち解けあっている様子である。

 

「はいはい、それじゃ球場に行くまでまだまだ余裕があるから何処かでお昼でも食べて行こうか!」

 

パックに促され、スバルたちは一先ず駅を後にするのだった。

 

 

 

 

「「「「ごちそうさまでした!」」」」

食事を終えた3人と1匹は手を合わせるとそう言って雑談に耽っていた。

 

「ねぇ、レム?

レムは今年のパ・リーグはどうなると思う?」

「はい。今年こそは檻ックスが覚醒の時を迎えると信じています…が、やはり強敵はハードバンク・ポークスだと思います。」

「そうね、ポークスは投打共に隙がないものね…。ベアトリスも『今年もポークスが貰っちゃうかしら、今年は去年負け越したロッテリア・マリナーズにも勝ち越して完全優勝なのよ!』って高らかに宣言してたものね。」

「それに対してフレデリカも『いいえ、我らがロッテリアも負けませんわよ』って意気込んでました。」

「ベア子はポークス推しでフレデリカはロッテリア推しなのね。で、姉様は天楽・ゴールデンラークス推しだったよな。他のメンツはどこ推しなんだ?」

「ガーフィールはフレデリカと同じでロッテリアを応援してるわ。あそこは皆千葉出身で、いつも本拠地で試合があるときはリューズさん達と一緒に試合を観に行ってるわ。」

「ロズワール様とオットー様は姉様と同じで天楽推しです。オットー様は天楽から商人魂を感じるって仰っていました。」

「へー、じゃ日本公・フードファイターズは誰が応援してるんだ?」

「公は特に私たちの知り合いで応援してる人は今のところいないわね。

現地で仲良くなった人は何人かいるけどね。」

「あのメンツとの関係を仲良くなった、と言えるリアは本当に大物だと感じるね。」

「何かパックが不穏なこと言ってた気がするけど…まぁ、いいや。で、誰か注目の選手とかいるのか?」

「はい、レムは檻ックス自慢の最強ローテを推します!山元、山丘、宮木、田島、山幸の5人は年も若く12球団最強と言っても過言ではありません。」

「私は玄田のすんごい守備を今年も楽しみにしてるわ。センターに抜けた!って思うような当たりを簡単にとるのよ!凄いんだから!」

「なるほどな、なら今日はその辺りを楽しみにしてみるか。えっと、檻ックスなら山元でライアンズは玄田だな。俺、野球観戦なんて初めてだから何にも分かんねぇけど、ちょっと楽しみになってきたぜ他に見所とかある?」

「……はい、檻ックスは今2010年に白星を挙げて以来、一度も開幕戦を勝てていません。今年こそは勝って…勝ってくれます。そこも、注目ポイントの一つです。」

「お、おう。そんな感じなのか。ま、まぁ今年こそは勝ってくれるさ!」

「いえ、勝てなくても…せめてバント安打一本のみで負けたり、サヨナラ満塁ホームランを打たれないでいてさえくれればそれで良いのです。レムは…レムはもう、開幕から絶望を味わいたくはないのです!!」

「レム…、大丈夫だ。安心しろ。俺がいる。今年こそは勝てるさ!」

「…スバルくん!」

「まぁ、スバルが居ても居なくても檻ックスの勝敗に直接の影響はないんだけどね!」

「パック!ちっとは空気読めよ!

だ、大丈夫だレム!例え負けても俺が慰めてやるからよ!」

「スバルくん…はい、ありがとうございます。スバルくんはレムの英雄ですから。」

「おう!任せとけ!」

「ふふ、2人は相変わらず凄く、凄ーく仲良しさんなのね。」

「それじゃあ、そろそろ球場に向かおうか!試合が始まる前にグッズ買わなきゃいけないしね。」

 

こうして、一行は球場へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




レムやエミリアの姿はパ・リーグコラボの服装でその他のキャラも同じ服装です。
レムはそれプラスでツノの付いてる帽子を被ってます。

あと、チーム名は分かりにくいかもですがそのまま使っていいのか分からないので、漢字にしたり付け足したりして少し弄ってます。
もっといい、チーム名とかあったら教えて頂けたら幸いです。

今年こそ、開幕戦勝ったらいいなぁ…と心の底から思ってます(切実)
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