ウマ娘の世界な筈だが、うちのチームがカオス過ぎる。 作:湯川彼方
ミニレース翌日、通常の合宿練習に戻った私たちだけど、チームの皆は気合が入っていた。
「さぁ、今日も頑張って練習しよ~!」
「「「「おー!!」」」」
レースの結果からそれぞれの課題が見えたり、自信がついたりでそれぞれの練習に身が入っていた。
「レースの結果、デネブに1勝2敗。みんなそれで良いの?練習気合入れるわよ」
「「「「はい!先輩!」」」」
それは他のチームも同じ様子で…
「先輩、疲労感が強くて今日は動けないで~す」
「私も、身体が重くて…」
「足が痛いって言ったら、妹も休めって言ってました」
「はぁ…まったくこいつらはしょうがない奴らでぃ」
と言うことは無く、ベガは通常運転に戻っていた。
いやあの娘達、才能はもの凄いのにね。
…
合宿最終日。
練習を早めに切り上げた私たちは、浜辺でバーベキューの準備をしていた。
まぁバーベキューと言ってもメインの食材はニンジンだ。
ウマ娘に転生してから、味覚が大きく変わってニンジンが美味しすぎる。
「イーグル~、キャベツ取って下さいー」
「あぁ?自分で取れよハイネス」
「マキやん、食っとるか?」
「んあ~、美味しいのね!」
「先輩!焼けたの取って来ました!」
「おぉ、すまねぇ…って言うか黒こげじゃねぇか!!」
「だから焼けたのですって!」
周りを見ていると皆テンションが高い。
あのベガの面々も、レースの日並にテンションが高い。
まぁそれがバーベキューの魔力と言えるだろう。
「いっちゃん、お疲れ~」
「フェアちゃんもお疲れ様です」
会場の端の方で休んでいると、フェアちゃんがニンジン串を2本持ってやって来た。
その内の一本を私に渡すと、フェアちゃんが話し出す。
「ねぇ、私たちミニレースで最下位だったね。」
「うん、そうだね」
私もフェアちゃんも残念ながら最下位だった。
「私たちはまだ弱いね~」
フェアちゃんがポツリと話すその言葉。
私もあのレースから何度も思ったこと。
「まぁ、トレセン学園にも入学したばかりだからね」
そう、一緒に走った先輩達とは練習した期間が違う。
才能が違うのに努力の量まで上回れたら勝てるわけがない。
…少し前の私なら、心の底からそんな風に言い訳してたと思います。
「イッちゃん、口ではそんな事言ってるけど、凄い悔しいでしょ?」
フェアちゃんは微笑みながらも、確信めいた事を言った。
「…なんでそう思います?」
「だって、私も悔しいもん。先輩たちは尊敬しているけど、負けて良いなんて思った事は無いから」
ウマ娘の世界は常に真剣勝負。
そしてレースに勝つのは常に一人。
最後に勝つのは自分だと、誰もが信じている。
そんなわかりきった事を、少し前までの私は見ないふりをしていましたね。
「イッちゃん、私はイッちゃんにも負けたくないよ」
フェアちゃんのその言葉に、今の私なら胸を張って言える。
「…私もですよ。私が同期で1番のウマ娘になります」
同期と言う事でランナクローズさんを眼で探すと、ホクトベガさんに他のチームの娘達と共に絡んでいる。
少しプルプルしているホクトベガさんだが…あっ、切れた。
『お前ら、いい加減にしやがれぃ!』
『『『わぁ~、先輩が怒った~!!』』』
そんな会場の様子に笑う私たち。
不意にフェアちゃんは私の手を取って、会場の中心へ進みだす。
「行こう、イッちゃん!」
「うん!!」
私は、その手を強く握り返した。
…
「合宿お疲れ様」
「お疲れ~、ひかりちゃんなんだか楽しそうね」
ウマ娘達が楽しむかたわらで、トレーナー達もバーベキューを楽しんでいた。
「この合宿で一番成長したとは言えないけど、成長のきっかけを掴んだ娘が居るからね」
「うちの娘達も頑張ってくれたわ~。自分の娘達の成長が私たちの何よりのご褒美よね~」
二人はビールを飲みながら、楽しそうに話す。
不意に、思い出したかの様にはるかが言う。
「秋か冬には、久しぶりにお互いのチームの娘がレースで当たるかもね~」
「そうね、ジュニアG1かジャパンカップか有馬記念か。間違いなくどこかでは当たるでしょうね」
今年デビューを控えているアルフィーとヘルメス。(アルタイルのブルーエンブレムもだが)
年末のジュニアG1のどれに出るかによっては、すぐにぶつかる。
もちろん彼女達は自分のウマ娘がG1に出られないとは思っていない。
それにひかりの耳にも届いている。
先日の函館記念ではるかのチームの娘が強い勝ち方をした事を。
「でも、勝つのはうちの娘よ~」
「…はるかが相手でも、勝ちは譲れないわよ」
そう言って笑いあう二人。
お互いが友達でライバル。
それはウマ娘もトレーナーも変わらない。
やや喧騒が収まった頃、ホクトベガは会場の端で誰かに電話をしていた。
『先輩、デネブとアルタイルと合同合宿だなんて聞いてないですよ。しかもレースをやったって』
「そりゃあ、言ったらお前さんは函館記念を放ってでも来ただろぃ?」
『…まぁ良いです。どうせ走るなら万全の状態と場所でやりたいですから」