ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。   作:湯川彼方

10 / 65
日本ダービー(中等部1年)~友達と仲間とライバルと

さぁ、各バゲートに収まりました。

 

スタートしました!

各バきれいな…おっと一頭遅れている…これは、シルフィードだ!

2番人気のシルフィードが今日も出遅れている!

 

先頭から見ていきましょう。

前につけたのはカザマゴールド、今日は逃げ切ることができるのか?

そして、2番手に1番人気のマキシマム。先頭を伺う勢い。

 

その後ろに集団がついていきます。

人気のユメノタローやグラングローリーもこの位置。

 

…そして最後方からシルフィードが追っていきます。

 

 

 

 

 今日は絶対ハイペースになる。

 

 

 何の根拠も無いけど、レース前のマキシマムさんの様子を見た私は、そう確信する。

 

 ゴル、無理しちゃダメ。レースの途中の先頭なんて、マキシマムさんにあげても構わないでしょ?

 ユメちゃん達も、長丁場なんだから自分のペースを守らないと…

 

 …レース中に他の娘の事を考えるなんてね。

 それだけ、周りの様子が見えてるのかな?

 

 

 ほら、あそこにスペースが空く。

 なら私はそこへ入って行こう。

 

 

 勝負所まで、少しでも力を残しておくんだ…

 

 

 残り1400mの標識、体感ではやっぱりものすごく速い。

 前の娘達が下がってくるのを避けつつ、ボクはポジションを上げていく。

 

 

 第3コーナーから第4コーナー。

 今日のレースは東京レース場。直線は長い。

 

 前に残っているのは、ゴルとユメちゃんとグラちゃん。

 …そしてそれよりも遥かに前にマキシマムさん。

 

 私はゴル達を避ける為に、大きく外側へ行こうと…そう思った瞬間。

 

 

 3人が後ろを振り返って…

 

 

 そして私が通る道を空けてくれた。

 

 

「「「後は、任せた!」」」

 

 

 みんな、ありがとう!

 

 

 

 東京レース場の直線を、シルさんが駆ける。

 だが、マキシマム先輩に追いついたと思った瞬間…マキシマム先輩が突き放す。

 

 まるで皐月賞のゴール前を髣髴とさせる姿。

 

「やはり強いな、マキシマム。」

「あ~、マックスパイセンの根性はイカれてますからね」

「…お前にその根性の一片でもあれば、三冠馬にでもなれると思うんだがなぁ」

 

 ひかりさんとストさんが話をしている通り、マキシマム先輩の勝利に対する執念を感じる。

 

 

 でも…

 

 

 それは私の…

 いえ、チームの想定通りです。

 

 

「…付け焼刃だが、マキシマムに勝つにはやはりこれしか方法が無かったかもな」

 

 

 この事態を想定し、シルさんはダービーまでの期間を徹底的に二つの練習に費やした。

 

 

 その練習はプールと坂路。

 シルさんのトモ(ふともも)を徹底的に鍛える練習。

 

 

「えぇ、今のシルさんのスパートは2段階ですからね」

 

 勝負根性を発揮させる隙を出さず、一気に追い抜く。

 それが、シルさんの勝機。

 

 

 

 

 

 残り300メートル。

 

 ゴール前の坂は登り切ったし、前に残るのは綺麗な直線のみ。

 仕掛けるのはここしかない。

 

 

 …ふと、マキシマムさんの言葉が思い浮かぶ。

 

 

『レースは自分が強ければ勝つ』

 

 その言葉が、ボクたちを侮っているからじゃ無い事を今なら解る。

 才能に胡坐をかかず、努力を積み重ねた自分への自信が、自然とその言葉を出したんだろう。

 

 確かにキミはボクたちの誰よりも努力してきたのかも知れない。

 それにボクたちの誰よりも才能もあるかも知れない。

 

 

 でも、私は…私たちは、一人で走っているんじゃない。

 

 

 今日までの練習を見てくれたひかりさんを

 サポートしてくれたチームのみんなを

 道を譲ってくれた友達を

 

 

 思うだけで、ボクにはいくらでも力が湧いてくる!

 

 

 ボク一人の力じゃ勝てなくても、皆の思いも全部ボクの力になる!

 

 

 だから…

 

「これがボクの全力だぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 残り200メートルの標識を過ぎる。

 

 

『これがボクの全力だぁぁぁ!!』

 

 

 シルフィードさんが更に速度を上げる。

 私は…いつも通り決して手を抜いていない。

 

 

 “自分の力を出し切れれば必ず勝てる”

 

 

 その信念で練習を重ねた私を、ここで置いて行こうとする。

 

 

 …あなたは本当に凄いです。

 やはり、あなたが出ない不戦勝のダービーなんて、意味が無かった。

 

 

 だからこそ、私はあなたに負けたくない。

 

 

 自分の力を出し切っても勝てないなら…

 

 

 自分の力以上の物を出せば良い!!

 

 

「私は、絶対に負けない!!」

 

 

 

 

 

残り100メートルを切った!

マキシマムが、もう一度差し返してきた!!

 

2人とも必死の形相!

これは、体勢の勝負になるか!?

 

2頭並んでゴーーール!!

 

私からはどちらが勝ったか、まったく解りません!!

 

写真判定の結果を待ちましょう!




「「凄い、マキシマム(シルフィード)さん…」」

「「え?」」

「マキシマムさんの方が凄いじゃん!」
「いや、シルフィードさんの方がもっと凄いもん!」

 こうして、思いが繋がれていく。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。