ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。   作:湯川彼方

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「今年のカノープスは一味違うよ!何たって、大型新人が入ったからね!」
「あちょ~!シャオはシャオだよ!」

 ヌンチャクをブンブンと振り回し…

 そして、見事に顔にぶつける。
 
「うわぁ~ん!!」
「「「「「「(また、濃い娘が入ってる…)」」」」」」


Intermission~新たなるライバル

 シャオはシャオツァンロン!

 今日はチームの皆と、日本ダービーを見に来てるよ。

 

 だけど、シャオには大きな不満がある。

 

「むぅ~、なんでシャオはダービーに出られないのよ」

 

 本当はシャオも見るんじゃなくて、走りたかったよ…。

 その事を口にすると、チームの先輩が何とも言えない眼で見ているよ。

 

「いや、だってあんたデビューして間もないじゃん。実績が足らないのよ」

 

 シャオは色々あって、デビューが皐月賞と同じくらいだったよ。

 もっと早くデビューしたかったんだけど、「レースに耐えられる身体が出来上がるまで、我慢ですよ」ってトレーナーに言われた。

 

 ちょっと不満だったけど、シャオの事を考えてくれている事は解っているから我慢したよ。

 でもそれはそれとして、ダービーには出たかったよ…。

 

「うぅ~、菊花賞には絶対出るからね」

 

 クラシックシリーズはまだ終わっていない。

 シルとマックスと競える機会はまだあるのよ。

 

 だから、菊花賞には必ず出たいのよ!

 

「シャオさんは、もう少し勝たないと…」

 

 …トレーナーさんはいつも正論を言うのよ。

 

 ふと、ネイチャ先輩が私を不思議そうに見ているのね。

 

「…ところでさぁ、あんた何で勝負服着てるの?」

 

 シャオは青いチャイナドレス風の上着に、白い短パンの勝負服を着て来たのよ。

 だって…

 

「だって、ターボ先輩が欠席の娘が居たら、代わりに出られるように着た方が良いって言ってたのよ。」

 

 シャオは、シャオと同じくらいの背の先輩の顔を思い出して話したのよ。

 

 そしたらネイチャ先輩は、凄く苦い顔をしているのね。

 

「あの馬鹿は…」

「「「はははは…」」」

 

 他の先輩やトレーナーも呆れた顔してるよ?

 シャオ何か変なこと言ったかな?

 

 

 

 レースが終わった。

 シルとマックスの意地の張り合いに、先輩たちも興奮しているのよ。

 

「また、すっごい娘達が出てきたね~」

「分析のし甲斐がありますね。特にあのスパートは大変興味深いです。あれを取り入れられれば、あるいは…」

 

 もちろんシャオも凄いと思った。

 だけどやっぱり…

 

「あぁ~、やっぱりシャオも出たかった~!!」

 

 

 そんな声をあげるシャオの頭を、ネイチャ先輩が優しく撫でてくれたのよ。

 

 

「秋で勝負、でしょ?私も同じ経験をしたから、相談に乗るわよ」

「シャオさんに最適なローテーション。すでに分析できています。」

「ははは~。私も菊花賞出たし、教えてあげるよ~」

 

 先輩たちの言葉に、シャオは少しだけ泣きそうになったよ。

 みんな優しくて、このチームに入って良かったよ!

 

「うん…シャオ、頑張る!」

 

 シル、マックス、今はおめでとうと言っておくよ。

 でも菊花賞に勝つのは、シャオなんだからね!!

 

「あの~考えるのも良いですけど、まずはトレーニングを…」

 

 

 

 

 

 東京レース場の一角。

 ここでもダービーを観戦するウマ娘が一人。

 

 その娘は白く長い綺麗な髪が特徴的だが、その顔は前髪が目元まで隠していて良く見えない。

 ただ、口元はとても楽しそうに笑っている。

 

「ダービーの空気はどうでい?」

 

 そのウマ娘の元に、また別のウマ娘が話しかけた。

 茶色い髪をサイドポニーにしたその娘は、楽しそうにする純白のウマ娘の姿を見て、意外に思っていた。

 

「そうですね、私も走りたかったと思いますね」

「まぁ、怪我しちまったのはしょうが無いからねぃ」

 

 この娘はデビュー戦を圧倒的な力で勝つも、すぐに骨折が判明。

 一生に一度のクラシックシリーズを全休していた。

 

 ダービーに出られなかった無念さがあるのかと思ったが、続けられた言葉は予想とは少し違っていた。

 

「いえ1年前の事じゃなくて、今このレースに出たかったな…と」

 

 たった今、二人のウマ娘が死闘を繰り広げたこのレースに出たいと。

 

 クラシックレベルを超え、今すぐ宝塚記念に出ても良い勝負をするんじゃないかと言う二人と闘いたい。

 

 この純白のウマ娘はそう言ってのけたのだ。

 

 その言葉を笑い飛ばす茶色い髪の娘。

 

「ハハハ、そりゃあ無理ってもんだねぃ!1年早く生まれた不幸を呪う事だ」

 

 正論ではあるが、遠慮なく言われたその言葉に、ややムッとする。

 

 そんな事は解っている。

 ただ、思いが抑えられないのだ。

 

「復帰戦、まだまだのつもりでしたけど…早く走りたくなりました。あの娘達はシニアクラスのレースに出ませんかね?」

「寝言は寝て言いな。第一お前さんの足はまだ万全じゃ無いんだろぃ?」

 

 それまで笑い飛ばしていた娘は、真剣な表情をする。

 このウマ娘は海外のレースで大怪我をし、今はレースを半ばリタイアして後輩達の面倒を見ている。

 

 その経験から来る言葉は、純白の娘の心に響いていた。

 

「それに、あの娘達と同じ舞台に立とうにも、どだい実績不足ってもんだぃ」

 

 デビュー戦後、長くレースに出ていないこの娘はG1の出場権を貰えるだけの実績は未だない。

 まずは実績を積み上げない事には、同じレースにでるのも難しいのだ。

 

 その現実に、娘は苦い顔をする。

 

「まぁ、どっちみちあの娘達は秋までレースに出てこないだろうし、菊花賞もある。なら、万全の状態を待ち整えるのが筋だろぃ?」

 

 日本のレーシングプログラムは、大レースが春から初夏と秋から冬に固まっている。

 暑い真夏の時期は大レースは無く、有力なウマ娘達は特訓や休息に費やす事が多い。

 

 だからこそ、実績不足のウマ娘達が実績を積むのに良い期間でもあるのだが。

 

「そうですね、今日の所は帰りましょうか。先輩。」

「あぁ、練習なら付き合うぜぃ。ボーク」

 

 ボークと呼ばれたその娘は、観客席に手を振る二人を見下ろす。

 だがすぐに振り返って歩き出すと、振り返ることなく出口へと歩いていくのだった。

 

 相変わらず口元に笑みが浮かぶ娘であったが…

 

「(あの日から、早く復帰してまで闘いたいと思う娘はいませんでしたが…あなた達なら私の心を奮い立たせてくるでしょうか?)」

 

 その前髪の奥から覗く瞳は、妖しいほどに紅く輝いていた。




思わせぶりに登場した新キャラ。
一体、なにヌマボークなんだ?

ちなみに先輩は現実の馬がモデルです。
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