ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。 作:湯川彼方
さぁ、各バゲートに収まりました。
スタートしました!
各バきれいな…おっと一頭遅れている…これは、シルフィードだ!
2番人気のシルフィードが今日も出遅れている!
先頭から見ていきましょう。
前につけたのはカザマゴールド、今日は逃げ切ることができるのか?
そして、2番手に1番人気のマキシマム。先頭を伺う勢い。
その後ろに集団がついていきます。
人気のユメノタローやグラングローリーもこの位置。
…そして最後方からシルフィードが追っていきます。
…
今日は絶対ハイペースになる。
何の根拠も無いけど、レース前のマキシマムさんの様子を見た私は、そう確信する。
ゴル、無理しちゃダメ。レースの途中の先頭なんて、マキシマムさんにあげても構わないでしょ?
ユメちゃん達も、長丁場なんだから自分のペースを守らないと…
…レース中に他の娘の事を考えるなんてね。
それだけ、周りの様子が見えてるのかな?
ほら、あそこにスペースが空く。
なら私はそこへ入って行こう。
勝負所まで、少しでも力を残しておくんだ…
残り1400mの標識、体感ではやっぱりものすごく速い。
前の娘達が下がってくるのを避けつつ、ボクはポジションを上げていく。
第3コーナーから第4コーナー。
今日のレースは東京レース場。直線は長い。
前に残っているのは、ゴルとユメちゃんとグラちゃん。
…そしてそれよりも遥かに前にマキシマムさん。
私はゴル達を避ける為に、大きく外側へ行こうと…そう思った瞬間。
3人が後ろを振り返って…
そして私が通る道を空けてくれた。
「「「後は、任せた!」」」
みんな、ありがとう!
…
東京レース場の直線を、シルさんが駆ける。
だが、マキシマム先輩に追いついたと思った瞬間…マキシマム先輩が突き放す。
まるで皐月賞のゴール前を髣髴とさせる姿。
「やはり強いな、マキシマム。」
「あ~、マックスパイセンの根性はイカれてますからね」
「…お前にその根性の一片でもあれば、三冠馬にでもなれると思うんだがなぁ」
ひかりさんとストさんが話をしている通り、マキシマム先輩の勝利に対する執念を感じる。
でも…
それは私の…
いえ、チームの想定通りです。
「…付け焼刃だが、マキシマムに勝つにはやはりこれしか方法が無かったかもな」
この事態を想定し、シルさんはダービーまでの期間を徹底的に二つの練習に費やした。
その練習はプールと坂路。
シルさんのトモ(ふともも)を徹底的に鍛える練習。
「えぇ、今のシルさんのスパートは2段階ですからね」
勝負根性を発揮させる隙を出さず、一気に追い抜く。
それが、シルさんの勝機。
…
残り300メートル。
ゴール前の坂は登り切ったし、前に残るのは綺麗な直線のみ。
仕掛けるのはここしかない。
…ふと、マキシマムさんの言葉が思い浮かぶ。
『レースは自分が強ければ勝つ』
その言葉が、ボクたちを侮っているからじゃ無い事を今なら解る。
才能に胡坐をかかず、努力を積み重ねた自分への自信が、自然とその言葉を出したんだろう。
確かにキミはボクたちの誰よりも努力してきたのかも知れない。
それにボクたちの誰よりも才能もあるかも知れない。
でも、私は…私たちは、一人で走っているんじゃない。
今日までの練習を見てくれたひかりさんを
サポートしてくれたチームのみんなを
道を譲ってくれた友達を
思うだけで、ボクにはいくらでも力が湧いてくる!
ボク一人の力じゃ勝てなくても、皆の思いも全部ボクの力になる!
だから…
「これがボクの全力だぁぁぁ!!」
…
残り200メートルの標識を過ぎる。
『これがボクの全力だぁぁぁ!!』
シルフィードさんが更に速度を上げる。
私は…いつも通り決して手を抜いていない。
“自分の力を出し切れれば必ず勝てる”
その信念で練習を重ねた私を、ここで置いて行こうとする。
…あなたは本当に凄いです。
やはり、あなたが出ない不戦勝のダービーなんて、意味が無かった。
だからこそ、私はあなたに負けたくない。
自分の力を出し切っても勝てないなら…
自分の力以上の物を出せば良い!!
「私は、絶対に負けない!!」
…
残り100メートルを切った!
マキシマムが、もう一度差し返してきた!!
2人とも必死の形相!
これは、体勢の勝負になるか!?
2頭並んでゴーーール!!
私からはどちらが勝ったか、まったく解りません!!
写真判定の結果を待ちましょう!
「「凄い、マキシマム(シルフィード)さん…」」
「「え?」」
「マキシマムさんの方が凄いじゃん!」
「いや、シルフィードさんの方がもっと凄いもん!」
こうして、思いが繋がれていく。